ラインホルト・ニーバー『人間の本性とその社会』

(^~^)「自分自身を大切にしない人間は、他人も大切にできない」というのは正しいのだけれど、そもそも自分で自分自身を大切に思えるためには、それに先立って、他人から愛される・承認される・存在を肯定される経験が必要。実は、自分だけでは、自分に愛される価値があるかどうかは本当は分からない。物心つく前に十分に愛された人間にとっては、それは自明で盲点になっているから分かりづらいのだけれどね。


エーリッヒ・フロムはその著『自己自身としての人間』やその他の著書で、愛する能力を〈自己充実の現象〉として規定したが、彼は誤って、自我に愛する能力を与える安定感の充実はそれに先立つ自我の利己=追求から導出されると考えた。安定感の充実は、例えばエリック・エリクソンが〈全面的信頼〉という概念で説明しているように、自我に対する他者の愛と献身とによって与えられるとみるのが正しい。こうしてわれわれは、逆説の完全な円環を見出すことになる。すなわち、徹底的な利己=追求は自己=破滅であるが、といって自己=犠牲は社会、とりわけ最初には家族社会によって与えられる充実なしには、自我には不可能なのである。
ラインホルト・ニーバー『人間の本性とその社会』津田淳・坪井一訳、北望社、1969年、107-108頁。

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