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祈り

絶望する代わりに、祈ろう。

生まれる前の朝靄の中。

宇宙よりもっともっと遠くから響きが近づいてくる。
鈴のようで弦楽器のよう。
まろやかで鋭い煌めき、
地を這う倍音を伴って。

四方からやってくるそれを迎え入れて
名もない赤ん坊は光り出す。
祈りは、その時の名残りなのだ。

祈りは、私たちを待っている。
あの時の響きを自らの体内に取り込み
醸された個性的な音を奏でるのを。

だから、絶望することはない。
祈りの言葉を、言葉にならない何かを
声にしさえすればいいのだから。

君だけの音楽は、新しい匂いと響きに、
色とりどりの模様をつけて解き放たれる。

それが祈りの正体だ。
美しい、君だけの鳥。

解き放たれた鳥は、
どこか遠く、宇宙よりもっと遠くへと還ってゆく。

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