スピノザの功罪 I〜永遠のマスターベーションという悪霊

現在の時も過去の時も
たぶん未来の時の中にあり、
また未来の時は過去の時に含まれる

T.S.エリオット バーント・ノートンin四つの四重奏

あらすじ
母は僕で、僕は嫁で、僕は娘だ
僕は嫁に恋して死に、嫁を殺し、娘も死ぬ
死人の犯罪は無罪だ
犯罪をつまり未来に防げるのは
死ぬ前の被害者だ
警察がそこに気づければ
過去の犯罪率は格段に下がるであろう

1 過去の被害者と未来の加害者

あいつは俺に
「女おるやろ?」と聞く
あいつは俺に女がいることを
知っていて
女と幸せになってというから
彼女を未来に殺す

殺すだろう?
幸せになってというのだから
あいつは消えるしかない

ならば
彼女しか
僕を未来に助けられない
こんな単純な明快な事実
被害者にしか
加害者を助けられない
ということが
何故みんな分からないのか

犯罪現場で被害を止めれるのは
被害者だけだろう?
だから僕は頼んだのだ
僕は未来の加害者です
あなたしかいないのです
僕を助けてくださいって

俺の嫌がること言い続けるから
殺すしかない
でも俺だって殺したくない
でも幸せになってと言うから
殺すしかない
そして
犯罪を未来に止めれるのもあいつだ
すべてあいつ次第だったのだ

コスモスの中の彼女の笑顔
彼女は聖女だった
僕は彼女と
あの時
ちゃちゃっと結婚していまいたかった
未来に結婚できなくなるからだ
僕が聖女を悪女にして
彼女を未来永劫失ってしまうから

レオナルド・ダ・ヴィンチが
聖女の微笑みを美しく描けても、
女を生生しく上手く描けなかったのは
「女」を「聖的」に求めはしたが
「性的」に理解できなかったからだ
でもそれって
反対に
「性的に」求め
「聖的に」抑圧したのと
何が違うのだろう
どちらも同じことのように感じる

ただレオナルドによると
「ひとはそのものの本質を徹底的に認識してしまわないかぎりは、あるものを愛したり憎んだりする権利をもたない」という

僕は女を愛せない
愛を知らない

僕の
生後数年での突然の母との離別
実母の永遠の喪失
それが
凝縮した母子間の口唇的関係への憧憬
を生成し
僕の必然となった。
欠如たる「母性」を
ハングリーに捕食し続ける
永遠の搾乳というマスターベーション
自慰ワルツ
規則正しくマイペースな
ワルツ
音楽にはひとつの作用があって、
自分の心を打つその音以外に、
外の世界にはもう何も存在しないような
気分になってしまう

彼女は
僕の音のテリトリー、
僕の家に入ろうとしては
いけなかったのだ。
ワルツを乱してはならなかったのだ
オペラ座のファントムに同じだ
ファントムの家に入るのなら
彼を助けねばならなかったのだ
音を超えて入ったのなら
君はもう僕になる
僕のワルツを一緒に刻んでくれなくては
ならなかった
ファントムの
音を観かねば


言ってきますのキスに
帰宅すれば抱っこ
僕を愛していたのに
君は死にたかったのか
なぜ僕を助けなかった?
僕の幸せを願うのに
どうして
幸せになってと去っていく?
僕を助けることが
君を助けることになると
言ったじゃないか
被害者しか
事故現場に居合わせないんだぞ
被害者しか
加害者の犯罪を未然に防げないんだぞ
幸せになって
カフカの橋になる
って君言ってたじゃないか

蚤の中で僕ら二人の血が混じり合う。
蚤の中で一緒になった僕たち

君であり、僕でもある
って
英国詩人 ジョン・ダンが言ってたね
君の復讐と
僕の復讐が重なり合い
僕たちの過去は
未来に殺されてしまった
未来の過去に
僕たちは追いつけなかった
未来の過去の犯罪の時効に
僕は過去に泣くしかなかった
僕だって犯罪を
僕に起こさせたくなかった
幸せになってと言うからだ
殺さざるを得なくなったじゃないか
だけど
加害者である僕が
未来の加害者であると
まで明かして
未来の犯罪を
君に止めてくれと頼み続けたのだ
被害者である君は
信じようとしなかった
そして
僕は君に叫ぶしかない
分かってくれって

ぼくの終わりの中にぼくの始まりがある

T.S.エリオット イースト・コーカーin四つの四重奏

助けてくれ
君は被害者になるのだ
君しか
僕を助けられない
被害者である君しか
加害者である僕を
未然に止めれない
君が信じないから
ここに
誰かに
叫ぶしかないだろう

2  未来の犯罪 

賢いやつだ
狡猾だとひとは言う
完全犯罪に感動している場合ではないのだ
完全犯罪がひとつ完遂すれば、
故郷を
お母さんを
失う者が2人いるのだ
被害者と
忘れてはならない
加害者もだ
許してはならない
止めねばならない

あることを
ないこととして
口が
真実が
封じられると
怒リ狂う

誰が怒るかって?
真実だよ
真実が憤る
止めねば。

真実は
離れすぎても憤るし
近づきすぎても憤る

嘘なんていくらでも吐けるんだ
でも真実が憤る
人間の身体に
無駄なものは何一つない
想像力豊かな左脳の嘘に
正確無比な右脳が
アラームを鳴らし続ける
嘘の感知アラームだ

良心が
罪悪感が
ペラペラ勝手にしゃべり
自らバラしてしまう

真実というものは
にんげんの身体を借りて怒るからだ
昔は
亡霊とか悪霊とか言われたもの
フラッシュバックと呼ばれる形で
怒り続ける
そしてそれは
真実が真実に追いついた時
静まる

フラッシュバックは
被害を受けた者に起きるって
みんな知っているだろう?
案外知られていないのは
フラッシュバックは
加害者と嘘をついた者をも責め続けるんだ
幽霊が加害者を追い続ける

だから
大概の犯罪者は
時効を待たずして
自首するか
捕まることを
選ぶ
悪霊が彼らを苛み続けるからだ
助けてくれーって
彼らは警察に行く
でも俺は行かない

未来の犯罪など
誰も信じない
まだ犯罪を犯していないのに
警察も助けてくれない
未来未完了の過去の犯罪の
苦しみを
警察が理解してくれるなら
犯罪率は大幅に低下する
僕はそう思う

3  母をおしゃぶり

未来の過去を聞いてやらないと
故郷への帰り道が
失われるんだ
だから 森の中でひとりぼっち
ヘンゼルとグレーテルみたいにね
帰りたくても帰れなくなるんだ
パンくずでも播いておかないと
行きは良い良い
帰りは…なんだ

未来の過去を
正しく読めないと
最も大切で愛している人のもとに
帰れなくなる
自分も自分の元へ
帰れなくなる
愛する人が
愛する人でなくなってしまう

狼に食べられた赤ずきんの話は
知っているだろう?
お母さんに助けられて
万々歳って話さ
実は
赤ずきんは
狼のお腹から助け出したお母さんのこと
もっとも憎んでるって知ってるかい? 
助け出されたくなかったんだよ 
食べられたままの方が
食べられた事実に向き合わなくてよくて
楽だったんだ 
加害者と被害者にとって
お母さんって最も邪魔な存在
でもあり
最も必要な存在
助けて欲しい
でも
助けられたくもない

血塗れたノミの中や
オオカミの腹の中
心地よいんだよ

それでよかったんだよ
でも
それでも困るんだよ

家に走って帰って
おかあさーん 
怖かったよー
こんなことがあって…
えーんて
泣きたいよ

こんな
みんなが思い浮かべるようなcliché
現実にはないんだよ
幻想に過ぎないことが
常識とされてる
本当のことって
もっと非常識なんだ

真実に
心の弦が
震えて
言葉になったなら
治癒
トラウマとは呼ばない

トラウマって
認めたくない自分
あることをないことにしたこと
だから
あることをあったこととして
話せたら
泣けたら
トラウマって呼ばない

あることを
ないことにして
完全犯罪が成功したとき
悪霊があなたを追い続ける
これがトラウマ
これがフラッシュバック

真実から離れても
真実に近づいても
悪霊 悪霊 悪霊
加害者にとっても
被害者にとっても
真実って 近づいて欲しくない
すると
違うよ
真実は
こうだよ
それだよ
そうだよ
そうだ
その通りだ
って

悪霊が
大音量 大迫力で
見せるパノラマ
非現実にしか思えないような
真実を
見せる
見せ続ける

絞殺の跡が
首を絞められた跡が
4Dで浮かび上がる
何週間後も
何ヶ月後も
何年後も
そんなバカな
信じられるわけがない
でも生理的な現実
誰も信じない
ならば
悪霊の辻褄合わせ
合理的に
しなくちゃ
何かしらの
信じてもらえそうな説明をつけて
ディケンズの信号手だって無意味に必死だった
「スカーレット・レター=緋文字」に
誠実に爽やかに向き合って生きるなんて
なかなか出来ない

最も困った時
みんなは誰を頼る?
お母さんだよね
お母さん
助けて
助けて
って
お母さんを中心に
物語を作るのが一番安全パイ
お母さんは何役でもやってくれる
人に信じてもらえそうな役柄へと改変
悪役でも
お母さんは怒らない
お母さんは黙ってそれを受け容れてくれる
そのでっちあげを。
母ってすごい

お母さん
お腹すいたよ
おっぱいちょうだいよ
お母さんを想いつつ
来ない
叶わないから
あいつは悪だ
俺を飢え死にさせる悪者だ
母の「乳」を「指」で代替して
自分の欲求を満たす
人生最初のマスターベーション
これ
みんな公認の自慰幻想

人生って
じつは
マスターベーションに始まってる

第二の母みたいな人
おしゃぶりの代替
探してきた
なかなかいない
あいつが悪いって
全部 罪を押し着せても
受け入れてくれて
俺にフェイクのおっぱいでも
フェイクのまま
吸わせ続けさせて
くれるひと

「膣」を手でクリエイトして
非同一を
同一とできる一種の「錯乱」
を錯乱のまま
受け入れてくれるひと
存在全てが虚像なんだよ
フェイク=嘘で改変して
人生万々歳なんだよ

みんな不思議に思ったことはないかい?
母の「乳」を「指」で代替する赤ん坊は
恥を感じる必要ないのに
「膣」を手で代替するときは
隠れてやらねばならないなんて
なんで
指を乳だと嘯く赤ん坊は責められないんだ?
それをファンタジーって呼ぶんだろ?

人間の想像力が叶える
自慰=マスターベーションという意味では
同じじゃないか
「催眠」=幻想
満ち足りて
スヤスヤ眠れる
同じなのに

人生最初の
「遊び」でもあり「芸術」は
どれだけ繰り返しても
誰も責めないし
精神病院にも連れて行かない

自分のお気に入りの形でないからと
与えられたおしゃぶりを
ポイしても
「気に入らんかったんやね」
と新しい姿形のものを
喜んで
幾つも
見繕って持ってきてくれる。

成長して
この女いやだ
次の女をとねだると
非道と言われ
ドン・ファン呼ばわり

デジタル理想型で
無機質に満足すると
オナニスト

徹底的に受け身で
みずから語らず
文句も言わない
こちらの望む姿と形のおしゃぶり
つまり
エロティシズムの理想形=母代理
なんてなかなか見つけられない
作るしかない

エドガー・アラン・ポオの「アナベル・リイ」
日本では
川端康成の「禽獣」や「眠れる美女」
につながる原型。
部分交換して満足しようとして
「片腕」交換となって来ると、
やはり
相手の気持ちを考えないといけないし
文句も言われて鬱陶しい

だから
ナルシスは
エコーを拒否し、
おしゃぶり=マスターベーションを続けた。

おしゃぶりを静かに1人で
これが一番
音が出るうるさい
おしゃぶり
真実へと引き戻すおしゃぶり
なんて要らない
マスターベーションって
幻想=嘘に眠るためにある
これが結論
おしゃぶりに満足し
すやすや眠る赤ちゃん
マスターベーションの後の睡眠
は最高だ

4 母がおしゃぶり

なんて俺は
生涯、母に甘えて
おしゃぶりしてるもんだと思ってた

でもだんだんその逆である
ことが分かってきた
俺は
母にしゃぶられ続けてる
母に所有され続けてる
Posession
母のおしゃぶりなんだって

通常、赤ん坊でも
催眠状態から自ら目覚めるもんだ
妄想では生命を維持できないからだ
お腹すいたよ
指は乳ではないな
指は指だ
現実に沿って生きることを学ぶベイビー
リアルな乳を求めて泣くべきなんだ

でも
食事への思いが
ナルシスをやつれ果てさせても
その場から引き離すことはできないんだ
自己愛=ナルシスは
空腹をあまり感じない
摂食状態で全然だいじょうぶ
性欲の過剰は
食欲を減退させるからだ
現実
つまり
愛の表象とも言われる食べ物を否定する

愛を否定し
かつて母親が自分を愛してくれた様な
幼年期への固着は
かつての自分に似た若い男性との
融合を求めてやまない
だからそこから離れられない
海から
母から離脱できない
ママ フランス語の mère(母)を想い
ママの愛してくれた
海        mer(海)を覗く

ボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」のように貝で表現される女性性 海の匂い…
フロイトの弟子フェレンツィが
「海とは子宮である」と著書「タラッサ(海の意)」でいうように、女とは生誕の海

三好達治が漢字の「海」には
「母」という字がふくまれていることを
指摘しているが
母なる海は魚である男性=精子をとらえ、呑みこみ、潮を吹いて内部からあふれてくる水の氾濫によって魚を呑み込む。ヨナ・コンプレックスとも呼ばれてるよね

母に忠実であるために
ナルシストは
①男性
②手に入らない女性
しか選ばない
  選べない

母=僕が
選ばせない
母=僕
は僕に
1人で永遠に
「マスターベーションしてろ」
と言ってるのだ

ナルシス=自己愛とは
海(母)に捉えられた魚の
自慰の宿命

永遠のひとりぼっちの「催眠」
幸福になれそうな女性が出てきても
母=私以外と幸せになってはいけない
自分は他の男のものである
男を幸せにできない身分である
それでも
僕が他に女性に手を出すことを許さない
それを潰し続ける

恋に恋し
愛の対象よりも、
忍従
タブーを

情熱が
苦悩を求め
結ばれない宿命を愛すること
ナルシストとは母に取り憑かれ
「私のもとへ帰って」
他の女に行ってはいけない
同性愛と手に入らない情事
「報われぬ愛」を繰り返すことで
母に所有される
まさしく
ナルシス=水仙の花言葉=麻痺
水仙は
母という「棺」に「昏睡」する「眠り姫」なのだ
ナルシスはお腹が空かない
だから
食事の代わりの情事

食事に同じく
自分が
自分でないものを
自分のものとして
燃焼し
自分が自分でなくなる
自他融合は
ひとりぼっちの慰み

「あの女食べたいなぁ」
孤独に相手を食べて
非連続が連続し
一つになることで
眠気が訪れる
相手が
牛でも
豚でも
愛する人でも
食べれれば
いい
つまり
食事でも
情事でも
どちらかで代替可

食べて
他者の消化に
エネルギーが消費され
自分が自分でなくなり
その状況変化に眠くなる
これが
食事と情事に共通する
他者との融合の幸せ

ルネ・トムという数学者は
食事と情事の後の眠気の共通性から
食事と性の共通項を
数学的に解いたというが
「悪霊(Posession)」に
憑かれた呪い
母による所有
永遠の自慰
マスターベーション人生は解除できない。
ナルシスの定め
食事なんてなくても
人生万々歳
催眠が引き起こされ
ホッコリ
性と睡眠
それが母にしゃぶられ続ける僕だ

同性愛と
不倫
永遠のひとりぼっち
母が
母を恋した僕の宿命
永遠の催眠

5  加害者=被害者

僕は永遠に
僕であれないのだ
母 つまり
手に入らない女の
思う通りに動く
操り人形
生涯とは
「一人だけの生涯ではない」のだ
ってT.S.エリオット
「解読のできない古い墓石の生涯」
僕の人生は
手に入らない女 か 同性
に呪縛されている
僕は母との融合体

男と女
人と人
生き物と生き物
非連続の連続
それが
鎖のようにつながり燃焼し
区別がつかないほどに
混ざりあい、自他の錯乱が起き
死者と生者
前も後ろも
未来も過去も
「隔絶した熾烈な瞬間の図」などないと
エリオットが言ってた通りなんだ
それは「どの瞬間も燃えている」
複数の「生涯の図」
まさに
誰がために鐘は鳴るなんだよ

なんぴとのみまかりゆくもこれに似て
みずからを殺(そ)ぐに ひとし
そはわれもまた人類の一部なれば
ゆえに問うなかれ
誰がために鐘は鳴るやと
そは汝がために鳴るなれば

ジョン・ダンinヘミングウェイ 誰がために鐘は鳴る

T.S.エリオットにヘミングウェイ…
1920s…
ウディ・アレンのあの映画
「ミッドナイト・イン・パリ」だっけ?
抗生剤や麻酔薬がないから
タイムトリップをやめて
物足りない現実に戻ることにするというあの台詞

解離できないから解離をやめるなんて
アレン・ファンにはたまらない台詞
話は戻るが
この解離という
自我の錯乱
べつに
人間だけの専売特許ではない
我々は動物だから
動物も捕食前
被食者が捕食者に見えるそうだ

つまり
猫には
目の前のネズミが一瞬、
自分つまり
猫に見える錯乱が起きる
そして
ネズミは猫に呑み込まれて
捕食者=被食者としてひとつになり
二者はカタストロフィを通して
一つに融合し
同じ世界

猫=ネズミ

をまどろみに共有することとなる。

ここで
前世=ネズミ
時代の記憶は
猫となり

喰われた
ネズミの過去と
喰った
猫の記憶が
融合し
猫主導で
過去の記憶の改変が成し遂げられる

しかし
ネズミも負けてはいない
喰われたトラウマは未来に向かって叫ぶ
記憶が改変されないように
喰われないように
叫ぶのだ
喰われた
喰われるな
猫の記憶に負けるなと

そこでは
過去と未来が
猫とネズミが融合し
混乱している

過去のネズミの記憶は
未来に起きてしまうことを
未来へと
未来完了形で
必死に伝えようとする
記憶とは警告の一つの形

有がいまだ非有、
まだ現前化していないだけで
非在が現前化するのを待っている
未だないものを予告している世界 

それはまだ存在していないが
しかし 
はっきりとは分からないが
何かが確実に存在しようと
息を潜め
真実の過去や来歴が
あとから大規模に書き換えられ
大規模に解釈し直される
その徴候に
その予期直観に
ネズミは苦しむ

未来予測が乱舞する
予期が映し出す大迫力
パノラミックな映像に苦しむ
フッサールという現象学者がいうように
既知とは未知 
未知は既知
逆立ちした記憶に
森に迷うのは
被害者だけではないんだ

ゲーテは
まっすぐな道が見失われた
鬱蒼とした森の内部
の迷い道こそが
迷わない道だと言ってる。
森を出た人だから言えるんだ
森の言語はなかなか通じないし
予言の効果に
獣道に
逆らって生きることはなかなか難しい

ネズミはネズミであり続けたかった
猫だって猫であり続けたかった
猫だって
ネズミを助けたかった
できることなら
ネズミを喰ってしまう
直前の瞬間に
戻れることなら戻りたい

でも猫も喰ったあとは
猫でもなくなるから
それができなくなる
未来に過去を助けられなくなる

覚えておいて欲しい
猫だって未来を
過去を
未来ー未ー完了に
救いたかったんだ
そして
悲しいことに
それを未来に伝え
未来を変えれるならば
その
協力を要請できるのは
未来の被害者ネズミしかいない
ネズミしか
頼れないのだ
犯罪を未然に防ぐためには

だってお母さん
もういないから

そして
悲しいことに
ネズミの記憶
ネズミの心を
誰よりも分かってるのは
加害者たる猫なんだ
だって
ネズミはもう
僕=猫なんだから
僕がネズミを喰ったのだから
猫=ネズミなんだよ

だから僕は
ネズミの代理で
ここに書くしかないんだ
喰われた
喰われる前の
ネズミの心を
聞いてやってくれ
僕しかそれを
伝えられないんだ

ここに
何度でも叫ぶ
未来が過去になる前に
誰か助けてくれ
ネズミを
被害者を
時効前に助けてくれ
犯罪が起きぬように

猫はネズミなんだ
そして未来は過去なんだ

Time present and time past
Are both perhaps present in time future
And time future contained in time past...
             

T.S.Elliot
Burnt Norton in FourQuartet

































































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