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見えるものは見えないものに触っている ノヴァーリス「青い花」

地面を真っ赤に染めるほど
苦しみの血が流れ出ているかのように
切り倒された榛の木の切り株から
木の命の色
榛の赤が滲み出ていたそうな

花の色は
花の花弁から
葉の緑色は
葉の緑から
抽出できないのを知っていますか (紅花だけは例外)

桜の花弁を集めて
色を抽出しても
灰色がかった薄い緑にしかならないのです

紫の色、雪に映え いみじうをかし…
枕草子にもあるが
高貴な色
紫を抽出するのは椿の灰が必要で、
それも椿の花ではなく
葉や枝を焼いてその灰汁から紫が抽出されるそう

つまり
梅も桜も…

花の色は
花からではなく

木の幹や枝から
その灰から
色が
その命の色が
滲み出てくるものなのです

化学染料は
永遠なるあらゆる色を可能にした。
でも本来、
色とは命、一回性の無常なるもの
中国の皇帝が空の青さを再現せよと
青磁の製作を命じたそうだが、色の再生ほど難しいものはない。

藍の色でも
甕の中で撹拌し、
引き上げ、空気に触れた瞬間
目を見張るような鮮烈な緑に輝くそうだが、
その色も瞬時を保つことはない
ほんの一瞬だけ見せる色

私は子どもの頃
ツユクサから必死に
あの青🟦を
抽出しようと
ツユクサを集め
無惨にも敗退
インターネットの時代になって
ツユクサの青は最も色を抽出しにくく
且つ 色を残しにくい色だと知りました
ツユクサがおしえてくれたこと
摘まないで
って。

命が色なのです

桜の色も
桜 咲く前の木と
咲いた後の木では
色の鮮やかさが
全然違うそうな

花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに
            ー小野小町(古今和歌集)

平成、令和生まれの人たちには
色は移る あせる ということは
実感しづらいことかもしれない
色も命 歳を取る

すべて、
見えるものは
見えないものに、

聞こえるものは
聞こえないものに、

感じられるものは
感じられないものに
触っている。

おそらく、
考えられるものは、
考えられないものに
触っているだろう。
           ーノヴァーリス「青い花」




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