『カイロ宣言』における「清国人」は誤訳ではないか?
昔から気になっていたことがあります。
それは『カイロ宣言』の次の一節です。
ここれは連合国の目的が書かれている訳ですが、2つの要素に分けられていることが判ります。
まず、
は、意味は一応判ります。
要するに「第一次世界大戦以降に日本が得た太平洋の領土を剝奪する!」という意味です。具体的には日本の委任統治領であった内南洋(ミクロネシア)のことを指しているのでしょう。
もっとも日本から「剝奪」した後、これらの地域を独立させるとは言っていないことに注目。
内南洋、いわゆるミクロネシア地域はその後アメリカの信託統治領となり、アメリカが独立を支援するまで統治すると言う建前となりましたが、アメリカにそれを守る気などさらさらなかった、いや、少しだけあった、というのが正確なところでしょう。
ミクロネシアの確かに相当部分はミクロネシア連邦として独立し、またマーシャル諸島共和国やパラオ共和国も独立はしましたが、この3国は自由連合盟約によりアメリカに外交権を制限されています。
さらに、北マリアナ諸島(サイパン等)に至っては正式にアメリカ領に編入されることとなり、結局「日本から剝奪」した後はアメリカが手に入れると言う内容であった訳です。
そういう訳で言っていることが正当化はともかく、この宣言を書いた連合国――実際には殆どアメリカがかいたと言われていますが――の意図はわかりやすい。
しかし、後半の
は、さっぱり意味がわからない。
どういうことかと言うと、ここでは「満洲、台湾及澎湖島」を日本が「清国人ヨリ盗取シタ」とあります。
そうなのか、連合国にとって満洲国建国は日本が清から満洲を盗取したと言う認識なのか・・・って、おい!
満洲国建国は大清帝国が亡んだ後の話じゃねぇか!
そう、満洲を日本が「盗取」したのか、と言うことについても色々ツッコみたいのですが、それ以前に既に亡んだ国である清国人から盗むことなど不可能なのです。
しかし、いくら連合国でもそこまでアホじゃないはず。
もしも本気で連合国が清が何年に亡んだかも知らないアホであればウケますが、そんなことによりも『カイロ宣言』を翻訳した日本政府の方がアホである可能性がどうしても脳裏をよぎってしまうのです。
と言う訳で、当該部分の英語を見てみましょうか。
・・・はい。やっぱりアホなのは日本政府でしたね。
どういうことか、重要部分を太字にして再掲しますね。
これ、どう見ても文脈上「Cnhinese」から盗んだ領土を「the Republic of China」に返せと言う意味意外、解釈できないですよね?
無論、「Chinese」は「China」に接尾詞の「-ese」を付けただけのものですから、これは同様の言葉として訳すべきでしょう。
つまり一方で「China」を「中華」と訳すのであればもう一方の「Chinese」は中国人と訳すのが適切です。
そうだとすると、これは「中国人から盗んだものは中国(中華民国)に返せよ」と言っているだけと言うことになります。それだと、歴史認識はともかく、言っている意味は判ります。
無論、歴史上は「China」を「清」の意味で用いることもあります。
「清」の発音は英語では「Qing」や「ching」と表記され、要するに「China」と近い発音であったこともあり、各種条約では「中国」ではなく「清」の意味で「China」が用いられることはありました。
が、この『カイロ宣言』は文脈からして「特定の王朝」の話をしている訳ではないことは明白です。
なんでわざわざ「Chinese」を「清国人」という「特定の王朝の人」として訳したのか。そう訳して日本に徳がある訳でもなく、全く意味不明なり。
と言う訳で、私が今後『カイロ宣言』を引用するときは「清国人」を勝手に「中国人」と訂正していたりするかも、知れません。
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