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交換「不」可能性 in「透明な迷宮」平野啓一郎著

「僕は必ず最期にあなたに会える」
もし永遠に離れ離れになったとしても…
右の乳房にある 二つのホクロ が
僕とあなたを引き合わせてくれる

それがあなたがあなたであり
僕が僕である (僕知ってるから)
何よりの証拠だから

おっさん(当時はにいちゃん)が言ったとき

私が私である
私の同一性って
死んだら
そんなもんかい
って思いつつ

平野啓一郎作品
「Re:依田氏から依頼」
の 依田さんの愛した涼子さんにも
同じ位置にホクロが「斜めに二つ」

同一性として弱いじゃないかと失笑

でも
依田さんも

「未知恵の体にはない二つホクロ」
涼子=涼子でなければならなかった
同一性のアイロニーに
打ちひしがれた

「凡庸な思想は、人間の唯一性への憧れを唆し、
交換可能性にヒステリックに抵抗する。
しかし、その実、
愛とは、誰でもよかったという交換可能性にだけ
開かれた神秘ではあるまいか?」
       ー平野啓一郎「Re:依田氏から依頼」

愛?結婚?
誰でも大差ない?
あの人がこの人になっただけで(笑)
そんな
ホクロに拘らんでも…?
て言うか
一生懸命生きてんのに
ホクロかい?
でも
たかが ほくろ
されど… かもしれない

だって
私が私であることなんて

父が何処ぞの女と母を抱く順番が違っていたなら
もう
私は私でなく
僕はもう僕でもない

私は彼女で
彼女は私

僕は彼で
彼は僕
ー平野啓一郎「火色の琥珀」

チャーマーズも「意識する心」で
私性とは何か?
私はなぜ
他の誰でもなき
この人物
ということになるのか。
いったいどう答えるべきなのかおよそはっきりしない」と言っている。

三叉路が目の前にあるのだ
涼子は見知らぬ男と立ち話をしていた。
向かい合う2人の👥シルエット
2人の間に潜む白い花瓶
判じ絵
道が二つに分かれる。

入れ替わりの可能性だってある
ヤドカリの貝殻のように
今の肉体→潜み隠されていた別の肉体へと…

なぜ 
涼子の姉 未知恵
ではなく
涼子でなければなかったのか?

あの車に乗るのを拒んでいたら?
乗ってからも、せめて口を開いていれば

未知恵ではなく 
涼子だった

でも 

あのタクシーに乗ったから
車内で熱烈なキスをしてたから

涼子が 死に

未知恵になった
        ー平野啓一郎「Re:依田氏から依頼」

「どういうことなのか、説明してくれ」
「真面目に話してるんだよ、俺は。真面目に答えてくれ」
「大体ね。…わたしのこと、好きになってくれたんだったら、妹も似たようなものなんだし、いいんじゃない、難しく考えなくても?」
……
「あり得たかもしれない二つの可能性」

双子の姉妹
美里と
美咲

ブダペストで会った美里
双子と知らず
半年間、日本で関係を持っていた美咲

日本で美里に
再会した人生と
再会しなかった人生

「あの朝、ほんの数時間、別々の道を歩いてしまったばかりに」
一緒にパスポートを取りに戻っていれば…

「異なる二つの世界」
        --「透明な迷宮」(平野啓一郎)

涼子
美里…
ホクロ
交換「不」可能性
同一性
愛❤️
そして
人生のアイロニー

上記引用作品は全てこの中に…

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