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本日会社を休みます | サイドトラック放浪記

あれからちょうど3ヶ月。
忘れもしない、2020年9月14日の月曜日朝8時半。
事件は自宅のダイニングテーブルの上でおきた。

淹れ立てのコーヒーを飲みながら、会社から貸与されたノートPCの電源をいれ、さあ今週中にリリースしてなくてはいけない案件を全力でやりきるか、と頭のなかでやることを整理しながらPCの起動を待っていた。その数秒の合間に突然私のなかで急激に変化がおきた。

心がしくしくきりきりし、目からは涙がぼとぼととこぼれ落ち、鼻水がたれ、まるで子どものように声をあげて泣きはじめた。

この仕事の状況、どう考えてもおかしい。どうしても納得がいかない。なぜわたしがやらなくちゃいけないんだ?

入社以来20年以上「やれと言われればやります」と、どんな仕事も自分の仕事と認識してやってきたけれど、なぜここまでおかしな状況の仕事、理不尽な仕事のために神経をこれ以上削れないほど尖らせ、寝る間も奪われながらがんばらなくちゃいけないのか?仕事がこじれる引き金となった責任者の後始末をなんでわたしがやるの?

プツンと糸が切れた瞬間だった。

「やりたくない、やりたくないよー」

とひとりで泣きながら、それでもまだ起動したPCのトップ画面からフォルダにアクセスし仕事をはじめようと試みたが、どうしてもPCに触れることができない。まるでキーボードに電流が流れているかのように、タッチしようにもタッチができない。

震える手を押さえこみ、泣きじゃくりながら朝の9時を待ち、同じチームの後輩に「おはよう。今ちょっと電話してもいい?」とケータイからメッセージを送った。そして後輩からの「いつでもいいですよー!」という元気な返信を受信すると同時に電話をかけた。

「おはよう」
「おはようございます。どうしたんですか?」

仲間の声を聞いたらほっとしてしまったのか、理路整然と自分の現状を説明しようと思っていたのに、心も頭もパンクして言葉にならず、ただただ嗚咽だけがもれてしまった。


「うん・・・」
「・・・」
「・・・う、ごめ、もうできない、、できなくなっちゃった、もう無理、もう我慢できないよー。やりたくないよー。パソコンが打てないんだよー」

結局わんわんと泣きじゃくりながらの状況報告となってしまった。

なぜ私がここまで追い詰められていたのか、今まで私のおかれていた環境を一番間近でみてきており、ずっとサポートしてくれていた後輩は、すぐに私の精神状態を悟ってくれ、優しく、かつ冷静に

「わかりました。大丈夫です。もうやらなくていいですよ。休みましょう」

と言ってくれた。

体の芯から緊張がほどけ、「もうやらなくていいんだ」という安堵感と、
今まで一度たりとも途中で投げ出したことがなかった仕事を初めて投げ出すことになってしまった「責任感の喪失」のようなものをうっすらと感じながら電話を切った。

その数時間後、「休職宣言」と銘打ったメールをチームの長へ送信し、わたしは社会人人生で初の長い長い休暇へと突入した。

※写真はネルソンの朝焼け (ニュージーランド)

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