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”前近代”的な保守思想を「近代擁護」と見做している上野千鶴子氏と早川タダノリ氏

 既に訂正したが、上野千鶴子氏が「女性」政治家の発言を捏造した上で非難するという、普段の「女性の味方」面はどこに行ったのか、と言う発言をしていた。

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 男性議員の発言を女性議員の発言として攻撃する。これこそ女性差別に見えるが、この種の攻撃をしたのは上野氏だけではない。石川優実氏もである。

 ちなみに、上野千鶴子氏は学者としての最低限の良心があるのか、撤回まではしていないが、石川氏にはデマだと言う主張も馬耳東風。男性の行為を女性の行為扱いして女性を攻撃すると言う、絵に描いたような「女性の敵」として活躍している。

 上野氏や石川氏がフェミニストであることに異論はない訳であるから、「フェミニスト=女性の権利を守る人」と言う定義は既に破綻していると言えるだろう。

 では、彼らはどうして女性を犠牲にしてでも活動を続けるのであろうか?一体、何が目的なのだろうか?

 上野氏は曲がりなりにも学者であるが、学術論文は仮に左翼学者であっても事実関係の8割は本当だから、有難い。

 上野千鶴子氏が女性議員の発言を「捏造」した上で攻撃した件、私は「そりゃ女性の権利なんか考えていないのが本音だもんな」と思ったが、一方で「上野さんの学者としての良心は?」と言う疑問も抱いていた。

 加藤千香子氏の「近代日本の国家と家族に関する一考察」は、それについて一つの回答を与えるものであった。

 上野氏は日本の「家制度」を「近代家族」の制度として捉えている、という。

 これは、早川タダノリ氏が保守派の本音が「家制度復活」ではなく「新自由主義」だと分析しているのと相似だ。

 これは単なる「伝統的家族」へのノスタルジーなのではないし、必ずしも「家制度復活」を目指しているのでもない。とはいえ、彼らが恐れおののいているのは、彼らが幻想的に思い描いた〈日本国家の基礎〉が崩壊しかねない・革命のような事態だと認識しているからだ。
(早川タダノリ「自民党保守派にとって「選択的夫婦別姓」は姓氏だけの問題ではない 議論を後退させた背景にある“国家観”」より、太字は引用者)
 けれども、彼らは単純に復古的な「家」制度への回帰を目指しているのではない。(略)
 彼らもまた、明らかに復古的な「日本の伝統的家族」の規範をふりかざしながらも、実際に推しているのはネオリベ――というねじくれたことをやっているわけである。
(早川タダノリ「「選択的夫婦別姓」を阻むネオリベ政策 自民党は「家族」になにを押し付けようとしているのか」より、太字は筆者)

 ちなみに、早川タダノリ氏の記事はタイトルで「自民党」を批判しているのに、何故か本文で亀井静香先生を批判している。亀井静香先生は反自民のはずだが、この件に限らず一部のリベラル・フェミニストは、意図的なのか亀井静香先生を自民党の代弁者のように扱っている。

 この辺りにも左翼側の「認知の歪み」がありそうだが、話を先に進もう。

 重要なポイントは、上野氏や早川氏が保守派を「前近代勢力」ではなく「近代勢力」と捉えている、という事実である。

 その観点からは「近代社会における弱者である女性を守る」と言う保守思想の側面を支持している女性の存在は、無視される。

 むしろ「保守派の女性=近代社会の強者」と解釈され、攻撃の対象となるのである。

 上野千鶴子氏の言う「近代家族」と言うのは、言い換えると「古典的自由主義に親和的な家族」であり、早川タダノリ氏が想定する「新自由主義に親和的な家族」と「=」とまではいかなくとも「≒」ではある。

 上野氏の団体の関連行事で講演をしている清末愛砂氏も家制度と新自由主義とを結び付けている。

 最後に、新自由主義に基づく経済政策(「アベノミクス」)と家族の助け合いという<家族主義>は、「政府が介入を止める」というキーワードでつながっているとし、政府が担うべき社会保障などの公的サービスを家族に肩代わりさせて福祉を切り捨てる手段として<家族主義>がもうすでに用いられてきており、これがさらに加速されると、家族で育児や介護を抱えざるを得ないけれども、その継続は難しく、劣悪な雇用条件や労働環境の民間の介護ビジネスに頼らざるを得なくなる、すると介護ビジネスは利益を手にすることができる、という風につながっていると説明しました。
(NPO法人ウィメンズ・アクション・ネットワーク「「24条変えさせないキャンペーン」キックオフシンポジウム報告 24条変えさせないキャンペーン実行委員会」より)

 どうも、彼らの脳内には「保守派=近代社会の強者」と言う暗黙の了解があるようである。

 言うまでもなく、保守主義と言うのは多かれ少なかれ「近代化への懐疑」が思想に含まれる訳であるが、上野千鶴子氏や早川タダノリ氏にとって保守派は(保守的な女性も含めて)

「近代社会の支配者を支持する存在」

でしかない。上野氏たちが発言を捏造してまで保守派「女性」を攻撃する動機がここにある。

 だが、率直に言って彼らの事実認識は「新自由主義陰謀論」以外の何物でもなく、保守派の人間が新自由主義者の手先であるかのような主張は、根拠のない妄想であると言わざるを得ない。むしろ、保守主義者は政界でも論壇でも新自由主義者と対立してきた。

 このような彼らの認知の歪みが、「女性の権利」を掲げて女性を攻撃するという彼らの行動形態に繋がっていると言えるであろう。

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