マガジンのカバー画像

黒澤友貴の日報

465
マーケティングの仕事をしたり、NPOの仕事をしたり、北欧に視察へ行ったり…領域を越境しながら生きている中での学び・発見を書いたことのまとめマガジン
運営しているクリエイター

#日経COMEMO

インタビュー情報だけで顧客を理解したつもりになってはいけない~人類学的思考とマーケティングリサーチ~

文化人類学や人文知の視点をビジネスに活かそうとする動きが広がっています。 象徴的なリリースとして、COTEN社がサイバーエージェントと人文知分野における業務提携を行うリリースがありました。 私も大学時代に文化人類学を学んでいたこともあり、改めて人類学・人文知の考えの可能性について、考えたことを書いていきたいと思います。 断片情報でわかったつもりになることの危険性マーケティングリサーチをしている中で、最も気をつけたいことは、断片情報を見て「わかったつもり」になってしまうこ

マーケティングを江戸時代から学ぶ~三井越後屋の戦略をトレース~

経営思想家のドラッカーは著書『マネジメント』の中で、東洋におけるマーケティングの始まりを17世紀半ばの三井高利だと書き、三井越後屋のマーケティングがアメリカの百貨店シアーズ・ローバックの基本方針より250年も先んじていたと評価をしていることは有名な話です。 現在使われているマーケティングの考え方は、米国から輸入された考えが大半ですが、改めて日本独自に生み出された考え方を事例を体系化していくことが大切だと考えています。 この記事では、ドラッカーも取り上げた三井越後屋をテーマ

ライザップのマーケティングコンサルティング事業開始について考えたこと

ライザップがマーケティングのコンサルティング事業を開始したとのニュースがありました。 このニュースの裏側がどうなっているのか、マーケティング業界に与える影響などについて考えたことを書いていきます。 なんといっても、chocoZAPの成長があっての動きだと思いますので、詳細を見ていきましょう。 chocoZAPの現状はどうなっている?chocoZAPは2022年9月に展開開始しており、2年が経過しようとしています。 2025年3月期の決算説明会資料を読み込むと、choco

Netflix「地面師たち」を見て、コンテンツ体験について考えたこと

Netflixドラマで話題となっている「地面師たち」を見ました。 評判通り面白くて、一気見してしまいました… 実際に起きた地面師詐欺の事件をもとにした、生々しく記憶に訴えかけるストーリー展開、シーン描写。 ネタバレし過ぎない程度に、Netflix・地面師たちから考えた「優れたコンテンツ体験」について書いていきたいと思います。 ポイント①やはり「生々しさ」が人を惹きつけるNetflix作品はテレビ局ではできない、生々しいコンテンツをづくりが特徴だと言われます。 その通

生成AI時代と不便益の価値

自分で組み立てるDIY体験が商品に特別な価値を与える「IKEA効果」と呼ばれる現象があります。 このIKEA効果について研究エビデンスを提示している面白いレポートに出会いました。 IKEA効果によって生じる認知メカニズム自分で組み立てるDIY体験が商品に特別な価値を与える「IKEA効果」の現象は、左右の前頭前野の活動と関連していることが証明されたとのことです。 つまり、ブランド体験において「使い手が一手間かける」ことには意味があるということです。 この一連の流れが脳の

自己効力感と優れたブランド体験について

顧客の「自己効力感を高めるブランド体験づくり」が最近のテーマです。 自己効力感とは自己効力感とは、「自分ならできる」「自分ならきっとうまくいく」という認知状態のことです。 自己効力感の提唱者のバンデューラは下記のように定義をしています。 優れたブランド体験は、 ・小さな成功体験が積み重なって自信がもてる! ・このブランドとであれば目標を達成できる! といった心理状態をつくることが上手だと感じています。 ちなみに、自己効力感のキーワードは、昨今検索ボリュームも高まってい

ファーウェイは、なぜ米国の制裁を受けながらも成長できているのか?

ファーウェイの売上、利益推移を確認すると、 え、こんなに早く回復しているの? そもそも、過去10年でこんなに成長し続けているの? と驚きました。 独自のビジネスエコシステムを設計成長の中身をみると、さらに驚きです。 ファーウェイは、米国の制裁で一時的に業績を落としたものの、ビジネスモデルやサービスは逆に大きく進化させています。 ここら辺、日本企業がやりたかったことですよね… 1. 独自OS開発からエコシステム設計 自社独自のHarmonyOSと取り巻くエコシステム設

マーケターはDE&Iにどのように向き合うべきか?

耳にすることが増えてきた言葉「DE&I(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)」 最近は、ブランドコミュニケーションにDE&Iの概念を正しく理解して、伝えていくことが求められてきていると感じています。 評価される広告表現とDE&Iの事例世界で評価される広告は、「DE&I(Diversity, equity, and inclusion)」の価値観を反映しているものが増えてきています。 例えば、 Appleのショートフィルム「The Greatest」 App

無印良品の生みの親、堤清二さんから学ぶ市場と文化のつくり方

最近読んで面白かった本が、「セゾン 堤清二が見た未来」です。 ・新しい市場・文化をつくるとは何か? ・マーケティングの仕事における文化との向き合い方とは何か? といったことを考えながら読んでいました。 堤清二さんって何者?堤清二さんは、セゾングループの代表として1980年代から2000年代前半にかけて、日本の経済・文化の基盤を築いた人。 実業家でありながら、小説家・詩人としての活動もしていて、 ・経済成長 ・文化的な成熟 のバランスを如何に保つかを考え抜いていた人です。

ニュースは古い記事から読むことでマーケティング思考を磨く

マーケティング思考を磨く情報インプット方法を考える上で、参考になった書籍を1冊あげるとしたら「逆・タイムマシン経営論」です。 マーケティングセンスとは何かを考えると、 時代の中で変わること、変わらないこと を見極める力であり、その力は新聞や雑誌の読み方を変えるだけで身につけられることを教えてもらいました。 歴史から学ぶとは何か?マーケティングに限らずビジネス全般で「歴史から学ぼう」とよく言われます。 この歴史から学ぶことをマーケティングの仕事に置き換えると何かを整理して

東北の伝統工芸「こけし」の価値をマーケティング視点で考えてみる

最近は、こけしの価値に注目しています。 みなさん「こけし」にどのようなイメージをお持ちですか? 自分は、 祖父母の家にあった置き物… のようなイメージでした。 そこまで良いイメージがあったわけではない「こけし」だったのですが、 こけしの名産地である福島県の土湯温泉でプロジェクトに関わっている中で 「こけしの価値はもっと高められるのでは?」 と感じるようになりました。 新・ラグジュアリー視点で捉えるこけしこれから求められるブランドとは何か?を考える上で参考にしているの

自分の常識を捨てるためにフィールドノートの技法を学ぼう

マーケティングリサーチで大切にしたい態度がまとまっている記事を、日経クロストレンドの連載で見つけました。 赤ちゃん向けの玩具を開発するピープル株式会社が運営する「ピープル赤ちゃん研究所」という、赤ちゃんの行動観察を行う専門組織の取り組みが紹介されていました。 研究所のコンセプトが素敵です。 記事の中で、このような行動観察の「心得」が紹介されていました。 調査前に決めつけていないか?私も、普段の仕事で行動観察(エスノグラフィーと呼ばれるもの)をプロジェクトで取り組むこと

ドーミインの何が顧客を幸福にしているのか?ウェルビーイング因子と顧客体験の関係性

日経クロストレンドの連載:新指標「顧客幸福度」ランキング2024 この中で、ドーミインがビジネスホテル業界トップのスコアになっているとありました。 ドーミインのサービスレベルが、ビジネスホテルの一般基準より高いな… とは、宿泊したことがある人であれば実感されている人が多いのではないでしょうか。 自分も出張時は、8割以上ドーミインに宿泊します。 ドーミインの体験エピソードを読むと、改めて凄さがわかります。 これらの体験のどこにウェルビーイングとの関係性があるのかを考え

話題の経営ゲーム「Coffee Inc 2」から学ぶ、自分の欲しい・理想を追求するからこそ生まれる優位性

濃すぎる経営ゲームと話題の「Coffee Inc 2」の裏側が面白く、学びに溢れていました。 自分も遊んでみたのですが、本当にこのゲームひとりで開発したのですが… と驚くレベルです。 逆に考えると、ひとりでこだわり抜いて開発したからこそ生まれた体験なのかもしれないとも考えています。 自分がやりたいゲームを追求したからこそよくマーケットイン発想が大切だと言われます。市場や顧客のニーズから逆算をして戦略をつくることは、もちろん大切です。 しかし、中途半端な市場調査が、一見