Post-it! 気になる一曲 『風をあつめて』

アルバム『風街ろまん』より
はっぴいえんど
1971年


春になると、自然と頭の中を流れてくる曲がある。それがこの『風をあつめて』だ。ラジオから流れてきたこの曲を初めて聞いたのも春、だったと思う。
1971年の曲だということを忘れるくらい、聴くたびに新しさを感じる。沢山のアーティストがカヴァーしているのも、納得できる。

細野晴臣のボーカルがいい。低音と言われてるけど、倍音って言うんだろうか(専門的なことはわからない)ギターみたいな声だなと思う。
私は普段ほとんど邦楽を聴かない。バリバリの洋楽派だ。なぜならば、日本語の歌詞が刺さりすぎてしまい、気恥ずかしくなったり、つまり音楽どころじゃなくなってしまう。いや、じゃあ音楽って…と言われそうだが。
この曲は細野晴臣の声の「抽象性」がいい塩梅なのだ。洋楽好きな人ならわかると思う。

で、何と言っても松本隆の歌詞に唸らせられる。聴いているだけだとわからないが、歌詞カードの字面(じづら)を見ると、意外に凝った漢字使いだったり、不思議な言い回しだったりに目がいく。「伽藍」とか「舗道をひたす」とか、天才だなこりゃ。しかし、その凝った歌詞を、案外さらりと淡々としたテンポで流していくボーカルが、何とも心地よい。
歌詞が先にできていて、後から細野晴臣が曲を作ったそうだが、作曲はかなり難航したそうだ。どんなプロセスで作られたんだろう…。

この曲をリピートしていたのは、30歳頃のことだっただろうか。何となく空虚な気分を抱えて、毎日を過ごしていたような記憶がある。