スピノザの功罪 II 未来が過去に追いつくまで
6 未来が過去に追いつくまで
ピンクとブルーのツガイの折り鶴
旅行カバンに入ってた
「さようなら」
ママを
思い出して
Forget Me Not
できたら
Uターンして
ママの
最後の足掻き
ママは鶴に託したのだと
後から知った。
過去に先に済ませておいた
私のサヨウナラを
ママは
未来で受け止めた
お母さん 荷物の半分 受け持ってくれる?
お母さんのせいにしてもいい?
ママしかいないねん
泣きじゃくるしかなかった
泣いても泣いても止まらない涙
私は未来を泣いている
未来に泣けない私は
過去に先に泣いた
未来にママに頼めない私は
過去にママに先に頼んでおいた
なぜなら
「未来」の私はもう
ママを悪者に「してしまった」私だから
もう頼まない
何を頼みたいかすら
分からない私になってる
だから
未来に頼みたい時に
頼めない私は
未来の出来事の依頼と謝罪を
過去に済ませておいた
ママは未来が来た時
全てを未来完了で了解した。
でも
無慈悲にも
未来はちゃんと過去に追いついた
ママも反転した時の流れを
私と共に生きててくれた
未来が過去に追いつく前に
間に合わなかったけど
でもママはこう言った
私は娘を殺した者に
必ず復讐をする。
一生を賭けて
ママはやっぱり全然 分かってない
ママが止めれたんだよ
あの人が悪いんだ
だけど
誰よりも
あなたが
未来が過去に追いつくまで
理解しなかったんだよ
未来が過去に追いつく前までだったら
止めれたんだよ
未来が過去に追いつくまでに
ママが止めてくれてたら
私は私であり続けられたんだよ
7 未来が過去に追いつく時:
今から殺される
お母さん
頭おかしいと思うかもしれないけど
わたし 今から暴行される
殺されるかも
助けて
お願い
今から「それが」起きるって
ずっと知ってた 小学生の時から
それが今日やということも
わかるし
時が刻々と
近づいてきてることも
分かるねん
もうすぐその時間が来る
あかん もうだめだ
時間切れだ
間に合わない
車で起きる それが
どうしたらいい?
車に乗らなきゃいい
誰かと2人きりにならなきゃいい
友達に助けてを求めて
「言えないよ」
未来にこんなことが起きる
いまから あの人に
殺されるから
助けてっていうの?
あんな善人が
「いまから」
加害者に「なる」っていうの?
そんな「マイノリティ・レポート」
トムクルーズだっけ?
映画みたいな世界
誰も信じない
映画は ひとにとって
あくまでも映画なんだよ
あれを ひとが書いたことを忘れてる
フィリップ・K・ディックは
誰にも証明できないし
誰にも信じてもらえないことだから
小説としたんだよ
SF
科学で証明できてない事実
ホラー
悪霊
それでも言うの
助けてもらうの
信じてくれるひといるよ
ママだっていま 信じてる
ママ
あなたが悪いんだよ
遅かったんだよ
あなたがもっと前に
私を信じていれば
これは起きなかったはずなの
あの目…が見える
その日が
その時が
近づいてきてるって
何日か前からわかってた
そして
今がその時
ママは本当にいま信じてくれたの?
こんなおかしなこと言ってるのに
ほんとうに信じてくれるの?
小学校の時から言ってたもんね
一貫してる
今なら信じられる
今まで信じられなくて
ごめんとしか言えない
どうしたらいいの?
もう手遅れなの?
ママに何ができる?
そう
ママ
手遅れなんだよ
未来が過去に追いつくよ
間に合わなかい
どうしてもっと前に
小学生の時から
何年も何年も止めようとし続けた私を
理解してくれなかったの?
私ひとりぼっちで
ここまで来てしまったんだよ
もうあきらめるしかない
現実に「乗る」しかない
なーんて 私 おっかしいよね
大丈夫だよね
大丈夫やって
未来が見えるなんて
私 ほんまに頭 おかしくなったんかなぁ?」
とにかく電話切るわ
行かないで
電話切らないで
リフレイン
ママは何度も何度も電話を掛け直したそうだ
でもその電話が繋がるのは
数週間後
私は死んだから
死んだけど死んでない
undead
ママ
スピノザは有名になるのがおそすぎたね
フロイトは
スピノザが全てを了解していたことを
知ってて
黙ってた
スピノザの神は親切にも
未然に
ことが起きることを
教えてくれていたんだよ
でもフロイトだって
誘惑理論 撤回させられて
スピノザを当時 擁護したところで
信じられないことは信じられない
時代はついてきていないこと
気づいていたのだろう
ゲーテが死んだ時
ひとは葬式で喜んだというじゃないか
おかしなこと言う人
困るんだって
スピノザの神が
そこに到達する前に
軌道の変更の仕方
「ことが起きないようにする」
ための方法を
教えてくれたら神なのではって思ってしまう
だから
神なんていない
神がいればこんな苦しみ
絶対ない
必然の神なる自分
どうやって
悪霊のメッセージ
信じろって言うの?
頭の中に
未来が映画みたいに見えるって
それを誰が
真実だと思えるの?
お母さんお願い
あなたしかいないんだ
私を治癒する薬を見つけて
私を私に戻して
あなたの中で私
生き続けてるよね
8 ファントム オブ ザ オペラ
ママ あなたが全て悪いんだよ
ママが娘の言うことを
ありのまま そのまんま 聞かなかった
嫌だって言ったじゃん
ひとってわかってるんだよ
自然に
何をすべきか
いやなこと させたらだめなんだよ
だから私は喰われた
アメリカ行くの
絶対いやって
小学校の時から言ってたじゃん
中学でも
高校でも
大学入ってからも
私という必然
ありのまんまがいいんだよ
ありのまんまがベストだったんだよ
あなたの言うことさえ
聞かなければ
私は私でいられた
小鳥のままで
小鳥の物真似してるだけで幸せだった
我思うなんて
クソ喰らえだよ
小鳥は鷹に食われる瞬間
固まるんだって
こんな恐ろしい時が早く過ぎてくれますように
もう痛みを感じないように
自分の痛みに気づかないように
無痛になるために
鷹の一部に
早くなるために
大人しく
食われ
儀式を済ませる
小鳥は鷹に喰われて鷹になり
鬼に喰われて鬼になる
我思わない が
無痛なんだよ
桜が散った
それでも
その美しい花びらを掬い
水に浮かべた少女が
過去にいたね
あの過去の彼女は
未来のわたし
だったんだよ
細胞が再生され
違う人間になっていく
私はきっと生まれ変わるんだ
お母さん 助けて
感覚がなくなっていく
私がなくなっていく
止めて
どうしたらいいのか分からない
スピノザはこれを分かってて
止める方法を書いてくれなかった
フロイトもジャネも治療に奔走したが
社会に潰された
時代がついてこないんだよ
地獄の記憶を書き換えるには
うたたのうたを
わたしは歌い続けるしかない
うたたねしながら
かりそめのせかいに生きるしかない
私は「うた」になっていく
いや
最初から
「うた」だった
生まれた時から
ママは知っていたって?
知らずに知っていたの?
あなたは世界一の歌姫だって
生まれつきの歌手なんだって
ママはずっと言っていた
でもね
私は私だった
私はただただ
私であり続けたかった
スミレはずっとスミレ
であり続けられるように
私もずっと私であり続けたかった
でも
ママが
私を「うた」にしてしまった
おかげで私の人生
フーガの反復
うたたの反復
逃走し続ける人生
フーガ=Fugue
情熱の逃走
真実からの逃走
あいつが悪いねん
ママが憎いねん
ママのせいにして生きる以外に
誰を頼れるの?
ママしかいない
全部引き受けてくれるのは。
ドゥルーズは言った
「うた」
とは暗闇の中で呼び求める
「お母さん」という声
「お母さん聞いて」という声
お母さん
あなたに全ての罪を押し着せて
私は生きるしかないの
私はもうファントムなの
あなたを介してしか
うたを通してしか
生きれないの
うたを生きるしかないの
ことりは歌が好き
お母さん呼ぶのも うたで呼ぶの
パパのことも
うたを通してしか見えなくなったよ
お母さん さようなら
でも
あなたならわかってくれる
なぜって
あなたが言ったから
すごいのよ あなたは
生まれた時から 「うた」なんだって
存在そのものが「うた」なんだって
だから
日本一
世界一は当たり前
ママ 会いたいよ
私は私でありたかった
普通でありたかった
「うた」姫ではなくて
「私」でありたかった
9 哲学という現実のホラー
うたを歌いたくないって
言ったじゃん
変な声の鳥の物真似
カエルのモノマネ
ゲコゲコ
あれだけで
ゲラゲラ笑えたね
あれは物ー真似
だけど
まだ現実
でも
うたをうたいつづける歌姫の
うた なんて 仮の人生
ファントムの偽りに過ぎない んだよ
オペラ座の怪人のクリスティーヌなら
きっと私の気持ちわかってくれる
ファントムに喰われたクリスティーヌなら
うたた
うたかた
うたたね
うたがい
のなかでしか
私はもう
あなたを呼び続けることができない
そんな泡=沫(うたかた)の
宿命を
あなたが課した
あなたが私を産んだから
あなたが
我思う なんて
余計なことしなかったら
よかったんだよ
ママ
あなたと さようならなの
ママ
逃走のフーガを
歌えば歌うほど
反復はオリジナルを喪失し
オリジナルから離れさせ
私はいなくなる
歌えば歌うほど
私は生まれ変わる
新たな私に「なる」
意味がどんどん強化されて
オリジナルが忘れ去られる
デリダ・サール論争なんて
哲学のかっこいい名前ついてるけど
どうでもいい
机上の空論
哲学なんて現実のホラー
ただの
幽霊へのなり方
透明人間
ファントムに変身する
その説明書
1人の人間が切り替わる瞬間
反復が幽霊を形成するとき
どんなに恐ろしいものか
デリダはその恐怖にきっと気付いてた
たぶんハイデガーも。
ゲーテは
そんなん超えたとこに
行っちゃったひとだけどね
ジョン•ミルトンだけは
幽霊に怯えなかった。
彼は目が見えなかったからかな?
サールは?
机上の空論に聞こえる
私の勉強不足?
こんだけ
学問
科学の言葉は溢れかえってるのに
何ひとつ
私を助けてくれる処方箋はない
私のビフォー・アフターは現実だ
ビデオに収めておこう
それしかない
死者になる前と
なった後の私の
否定の弁証法
ヘーゲルだってファントムだ
あの人の哲学は
死者の哲学
否定に否定を重ねて
自分を喪い
他者になる泣きを
理性で抑え込んだ過程に過ぎない
歌姫の苦しみ
「うた」姫は自分に戻れない
「オペラ座の怪人」のクリスティーヌだって
愛して
追いかけ
現実に連れ戻してくれる
あの彼がいなければ。
現実に戻れなかった
ファントムの力が強すぎるから。
ママ どうしてもっと早く
来てくれなかったの?
未来未完了に私を迎えにきてくれなかったの?
ママの愛が足りなかったの?
10 神が与えなかった言葉
勉強なんかしたくないねん
って言ったよね
音楽なんてしたくないって
でもママはこう言った
なにかに一生懸命
生きれないんだったら
アメリカでも行って
世界見てきたら
人生 有意義に生きろって
ママがそれをいうたび、
変な光景が頭をよぎる
アメリカ行くとなにか
悪いことが起きるんだよ
だって私 泣きそうになるんだもん
ママ あなたとのお別れが来るんだよ
フロイトがこう言ってるんだよ
これは
「想い出を病む病気」
って
最愛の人に荷物を半分
引き受けてもらって
想い出を変えてしまう病気だって
外国
車
助手席
誰???
何?
線路の切り替え?
森?
終わりが来る
線路が切り替わる
鍵が変わる
この光景 知ってる
止めなければ
焦る未来が読めるなんて
こんなこと人に伝えて
誰が信じてくれるというのだろう
ママ お願い わかって
アメリカ行ったら
ダメなんだって
いつ
どこで
何が起きるかはわからない
そこまでは教えてくれない
でも起きるんだって
あれが。
アメリカに行きたくない
アメリカ行かないためなら
なんだってやる って 私言ったよね
ママと離れたくなかった。
家族と離れたくなかった
ペットたちと離れたくなかった
そんな素朴な幸せ
失うことになるなんて
誰も思わない
私がそれを
未来を知ってるだなんて
誰も信じてくれない
お母さん アメリカ行きたくない。
アメリカに行くと鍵が変わり
家に戻れなくなる
お母さんに会えなくなる
あかんねんて
ママの車の助手席に乗った時
あの光景が来た
車で起きるんや
どこ?
外国?
あかん
アメリカ行ったらあかん
でも
こんな夢みたいなこと言ったって
アメリカの車の中で
いつか
何かが
起きるだなんて
だからアメリカ行きたくない
勉強したくない
練習したくない
だなんて
こんな
非合理的な
勉強したくない言い訳
遊んで暮らしたい言い訳
としか
ひとは思わない
練習したらあかんねん
努力したら
アメリカにつながる
あれに繋がる
家に戻れなくなる
鍵が開かなくなる
お母さん お母さん
森の暗闇?
迷子になってる私が
見える
「お母さん 家に入れない 鍵が変わってるよ」
うたなんて歌いたくない
って言ったやん
レッスンすっぽかしたり
試験で寝たり
全てはことを未然に防ぐため
アメリカであれを起こさせないため
私はスピノザのいう神なんよ
必然なんよ
分かってたんよ
私は必死で
アメリカで
何かが起きるのを止めようとしていた
必然には逆らえないねんて
だからママ聞いて
って言い続けた
神はちゃんと知ってたんよ
そして
私は一時的には成功した
日本で高校に合格したから
アメリカ行かないで済んだのだ
光景が変わった
明るくなった
牧場?
動物たち?
これでいいんだ
幸せだ
でもこんなこと
誰も信じてくれない
頭に浮かぶ光景で
未来を読むだなんて
あの時の私だって
分からなかったんだから
でもあれは正しかった
だって
もう一度 同じことが起きた
音楽院へのアプリケーションが遅れて
もうアメリカダメだってなったとき
ママが
もういいや
こんだけやりたくないってことは
この道辞めとけっていうことやねんて
って言った時
ママが高校に電話して
もうアメリカ行くの辞めときますって
言った時
お花畑みたいな光景
光が一筋
きれい
これだって思った
ママ
みんな 神なんだよ
みんな 自分でわかってるんだよ
家の鍵だって
ほんとうは変わるわけない
分かってる
けど
分かってない
自分が変わったから
鍵が変わっただけ
歴史が書き換えられ
思い出の家への鍵を失い
家に戻れなくなる
そんな前後のない非時間で
故郷を喪失する。
家に戻りたい私が
いなくなるってこと
あの時はわからなかった
今もわからない
けどそうなんだろうと
推測はできてる
私が私じゃなくなるから
思い出が思い出
故郷が故郷で
なくなるから
歴史が変わったから
思い出の
家には戻れなくなった
番地が変わってしまって
番地を変えてしまって
ねじを回転させ過ぎて
戻りたい家でなくなってしまったんだ
故郷
枯れちゃったあの木
名前なんだっけ
ミモザだ
我が家のシンボルツリー
ママ もう一度植えようよ
私が努力しない理由
ふるさと
たったそれだけ
ママの下手くそなオペラ聞かされるあの故郷
されどそれだけ
高校に入った後も
練習も勉強もしないのは
私の人生を救うため
ふるさとを救うため
未来に悪いことが起きるのを止めるため
軌道が変更されるのを防ぐため
必然の神への道が
私に内在し
その神に
従いつつも
私が
抗って生きてる
だから
勉強も練習もしないなんて
誰が信じてくれたのだろう
未来が読めて
未来を変えたいんだと
未来を変えるために
こうこう
すれば良いのだと
ひとに伝えるだけの
伝わるだけの救済の言語を
神は人間に与えてはくださらなかった
言ったって
誰も信じない
「生きた人間の言語を超えた」言葉なんて
言葉ではないってエリオットも「リトル・ギディング」で言ってる
当たり前だ
そんな言葉など必要でないから
そんな言葉がないだけだ
神には抗えないのだ
ママに必然を伝えるだけの言葉がなかった
言語とは所詮
神に
必然に
起こるべくして
起こることに
抗えない範囲内での言語
だって
こんなこと
言葉で
伝え続けたら
私は精神病院行きだ
11 過去に間に合わなかった未来
ママに委ねるしか
なかった
「線路切り替わらない?」
「お家の鍵も変わらない?」
ママは言った
「変わらないよ」
「大丈夫」
「あなたの帰りを待ってるよ」
ママはずっとここにいるって
そして
「あなたはずっとここにいるよ」
って
ママは胸に両手を重ねた
ママ
あなたは
能天気な遅刻魔
これも必然
だから
私を助けられなかった
アリスはスピードが大事って言ったよね
私は
だから
森で迷う運命
ママに決して到達しない
娘が
「ママー」「ママーどこ?」って
心で泣き続けてるのに
どんな時でも遅刻するんだから
「ごめ〜ん」って笑ってる
ママはママなんだね
到達したくて
到達したくて
駅で待ってられなくて
あなたのいる駐車場に向かう
伝えたくて伝えたくて
でも伝わらない
ママはいつも
遅れて了解する
だいぶ遅れて了解する
でも
遅刻魔でも
ずっと私を思ってくれてることは
知ってたよ
うざいくらいにね
でも
ママ
そんな
愛=ハートみたいな
昭和=熱血みたいな
常識的な世界と違うねん
ほんとうの世界って
もっと非常識やねん
本当は未来が先にあって
それに追随して生きたら
過去になる
ママ
ママはわかんないだろうけど
ママとの永遠のさようならは
実は
2回 未然に止めれたんだよ
歴史は二度 変えれたねん
実は…
私 それをあなたにちゃんと伝えたんだよ
一回目は岩盤浴の予約を
ママが断るって
言ったとき
瞬時にあの光景が頭に浮かんだ
酵素浴行ってのぼせたって
だから明日の岩盤浴
また今度にしようって
ママが言った時
「あかん」
「岩盤浴行かなかったら
悪いことが起きる」
お母さんに会えなくなる
ってすぐに分かった。
あの光景が
いつもの光景が
森で迷子の自分が浮かんだ。
2回目はね
関西国際空港
ママもお別れの時
その手を伸ばし
私が出発ゲートに消えてしまうのを
止めようとしたのでしょう
ママ泣きそうな顔してた
一緒に関空でお蕎麦食べた後
泣きそうな私の顔を見て
止めようとしたのでしょう
離れたくなかったのでしょう
でもママは理性的
出国ゲートで大きな声で私を呼び
泣いて
「やっぱり帰ってきて
飛行機乗らないで
行かないで」
なんて
言わないひと
でも本当は言いたくて
叫びたくて仕方なかったんだろうね
分かるよママ
でもそうしてたら
未来は変わってたんだよ
だって知ってるでしょう
私だってほんとうは
行きたくなかった
本当は戻りたかった
ママがあの時 叫んでくれてたら
人生は変わってたかもしれない
私 叫べないから
だって叫んでも
もしかしたら
ママ 行きなさいって言うかもしれないし
私も
もしかしたら
行っても大丈夫かもしれない
やっぱ行こう 大丈夫だよ
って思っちゃっただろうし
にんげん やっぱり
否認の心理や理性が働いてしまう
そんなアホなこと あり得ないって
でもそうなんだよ
時間は逆さまに教えてくれてたんだよ
自分を信じるべきだったんだよ
12 「もう」と「まだ」が一緒にある
ほら
あの時だってブラウンのキラキラしたガラス片
どうしてこれがここに?
未来からやってきたガラス片
「まだ」割れてないものと
「もう」割れてる
同じものが同時に
同じ時間
同じ空間
に存在するはずなんてないんだから
そんなバカな
でも
ここにある
「まだ」と「もう」がここに
「まだ」割れてない茶色のガラス灰皿
と
「もう」割れたガラスのかけら
今から割れるって言うこと?
このガラス片 未来から来たんだよ
割れてないものが
これから割れる
何かがここで起きる
って人に救済を求めたら
誰か信じてくれた?
この道
私来ることになってた
前もって来るように
定められてた道
通るべく定められた道だって
知ってるって言ったら
そんなバカな
ってひとは言うでしょう
でも ほんとうは みんな
これ知ってるんだよ
始まりは終わりにある
終わりに始まりがあるって
例えばね
怪我をして
「痛い」って思う
「血が出てる」
「切れてる」
切れてる
って
真実 知るのは
ひとっていつも
最後なんだよ
事実確認
できるのなんて
いつも一番最後なんだよ
感覚が先に来て
未来に 事実
でも
本当と
ひとが思ってる道は
過去に事実
がある
反対向いてる
だから
人は信じない
血 🟰 未来の傷
ガラス片🟰未来に割れる灰皿
なんて当たり前のことを
みんな知らない
今から灰皿割れるよ
来るよ来るよ
ほら
割れた
あの男が灰皿投げた
知ってたの私
でも
どうやって割れるかとかまでは
わかんないんだ
そこまで神が見せてくれたら
止め方もわかるだろうにね
アリスは私のお友達
私の気持ちを
アリスは知ってる
未来が先に来て
過去が刻まれていく
あの時は
もう戻らない
アリスのお話し
私のたからもの
13 娘が私で犯罪の復讐を犯罪の前にする
あの電話
なぜ切った?
なぜすぐにアメリカに飛ばなかった?
1週間
2週間
3週間
もうすぐ1ヶ月
電話が繋がらない
電話にも出ない娘
日本国内で
娘が一晩帰らないだけで
警察に捜索願出して
捜索お願いするのに
なぜ飛行機のチケットを早急に
予約しなかった?
自身ながら
何度回顧しても
不思議でならない
もう遅い?
手遅れだから?
いつも
緊急時に
身体が固まったように動かない
金縛りにあったように動かない
3週間め
インスタが更新された
変だ
顔が違う
娘が娘じゃない
娘の性質がそこにない
あっけらかんと
底抜けに明るい
彼女が
そこにいない
顔が
娘は娘なのに
娘じゃない
そういえば
タバコ吸うようになって
最近 ママに雰囲気めっちゃ
似てきたなって
みんなに言われるって
言ってた
「大丈夫やったん?」
「なにが?」
「いまから殺されるって言ってたから」
「ママ何言ってるの? 頭おかしい?」
暴行されるって言ってた
絶対に事実
なんもなかった
良かった
それとも
あいつが言ってた通り
まだ未来が過去になってないの?
これ
私のインスタじゃん?
どういうこと?
これは未然だから?
それとも
迂回?
娘を迂回して
私に到達してるの?
誰が被害者?
私も被害者?
私が被害者?
未来が過去になる順番の中に
私が省略されてたの?
復讐を誓って彼に到達する
ときに
彼に襲われる私
がいるの?
順番おかしくない?
犯罪の復讐ではなくて
復讐が犯罪へ?
でもアリスの世界でもそうか
罪があって罰があるのではなく
罰が先にあって罪は後から作られる
いまの私って最低、私=私だよね
じゃあ
夢って思ってたあれは
夢ではなかったの?
もう何が何だかわからない
エリオット様
「世の中は次第にわからなくなり」
ってほんとその通りです
私が娘?
娘が私?
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