水藤友基 / Tomoki Suito

釣りのライター・映像ディレクター/執筆→Basser、ルアーマガジン他/編集→『適材適…

水藤友基 / Tomoki Suito

釣りのライター・映像ディレクター/執筆→Basser、ルアーマガジン他/編集→『適材適所のルアーセレクト』、『オリキン式 バス釣りを能率化する68のメソッド』、『僕たちのバスフィッシングに、セオリーは必要ない。』(北大祐&木村建太)ほか www.tank-er.com

最近の記事

洗濯物干すのもバスフィッシング

みんな毎月どのぐらい釣りに行けるのだろう。週休2日だとして最大で8日? 体感的には、その半分ぐらいの人が多いような気がする。年齢、生活環境、経済状況の違い。たとえば大学生で、しかもフィールドの近くに住んでいたらお金がなくても毎日オカッパリできるかもしれない。逆に東京の大学生なら、たとえ実家住まいでも自分の車+潤沢なお小遣いがないかぎり、そもそもバス釣りなんて始めないだろう。 ニンゲンの一生のなかでいちばん時間の自由がきく大学生でさえこうなのだから、社会人がバス釣りを継続する

    • 「このボックスのなかで釣ったことあるルアーって何個ッスか?」

      季節の変わりめになると使うルアーの種類も変化する。真夏日が連続していたゴールデンウイークの深夜、押し入れからタックルボックスをひとヤマ、運び出して、これから登板機会が増えそうなトップウォーターを普段のボックスに移動させたり、先端の甘くなったフックを交換したり、プロップペッパーのカチカチ鳴るペラをほかのスイッシャーに移植したりしていた。 それにしてもガチで山。バス釣りってこんなにルアーが必要なんですか? と訊ねられて答えに窮するぐらいには山盛りだ。 「状況に応じて使い分けた

      • グレッグ・ハックニーのタフな国。

        (バスマスタークラシック2022 取材記④) 公衆トイレの扉を開けると、蛍光イエローのビブスを着た若い男が、小便器の前に立っていた。バスマスターの会場整理のスタッフだろう。僕より20cmくらいタッパのある彼の隣に並び、用を足して、手を洗って、日本から持ってきた手ぬぐいで手を拭き、そして僕がトイレを出るまでずっと、その若い男はとめどなく水音を立て続けていた。これがアメリカだと思った。器が違う。単位はガロン。 地図を広げればこの大陸がデカいことはすぐわかる。しかし一体どのくら

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        • バスマスタークラシック2022取材記③ 準備編(2月〜)

          バスマスタークラシックが開催されるレイク・ハートウェルへ向かうには、国際線の乗り入れている空港だとアトランタが近い。近いといっても200kmくらい。アトランタ空港でレンタカーを借りるとして、約2時間の移動だ。 別のルートとして、国内線に乗り継いでグリーンビルという街の空港で降りる手もあるが、どちらにせよレンタカーは必須なので、せっかくだから2時間ぐらいドライブするほうが楽しそうだ。 「アメリカ レンタカー」でYou Tubeを検索。日本とは違う交通法規を学ぶ。こういう動画

        洗濯物干すのもバスフィッシング

          バスマスタークラシック2022取材記② 準備編(年末〜)

          バスマスターにオフィシャルなプレスとしての取材申請をしたが、2週間近く梨のつぶて、というのが前回までの話。がんばって催促メールを書いて、再びエミリーさんに送ってみた。それが12月23日のこと。それからさらに5日ほど待って、年末ギリギリに返事が届いた。 “グッドモーニング! いま、オフィスは休暇のため閉まっているのですが、申請が許可されたことをお伝えしておきますね!” アメリカでは12月20日ごろからクリスマス休暇に入るらしい。だけど申請したのはそれよりずっと前だったと思う

          バスマスタークラシック2022取材記② 準備編(年末〜)

          バスマスタークラシック2022取材記① 準備編(12月〜)

          「取材に行く」と決めたからといって、現地に飛べばオールOKなわけもない。オフィシャルな場に出入りする許可を得たり、トーナメント中に選手のボートに直接乗せてもらったりするレベルの「取材」をするには、大会を主催しているバスマスターに申請をする必要がある。 公式ウェブサイトからメールアドレスを探す。エミリーさんという人が担当者だとわかったので、ここにメールで質問を送ろうとしたが、英文でまとめるのに小一時間かかってしまった。 まず自分が何者で、なにをしたいのか端的に書く必要がある

          バスマスタークラシック2022取材記① 準備編(12月〜)

          (ライブスコープを買うかわりに、)バスマスタークラシック2022に行くことにした

          アメリカにはバスフィッシングのプロ組織がある。 なかでも長い歴史と伝統を誇るのが「B.A.S.S.」だ(以下、バスマスター)。1960年代から賞金の発生するプロトーナメントを開催し続け、現在では世界中に下部組織がある。 その選手たちのピラミッドの頂点にあるのが「エリートシリーズ」というカテゴリー。2022年現在、ここには日本人選手が4人エントリーしている(青木大介、伊藤巧、木村建太、松下雅幸)。 彼らは年間9試合ほどを戦って総合順位を競っているのだけれど、それとは別に、選

          (ライブスコープを買うかわりに、)バスマスタークラシック2022に行くことにした

          磯釣りのベテランにバス釣りをナメられて、なんて答えよう?

          ひょんなことから初めてグレ釣りに連れていってもらって、そのあとに別のひと(たぶん十歳ぐらい上の磯釣りのベテラン)から言われたことを、いまだに覚えている。「バスよりぜんぜん引くだろ?」 そういうことじゃないんだけどな、と思った。 これが、お祭りの金魚とヨーヨーだけが人生で唯一の釣り経験ですという人のセリフだったら平気で聞き流せたと思う。いつだったか、先輩の奥さんにブラックバス関係の仕事をしていると話したときに「へぇ、なんか環境に悪いサカナなんでしょ」と言われても別に腹は立た

          磯釣りのベテランにバス釣りをナメられて、なんて答えよう?

          イヤイヤ期と「水が悪い」だいたい同じ説

          「ターンしてる」。バス釣りでしばしば使われるフレーズだ。ギンギンに冷え込んだ晩秋の朝、水面が普段とは違うイヤ〜な感じになっているとき、そこでは「ターンオーバー」なる現象が起こっているらしい。表層の水が冷やされ、重くなって沈み込んだ結果、ボトム付近のヘドロチックな水が舞い上がる、それがターン。サオ先で水面をバチャバチャ叩くと、生じた泡がしばらく残っているような感じ。「水が悪いっすわ〜」と言いたくなる感じ。 「先週来たときに比べると水が悪くなったね」 「本湖は水がよかったのに上

          イヤイヤ期と「水が悪い」だいたい同じ説

          バス釣りやってるひとが怖かった。

          だってグラサンかけてるから。 バスをやりはじめたのは、国道171号線沿いの「京都府下で当時いちばん規模の大きなエロ本自販機コーナー」が設置されていたエリアの中学校に通っていた時期だった。1993年ごろなので、ボンタン履いて学ランの内側に刺繍入れてるタイプの先輩が、まだぎりぎりかろうじて存在していた。 そういう環境だったせいか、ひるひなかにサングラスかけてるのは全部ヤンキーだと思っていたフシがある。家から自転車で5分の野池でバスハンターを投げていると、そういう風貌のお兄ちゃ

          バス釣りやってるひとが怖かった。

          「バス釣りのセオリー」に関する本を作りはじめました。

          釣りの本にはいくつかの定型がある。釣り場ポイント紹介。特定の個人のスタイルや流派を解説するもの。自分語りエッセイ。スペシャルで新規なテクニック披露。多魚種の仕掛け図。図鑑系。ビギナー向け入門書。 バス釣りの場合はここに「パターン解説系」が加わる。なぜならブラックバスは季節ごとに特定の行動パターンを繰り返す(と、されている)から。さらに期間を狭めて、どこかの水辺で1日釣りをしたときにも、反応しやすいルアーの種類やバスの居場所などには一定のパターンが見出せる(と、されている)か

          「バス釣りのセオリー」に関する本を作りはじめました。

          夫婦ゲンカのすえプラクティス(練習)に行ったらバス釣り大会で優勝して25万円の賞品をもらった話(後編)。

           バチが当たった。ビッグバドで45cm(推定)をバラした瞬間にそう思った。なんのバチだ。七五三の前後に釣りに行く、などという愚行のバチだ。  そういえば前日、神社でご祈祷の際に「一万円です」と言われ、あれ、ウェブには5千円と書いてあったのに? と戸惑っていると「5名様まで5千円、6名様からはこの金額です」と説明され、ゼロ歳児も人数に含めるのかよアコギだなとバチ当たりな考えが脳裏をよぎったのだけれど、1回釣りに行くだけでも高速代ガソリン代ボート代食費そのほか合計●万円ぐらい掛

          夫婦ゲンカのすえプラクティス(練習)に行ったらバス釣り大会で優勝して25万円の賞品をもらった話(後編)。

          夫婦ゲンカのすえプラクティス(練習)に行ったらバス釣り大会で優勝して25万円の賞品をもらった話(中編)。

           夜が明ける前から、ブラックバスのトーナメントは始まる。自宅を出たのは午前3時だった。家には誰もいなかった。前日の土曜日が七五三だったので、そのままほかの家族は奥さんの実家へ。金曜プラクティス、土曜日七五三、そして日曜トーナメント。「お父さんは七五三を釣りでサンドイッチするんだって〜」と、奥さんが3歳の娘に大声で言っていた。  天気予報のとおり暖かい。暗いなかでレンタルボートの準備をしていると汗ばむほどだった。だんだん明るくなって、知っているひとの顔がちらほら見えるようにな

          夫婦ゲンカのすえプラクティス(練習)に行ったらバス釣り大会で優勝して25万円の賞品をもらった話(中編)。

          夫婦ゲンカのすえプラクティス(練習)に行ったらバス釣り大会で優勝して25万円の賞品をもらった話(前編)。

           保育園児と保育園未満児がいる家庭で、休日に釣りにいくバカな父親はたぶんいない。じゃあ平日はどうか。私の役割は朝9時ごろに長女を登園させることなので、平日の早朝から釣りに行くためには、その役割を奥さんに交代してもらわねばならなくなる。押し付けることになる。  ゆえに妥協案。娘を保育園に送ってからダッシュで釣りに行く。そしてダッシュで帰る、保育園から帰ってくる時間までに。  なんの制限もなければ朝6時ごろから夕方16時半まで、10時間以上も釣りができるのだけど、この妥協案で

          夫婦ゲンカのすえプラクティス(練習)に行ったらバス釣り大会で優勝して25万円の賞品をもらった話(前編)。

          帰納と演繹。に惑わされるバス釣り

          「釣り」全般の学習やレクチャーがほかのアウトドアの遊びに比べて難しいのには、いくつかの理由があると思う。 ひとつは原因と結果の因果関係があやふやなこと。たとえば「このルアーがとても効果的」といったメッセージがSNSやYou Tubeで発せられて、40cmを超えるバスが1日で5本釣れている、としよう。普通に考えれば爆釣だ。 でも、たまたまその日が良かったのかもしれないし、一週間ずっと撮影して6日分ボツにしているのかもしれないし、本当はほかのルアーなら20本釣れる場所かもしれ

          帰納と演繹。に惑わされるバス釣り

          亀はカマキリを食べない

          ボートに乗ってバス釣りをしていると、街なかではあまり見かけない動植物によく出会う。あれは4月だったか、相模湖でオーバーハングに引っ掛けたルアーを回収したら急にフワッと香りが立って、山椒の大木が湖畔に生えているのを見つけたことがある。冬の黒部川オカッパリでも「フワッと」に出会った。やぶこぎの最中、雑草に紛れて伸びたミントの葉を掴んでいたのだった。 カワセミは意外とどこにでもいる。美辞麗句の似合う渓流にいそうなコバルトブルーの背中で、ドブ川のコンクリ護岸にとまっていたりする。淀

          亀はカマキリを食べない