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(Voicy)ズバリ相談室の内容踏まえ:価値としてのグリーン、ランドスケーピングの可能性 #0094

先日、voicyの木下斉さんの放送で、以下の質問をしました!!
↓(chapter.3, 33:20あたりから)

ランドスケーピングの可能性について話して頂きましたが、「まさに!」という内容の数々でした。フロントラインで活動されている木下さんから詳細に答えていただいて、本当にありがたい限りです。

ポイント盛りだくさんだったのですが、特にグリーンやランドスケーピングの可能性について、自分なりの観点を書いていこうと思います!


コストとしてのグリーンから、資産としてのグリーンへ

木下さんの話の中で、コストとしてのグリーンから、資産としてのグリーンへ、と言う話がありました。これは非常ーーに価値のある話でした!

現状、造園の仕事をしていると、未だに「植栽はコスト」と考える人があまりにも多いのです。特に個人宅なんてそうですよね、外構は「余り予算」って感じです。

特に新築は建築に予算を使ってしまうので、外構予算は「あとあと!!」と、どんどん削られていき、最終的に「やりません!」というケースは頻繁にみられます。そのため、営業をかけるのはだいたい新築後2,3年たった家。「そろそろ庭でも作るかー」というお宅をターゲットにするわけです。しかし、これはあくまで人間の動線を考えたものではなく、「余ったスペースを埋める」ものでしかなくなってしまうのです。

企業や施設に関しても同様なんす。
独立して間もなくの頃、地元の酒造会社の社長さんから外交を依頼されたことがありました。新しくワイナリーを作るにあたって、その外構を頼まれたわけですが、最終的には、植栽を入れる前に最低限の設備の施工だけで残りは全てキャンセルになってしまったわけです。

その際に「外構はコスト」と思われていることを実感しましたよね、、。
せいぜい建物のファサードをオシャレに見せることぐらいにしか思われていないわけです。あーーだから周りの商業施設やレストランはダサい外構ばかりなんだ、、と。

例えばワイナリーの外構も、大きな木を入れて石畳を作って、テイスティングをできるばにすれば、経営的にも違う展開が見えるかと思っていたのですが。やはりこのあたりは設計段階から食い込んでいかないとなかなか難しい話だなーーと感じた次第です。

しかし、です。
後述する北欧の例や、近年の宿泊施設から見えるのは、住宅や施設、街並みの価値を高めるグリーンなんですな。

例えば住宅地の街路樹ひとつをとっても、植えてから20年経った大きな樹の街路樹が住宅地にあれば、何もない住宅地に比べて家族連れなどははるかに住みやすくなるはずです。住みやすい土地においては、路線価も上がっていくのではないでしょうか。

日本の住宅(&外構)も今後、「年数を重ねると価値があがる」という価値観に変わっていくと思います。そうすると、家も投資対象となるので、ペラペラの家を作るハウスメーカーに任せよう、とはならないハズなんですよ。

そもそも、植物は年数かけないと大きくならないですからね。(当たり前だ)
年数をかけた方が、木が育って空間的に横にも縦にも緑が広がり、成熟した住宅と共存する姿は時間的、空間的な価値を持つと思う次第です。

コペンハーゲンは街中にも緑がたくさん

住宅環境含めたランドスケープをどんな価値にしていくのか、そこを考えるのがこれから求められることなんじゃないかなー。

知られるようになった「ランドスケーピング」の可能性と事例

最近になって、居住環境やインドアを中心に、グリーンの特集が各雑誌でも組まれるようになりましたよね。

感覚的には、この辺の雑誌の特集が組まれるようになると、いわゆる感度が高いクリエイティブ系の人たちがカルチャーを醸成して、それが5~10年ぐらいの時間をかけて一般的に浸透していくと思っています。
(ちなみに、わたくしは20年ほど前、この雑誌社でバイトしておりました 笑)

居住環境やインドアという「身近な」環境とは別に、宿泊施設なども非日常的な空間を演出するために、グリーンを計画に盛り込んだものが増えています。

昨年末に行った京都や、渋谷などでも増えていましたね、こういう宿泊施設。

京都のホテルエントランス。中庭も充実しておりましたよ。
渋谷のTRUNK HOTEL。
渋谷にもこういうところができたかーと感慨深い。

商業施設なども、例えば立川のgreen springs なんかもウェルビーイングをテーマにしていてなかなか良い施設ですよね。

https://greensprings.jp

またリトリート的な1棟貸しの宿などや、共同所有の施設など、かなり環境を優先したものが増えています。サウナや宿、レストラン含め、この「隠れ家系」は今後も増えていく流れだと思いますな。

都市空間もウォーカブルが意識されるようになって、緑化空間が増えました。(この辺の話は、書籍”Soft City” に詳しく、この本はめちゃくちゃ面白いので、また別に書きますね)

代表的なものにニューヨークのハイラインがありますが、Piet Oudulf パイセンの代表作にもなっています。

Jan Gehl(ヤン・ゲール)が提唱した「人間の街」が意識されるようになって、ヒューマンスケールの街が大いに見直されるようになりました。そのことで、人が立ち止まったり座ったりする環境をいかに整えるか、そのためのグリーンをいかに配置するか、というのが街の価値に直結する時代になっているわけです。

自分ではまだこの領域に突っ込んでいこう、という意識があまりなかったのですが、やはり可能性が大きいんだなーと言う感じで、ワクワク感がありますね!!
ぜひ今後、関わっていきたい分野です!!

北欧各所で見たグリーンに関連した施設など

わたくしは、10年ほど前にデンマークのガーデンでファームトゥテーブルの考えを学んでおりました。とにかく北欧は各所、グリーンとの接点が非常に多かったのが印象的でしたね。
パートナーもスウェーデンに3年居住しいたこともあって、ほぼ毎年2人(子供が産まれてからは3人、コロナの間は行けませんでしたが、、)で定点観測的にデンマーク、スウェーデンのガーデンやグリーンの様子を見ています。

この10年間で、北欧もますますグリーンとの接点が増えていると感じますね。

都市型で代表的なところでは、言わずと知れたNOMA。
ここのガーデンもNYのハイラインをデザインしたPiet Oudulf パイセンのデザインです。現在のNOMAは、初期から移ってきた店舗ですが、水辺にガーデンの長いアプローチがあって、レストランの入口までの気分を醸成してくれます。

NOMA,入口へむかうアプローチ

他にはKADEAUなども有名ですね。

昨年訪れたのは、ここも有名なルーフトップガーデンのGro Spiseri。元々自動車の展示販売場だった屋上を、市民の共有ガーデンにして、そこにレストランを作るというコンセプト。ここも、「こんな寂れたビルにあるの??」という建物の屋上に突如現れるエンターテインメント感があります。

あと最新ではコペンヒル。なんとここはゴミ処理施設!そこの屋上をスキー場にしているという、アンチテーゼ的に環境を考える場所。

飲食店の店先は、ピンコロ石を一つ外すだけで木が育ち、独特なファサードを演出してくれるのです。詳しくはこの辺に書いてます↓

まだまだありますが、こんな感じで、都市においてもランドスケープとセットにしたコンセプトは、訪れる人々の気分を大いに高めてくれます。

こんな感じの施設、建物は「価値としてのグリーン」と言う認識を持った人たちによるランドスケーピングとセットになっています。
このようなランドスケープは今後日本でも大いに増えていくことが予感されるわけです!

商業施設内の店舗、と言う発想

この話も印象的でした!
「資産としてのグリーン」につながる話だと思うのですが、「商業施設ではグリーンのお店が求められている」というのはなるほど、と納得しました。

前述の立川の施設もそうですが、グリーンをうまく使っている施設には確かにグリーンに関わる店舗が入っています。
在庫を置けば、それが施設のグリーン環境にも貢献できて、売り上げにもつながる、という点は、同時にいくつかの課題をクリアできるのでいいね!という感じです。

現状、造園と並行してグリーンの販売もやっているのですが、常に植物には在庫問題がついて回ります。店舗がないと、なかなか在庫を見せられる機会がなく、かつ温度管理、水管理が回らないということになるわけです。

これを解決するために、店舗内のディスプレイの一部として植物を置いて販売しようかと考えていた矢先だったので、これは早速知り合いの店などでトライしてみようと思います!店舗に置くと、植物の見え方も全然違うものですしねー。

自分でお店とその外構をやろうかなーーと思っていたのですが、グリーンを価値として見てもらえる人とつながって店舗にしていく方が、相乗効果が大きそうでよかですね!!

いやーーほんといろいろ楽しみです!

ではでは!!


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