最近増えてる「5-3-2」についての偏見を交えた考察

今日の部活のある一コマ とある先輩との会話

「レスター、シティとの勝ち点差どのぐらいなんですか?」                     

「ウルブズと引き分けたから1試合消化多くて1差かな。」

「最近5-3-2使ってるチームが活躍してますよね。ウルブズとかインテルとか、バーンリーもユナイテッドに勝ったとき守備時は5-3-2でしたし。」

「まあ強いんだろうけど走らなきゃああいうサッカーは成立しないからね…。」

これは最近僕が興味を持っていることです。17-18、18-19シーズンとプレミアリーグを連覇中のマンチェスターシティ相手にシーズンダブル(1シーズンのホーム&アウェー両方とも勝つこと)を達成したウルブズことウォルバーハンプトンやアントニオ・コンテが就任し現在セリエAで優勝争いを繰り広げているインテル、同じくセリエAで優勝争いを繰り広げているラツィオなど最近注目を浴びているチームは5-3-2を採用しているイメージがあります。なぜなのかなあと思ったので僕なりに理由を考えてみました。

まず5-3-2について基本的な情報を押さえていきましょう。5人のDFに中盤3枚、FW2枚という構成のフォーメーションは5人のDFがピッチを縦に5分割した時の5レーンを4バックの時に比べ隙間なく埋めることができます。また同じく守備的な5-4-1に比べて前線に人が残る(FW2枚)ため神頼み的なロングボールを敵陣に放り込むもののボールを回収されてまた相手の攻撃が始まるというような現象が起こりにくいのも特徴です(参考:フットボール戦術批評 龍岡 歩氏)。しかし3枚の中盤の脇のスペースが大きく空いてしまうためここを埋めることがキーポイントとなります。またピッチを縦に5分割する5レーンの話を絡めると真ん中の3レーンに8人もの人がいるので必然的に相手はこの「3」の脇のスペースを使うようになります。

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(引用・参考:footballista第62号)

このスペースを埋める方法は2つあります。1つ目はSBを1列上げて4-4-2のようにしてしまう方法です。

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もともと5バックなのでDFが1人飛び出してプレスにいってもまだDFラインには4人も人がいるので安定性を確保したまま守備を行うことができます。それなら初めから4-4-2でやればいいじゃないかと言う人もいると思います。しかし5-3-2から4-4-2へ可変する事で得られるメリットももちろん存在します。

それは飛び出していくSB(またはWB:ウイングバックの略)が前向きで相手に対して守備を行うことができることです。3列目と2列目のライン間でボールを受けようとする相手に対してSB(WB)は縦移動するだけで対応できるのでスピードを持って相手にアプローチできます。これにより相手のプレーエリア、時間を奪うことが期待できます。

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またこのスピードを持ったアプローチにより相手がボールを持ってノッキングすれば、その間に全体をボールサイドにスライドさせることで逆サイドから見て1-2-3-4のコンパクトなブロックを敷くことができます(引用・参考:フットボール戦術批評 庄司 悟氏)。

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このブロック下では相手の前進のためのパスコースやボールを受けるスペースを消すことが可能です(逆サイドに大きくスペースを開けてしまいますがその点はサイドチェンジができないくらいに相手のプレーエリアを奪うことで解決します)。

そして2つ目の「3」の脇のスペースの埋め方は中盤の3枚をスライドさせて埋める方法です。ただしこの方法だと片方のサイドのスペースしか埋めることができません。

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(少々極端な図ですがこのくらいの方がわかりやすいと思います)

このような方法を行うのは自分たちがボールを奪おうと意図しているサイドへのパスコースが限定されている時に使うのが一般的だと思います。

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このシーンはプレミアリーグ第26節ウルブズ対レスターの前半アディショナルタイムのシーンです(赤がウルブズで青がレスターです)。このシーンではFWのカバーシャドー(自分の後ろのパスコースを消しながら相手にアプローチすること)によりGKシュマイケルのパスコースを右に限定することに成功しています。そしてFWを一つ飛ばしたロブパスをウルブズの中盤の選手がアプローチをしてボールを奪おうとしていました。ボールサイドである右サイド(レスターから見て)にはウルブズの選手が集中しているのに対して左サイド(レスターから見て)には大きなスペースができているのがわかります。パスコースの限定+スピードを持ったアプローチにより相手のプレーエリア、時間を奪うことに成功しているのでサイドチェンジで局面を打開させることなくプレスを行えています。このシーンは残念ながらファールになってしまいボールは奪えませんでしたが5-3-2での典型的なプレスの形が見れる良いシーンだと思います。

ここまでの5-3-2での守備を見てみると中盤でボールを奪いやすくショートカウンターに繋ぎやすくていいなと思う方もいると思いますが当然ながら欠点もあります。

第一に全体の運動量が非常に高いです。FWの限定の動きや中盤3枚のスライド、SB(WB)の縦移動の繰り返しなどとにかく高い運動量が要求されます。5-3-2を採用するチームでは練習から5-3-2の高い運動量に耐えられるように選手をトレーニングしていく必要があると同時に監督も選手を信頼・鼓舞し続け「この人のために俺は最後まで走りきる!」と選手に思わせるモチベーターの役割を担う必要があります。

第二に攻撃が単調になりやすいです。今シーズンのインテルを見ている方ならわかると思いますがアンカーのブロゾビッチを消されてしまうと途端に攻撃が停滞してしまうことがあります。また攻撃の形も相手の攻撃を凌いでからのSB(WB)を中心とする縦方向へのスプリントで枚数を増やしてのカウンターが基本です。当然SB(WB)には上下移動を苦にしない運動量豊富な選手が必要です。またルカクのような裏への抜け出し、ポストプレーなどでカウンターの起点になれるような選手がいないと手詰まりになることが多いです(引用・参考:footballista 第75号 西部 謙司氏)。これらのことを考慮するとインテルの今冬での補強には納得させられます(主な補強としてアシュリー・ヤング、クリスティアン・エリクセン、ヴィクター・モーゼスを獲得)。ヤング、モーゼスは共に上下移動を繰り返せるWBの役割を担うことができ、さらにエリクセンは引いた位置でボールをもらってそこから精度の高いボールを供給できるのでニコラ・バレッラ、ステファノ・センシらと共にインテルの攻撃を活性化してくれると思います(逆にラツィオはルイス・アルベルトがライン間でボールを受け、ボールの循環役に、セルゲイ・ミリンコビッチ・サビッチもボールを受けてからのスルーパス、キープ、さらには2列目からの飛び出しによって引いた相手も崩せるようなチームになっていると思います)。

以上僕の偏見に溢れた5-3-2論でした。何か意見や感想があればお気軽に僕に伝えてください。まだまだ未熟なので間違っていることが多々あると思いますが大目に見てください。

【引用・参考文献】

フットボール戦術批評”クロップ魔法陣“の全貌 P12〜17、58

footballista第62号 P49

footballista第75号 P74、75



 



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