買い時

今日、やっと傘を買い替えた。

最近まで使っていた傘は、数ヶ月前から穴が空いていた。300円ショップで買ったものだったが、デザインがかなり気に入っていた上、現在では店頭に並んでおらず、同じものを買うことができない。小さな穴だったので、騙し騙し使っていたのだが、さすがにずっと使い続けるのも無理があると思うようになった。

さて、次はどんな傘を買おう？　何千円もするような傘は買う気にはなれず、だからと言って、他のものと区別がつかないビニール傘にするのも面白くない。インターネットで検索した結果、コンビニで扱っているちょっと高めのビニール傘を見つけた。持ち手の色は艶消しのグレー。ビニール部分には細かいボーダーのようなデザインが入っている。ビニール傘とはいえ、あまり見かけないタイプだ。

近所のコンビニで売っていることも分かった。しかし、これを買うためだけにコンビニに行く気が何故か起きない。デパートやショッピングセンターに買いに行くならまだしも、晴れた日に、わざわざ傘を買うためだけにコンビニに行くというのは、とても違和感がある。出来れば、傘を持って出かけるのを忘れた日に、途中で雨が降ってきて、目の前にあったコンビニに駆け込んだらちょうど良い傘が売っていたーーというシチュエーションであってほしい。

こんなことにストーリー性みたいなものを求めてしまっている自分をばかばかしく思いながらも、私は何ヶ月間も穴の空いた傘を使い続けていた。そしてついに、私の望んだシナリオが展開された。今日は転職後、初めての出勤日。夜は雨の予報だったのに、緊張して傘を持って家を出るのを忘れてしまった。退社時間になり外に出ると、雨が降ってきたのだ。帰り道にはあの傘を売っているコンビニがある。私はコンビニに駆け込んで、傘を買った。

実のところ、やっと傘を買い替えられたことにはそれほど感動しなかったのだけれど、理想のシチュエーションで買えたことに対しては満足している自分がいる。ビニール傘ではあるが、ビニール部分は交換可能な商品らしいので、今度はパーツ交換をしながら長く使い続けたい。
初出社の記念として。