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リュブリャナ[2024.2.19]

14日から5日間滞在したイタリアを離れ、スロヴェニアに向かう。バスは10時半頃にヴェネツィアのマルコ・ポーロ空港から発車する。

30分前に空港に着いたものの、バスの乗り場がわからない。空港のインフォメーションで訪ねたが、round cornerにあると言われただけで、よく分からなかった。

空港を出て、他のバスの係員に聞いてみると、「あそこにiマークが見えるだろ、普段はあそこに停まってる。まあ、自分のバス会社じゃないからわからんけど」と教えてくれた。

そこは、ロータリーの一角だった。確かにround cornerといえばround cornerである。バスは間もなくやってきた。というより、バスではなくてワンボックスカーのような車だ。少人数で向かうようだ。

前の座席の真ん中に座り込んだ。左隣は若い男性、右隣は若い女性だ。運転手はスキンヘッドで、いかにもスラブ系という顔つき。

高速道路をびゅんびゅん飛ばしながら、13時頃にスロヴェニアの首都であるリュブリャナの駅前に到着した。

車を降りた。思ったほど寒くはない。日本の例年の2月と同じぐらいだろう。ただ、観光客で賑わうローマやフィレンツェ、ヴェネツィアと違って、落ち着いた雰囲気だ。そして空はどんよりと曇っている。

スーツケースを預けようと思い、駅の校舎内に入った。中はとても暖かい。暖房が効いている。

コインロッカーの前まで来たが、思い直して預けなるのを辞めた。駅からホテルが近いので、ホテルにチェックインして部屋に置いておこう。お金の節約になる。

駅を出て、ホテルまでの道を進んだ。スロヴェニアの人はきちんと信号を守るし、横断歩道では車も止まってくれる。イタリアとは大違いだ。好感を覚えた。

ホテルはすぐに見つかった。ロビーは最上階の7階にある。カウンターには青みがかったメガネで金髪の、優しそうな若い男性がいる。チェックインをお願いし、パスポートを見せた。「日本から来たの?遠いね!」と気さくに声をかけてくれる。おまけに日本のパスポートはかっこいいと言う。非常に適職だと思う。

ルームキーをもらい、2階の部屋に入った。広くてとても綺麗な部屋だ。とりあえず、旅のインフラは問題なさそうだ。

朝食を食べたのはもう6時間以上前だから、かなりお腹が空いている。何か美味しそうなものを探そう。

ホテルを出て真っすぐ右に進むと、円形の広場にたどり着いた。ここから何本か道が伸びている。なんとなく博物館がありそうな方向の道を選んだ。

さて、スロヴェニアはどんな国なのだろうか。人口は約220万人で、面積は四国と同じぐらい。首都のリュブリャナには約28万人が住んでいる。ユーゴ内戦のあと、1991年に独立した。GDPは535億で世界83位だ。

東欧と聞くと抑圧された国々という印象があるが、少なくともリュブリャナの中心部を見る限り、そういうことはなさそうだ。そういう時代はもう終わったのかもしれない(し、もとからそれほどでもなかったのかもしれない)。通りには洗練されたお店が並んでいる。

ガラス越しにお店の中を眺めていると、チャパティを切って中に肉を入れたようなものを食べている若い男性たちが見えた。なんだかとても美味しそうに見える。中に入ってみよう。

一人だと言うと、どこでもどうぞ、と案内された。メニューを見たが、何がなんだかさっぱりわからない。店員に聞いてみると、プレスカヴィツァという料理がおすすめだという。これをお願いすることにした。

店員はほとんど男性だ。みんな若い。颯爽と店内を歩き回っている。一人だけ女性がいるようだ。

隣の席には、これまた若い男性が一人で座っている。自分の注文を担当してくれた店員が、彼に話しかけた。えらく親密そうである。実はここの店員なのかもしれない。今日は休みで、昼食を食べに来ているとか。

すると、もう一人大柄な若い男性が店内に入ってきた。すると、店員はオーと驚嘆の声を上げて彼を迎えた。もしかすると、彼らは元々ここで働いていたのかもしれない。

待っているうちに、プレスカヴィツァが運ばれてきた。これはかなり美味しそう。

プレスカヴィツァはセルビアの郷土料理。豚肉、牛肉、羊肉とスパイスを混ぜ合わせる。バルカン半島で人気のようだ。

早速、肉をナイフで切って食べてみた。味が濃くておいしい。食べだしたら止まらない味。

と思っていたが、かなりボリュームがあるので1/4ぐらい残して晩御飯としてテイクアウトすることにした。

店を出て、博物館に向かって歩き始めた。広い道路はたくさんの車が走っている。種類も様々で、ベンツやBM、フォルクスワーゲン、フィアット、シトロエンといった外車はもちろん、トヨタやマツダも走っている。自国に自動車産業がない国では、様々な車を見ることができる。

博物館の前まで来た。こじんまりした建物である。ドアは閉まっている。変だと思いながらもドアに手を伸ばすと、カチャリと音を開けてドアが開いた。中に入るとカウンターにおじさんがいる。チケットを一枚くださいとお願いした。するとおじさんは困惑した様子で、今日は月曜日だから休館だよ、と言った。休館なのになぜカウンターにいるのだろうか、と思いながら博物館を出た。残念。

次はリュブリャナ城に行ってみよう。川に沿って進むと竜の橋というスポットが見えてくる。

この橋を渡って真っすぐ進むと、階段がある。階段を登ると、そこからは蛇行するように道が連なっており、緩やかに標高を上げていく。のんびりと登っていった。空気が澄んでいて気持ち良い。

城の入口についたので、中に入ってみた。リュブリャナ城の歴史に関する展示がある。

ここで少しスロヴェニアの歴史を簡単に確認しておこう。南スラヴのスロヴェニアは8世紀にフランクに屈し、カール大帝のときカトリック教圏に入った。

スロヴェニアに近いクライン、シュタイエルマルク、西ケルンテンといった地域は13〜14世紀にハプスブルク家の支配下に入る。スロヴェニアもハプスブルク家の支配を受けたということだろう。

16世紀には宗教改革でこれらの地域にプロテスタントの波が押し寄せるも、ハプスブルク家の対抗宗教改革により、多くのプロテスタントは去っていった。

19世紀、ナポレオンの進軍によってクラインや西ケルンテンといった地域はフランスの支配下に入ったが、続くウィーン会議で再びハプスブルク家領となった。スロヴェニア語の発展に寄与する活動はあったものの、1848年の革命を経てもスロヴェニアに独立の兆しは訪れなかった。

20世紀末にようやく、民族独立の夢を果たした。(以上、『スラヴ民族の歴史』、山川出版社より。)スロヴェニアという国はできたばかりだ。

展望台に登ると、リュブリャナを一望できる。赤い屋根の家が目立っている。向こうには山が連なっている。山の頂上は白く、雪が積もっているのがわかる。

しばらくぼんやりと街を眺め、城を出た。行きと同じ道で降りているつもりが、どこかで道を間違ったようだ。犬の散歩をする人や、ランニングする人とすれ違った。スロヴェニアの人は本当にのんびりと暮らしている。

Googleマップを見ながら、再び竜の橋を渡った。川沿いにはお店が並んでいる。イタリアと同じように、椅子が店の外にたくさん置かれている。驚いたことに、月曜日の17時だというのに、ほとんどの椅子が埋まっており、みんな談笑している。そのため、川沿いが非常にザワザワしている。あたたかい空間だと思った。

ホテルに着き、テイクアウトしたプレスカヴィツァを食べた。すでに冷めてしまっているが、味が濃いので十分おいしい。すっかりスロヴェニアという国に親近感を覚え、眠りについた。

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