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在来線一日交通圏構想について

 先日「整備新快速」に関連して「在来線一日交通圏構想」について少し触れたが、ここで詳しく説明させていただきたい。
 「一日交通圏構想」は田中角栄内閣の頃に提唱された、新幹線や高速道路の整備によって「一日に日帰りで往復できる交通圏」を増やそうという構想である。
 ここで言う一日交通圏とは、具体的に言うと「片道3時間以内で行ける場所」のことである。往復だけで6時間以上かかると、日帰りは難しい。
 これは今世紀に入っておおむね達成できており、今では大阪や東京の住民から見ると全国の人口の九割が一日交通圏に住んでいることになる。
 さらにリニア中央新幹線が全線開業すると東京・横浜・大阪・名古屋と言った大都市すべてを片道1時間で移動できるようになり、一日交通圏は飛躍的に拡大することになる。
 しかしながら、この構想は田中角栄の思惑から離れて「都市同士を一日交通圏として結ぶ構想」になってしまっており、結果的に田舎から都会へのストロー現象を悪化させてしまっている。
 今求められるのは、田舎同士を結ぶ構想であって、都市同士を結ぶ構想ではない。
 JR東海のサイトで、リニア中央新幹線が実現した場合の面白い比較が載っていた。
 それによると、東京駅から立川駅まで40分かかるが、それと同じ時間で東京駅から名古屋駅まで行けるようになる、と言う。要するに、多摩地区に住むのも名古屋市に住むのも東京へ行く利便は変わらなくなる、と言うことだ。
 一見良いことに見えるが、先に田舎の利便性を上げないことには、どんどん地方の荒廃が進む。
 立川市は決して田舎ではなく都会であるが、とは言え田舎と比べれば恵まれている多摩地区でさえ、東京の区部と比べると格差がある。同じ東京都内でも格差があるのだから、況してや関西の田舎など酷い有様だ。
 さて、静岡県には新幹線ののぞみどころか在来線の快速すら通っていないため県知事が拗ねるのも当たり前のリニア中央新幹線構想だが、政府はメディアを総動員して静岡県知事を一方的に悪者にしながらリニア中央新幹線を通そうとする一方、同じ力を地方交通線の廃線阻止には絶対に向けない。
 まさに地方交通線こそ、田舎同士を結ぶ貴重な路線である。
 もちろんJRも営利企業であるから、あまり赤字が過ぎると廃線にせざるを得ないのだが、そうなる前に政府が打てる手は山ほどある。
 例えば地方交通線が黒字になれない理由の一つが、利用客数(旅客輸送密度)が少ないからだ。しかし地方交通線も便利になれば利用客は当然増える。
 そこで登場するのが「在来線一日交通圏構想」である。
 在来線を使うだけで1日でここまで行ける、というのを政府がアピールすればよい。在来線1日交通圏を広げるための助成金もJRに出す。
 その際、五畿八道を基準にするのが良いであろう。
 同じ道の半分以上の駅を在来線1日交通圏にすると政府が助成金を出すとか言う風にするのだ。もっともその助成金も「路線が維持できるのに充分な金額」でなければならない。
 上下分離方式について鉄道会社では抵抗ある方もいるようだが、これだと大した抵抗はないだろう。


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