見出し画像

経済安全保障の定義すら明記していない岸田政権の基本方針

 立憲民主党は令和4年(西暦2022年、皇暦2682年)9月9日に岸田政権が検討中の「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する基本的な方針」等について申し入れを行いました。しかし、9月30日制定の基本方針では残念ながら立憲民主党の提案は受け入れられませんでした。
 世間ではマスコミとネトウヨによる印象操作により、立憲民主党が安全保障政策について消極的であるかのようなイメージが広まっていますが、少なくとも岸田政権よりかは積極的に安全保障を考えています。(比べる相手が酷すぎて自慢になりませんが。)
 立憲民主党は昨年、まだ岸田政権が出来る前に国会に『領域警備法案』を提出しました。この法案には自民党内でも元自衛官の佐藤正久先生らから賛成の声が上がっていたのに、今に至るまで自民党執行部は採択を拒否しています。
 また昨年の衆院選では公約に経済安全保障を掲げ、今年では経済安全保障に人間の安全保障や食料安全保障、エネルギー安全保障等の概念も総合的に加えた「生活安全保障」を提唱しました。
 そうした中、安全保障に消極的な岸田政権もようやく重い腰を上げて『経済安全保障推進法』を提出しましたが、その内容は多くを政令や省令に委ねるもので、いわば「官僚任せ」にした無責任な立法でした。
 日本では法律と政令・省令の効力については、政令・省令が法律の委任の範囲内で制定されている限りにおいて基本的に差がありませんが、法律は国会で審議されたものですから政党全体が責任を負うのに対して、政令は大臣たちだけ、省令に至っては官僚が作成した書類に大臣が印鑑を押すだけです。つまり、政令・省令になると岸田首相本人の責任を問われる度合いがそれだけ下がるという事であり、そこに岸田首相の本心が現れています。
 しかしながら、立憲民主党は形だけでも岸田首相が経済安全保障についての法律を制定しようとしたことを評価し、ただ政令・省令が完全に官僚の言いなりになってしまうとそれは政治家としてあまりにも無責任ですので、附帯決議を付けることを提案しました。附帯決議には法的拘束力はありませんが、官僚たちは政治家とは違って真面目な人が多いのですので、附帯決議を尊重した政令・省令を制定することが多いからです。
 すると自民党は立憲民主党の附帯決議案を丸呑みして賛成したので、立憲民主党も『経済安全保障推進法』に賛成しました。
 こうした経緯を経て岸田政権が経済安全保障に関する基本方針を検討していたのですが、その案は想定以上に杜撰でした。
 特に酷いのは、経済安全保障の定義を明記していないことです。これでは何のための基本方針なのか、判りません。
 立憲民主党は9月9日の申し入れで「定義に係る国会答弁を踏まえ、より分かりやすい説明を明記すること」を求めましたが、これについて政府は全くのゼロ回答で、9月30日閣議決定の基本方針にも経済安全保障の定義は記されていません。
 一方、立憲民主党は「自由かつ公正な経済活動の促進との両立」、「必要最小限の規制」、「事業者の自主性の尊重」、「国際約束の誠実な履行」の四点を明記することも申し入れしましたが、これについては担当閣僚である高市早苗先生のお蔭か(立憲民主党は高市早苗先生に申し入れをしました)、基本的にこの四原則は基本方針に盛り込まれることとなりました。
 しかしながら、立憲民主党が問題視した「市場や競争に過度に委ねず、政府が支援と規制の両面で一層の関与を行っていく」の部分はそのまま残りました。無論、市場に対して政府が「一定の関与」を行うことは重要ですが、「一層の関与」というと安全保障を名目に政府が経済を統制する中国共産党のやり方を連想してしまいます。現に岸田政権は中国をモデルとしたスーパーシティ構想を検討する等しており、岸田首相が習近平国家主席のような独裁者になろうとしていることは明白であると考えます。
 また立憲民主党は政令・省令の制定については労働界、法曹界、関係事業者団体、消費者団体など幅広く各界の多様な意見を聴取し、反映させることを申し入れしましたが、基本方針では有識者会議の意見を聞くとしており、注釈で有識者の定義を「安全保障の確保に関する経済施策等に関し知見を有する者」としています。
 知見を有するだけであれば、政府が「一層の関与」を行うと言っている業界の当事者である必要はない訳です。極端な話、机上の空論を言う学者の意見だけを聞いて官僚が書いた省令案に大臣が印鑑だけおす、というようなことも起こり得ます。
 今回の基本方針からは、岸田首相自身が我が国の安全保障政策について消極的であり、野党や党内保守派からの批判を恐れて「嫌々」法律を作り面倒なことは全て官僚に責任を押し付けよう、という背景が見え隠れしています。
 世間では「外交と安全保障は自民党」という方が未だにいますが、少なくとも『日韓慰安婦合意』や『日台漁業取り決め』、「RCEP」、「TPP」と言った様々な売国政策を外務大臣時代から推進してきた岸田文雄氏が総裁である限り、外国と安全保障の観点からも政権交代が望まれると言わざるを得ません。

ここまでお読みくださり、本当にありがとうございます。 拙い記事ではありますが、宜しければサポートをよろしくお願いします。 いただいたサポートは「日本SRGM連盟」「日本アニマルライツ連盟」の運営や「生命尊重の社会実現」のための活動費とさせていただきます。