「新編 綴方教室」

なぜに、この文庫を手にしたのか忘れちまったけど…、豊田正子(1922〜2010)という女児の文集。

初版は、昭和12年に刊行された。刊行後、たちまちベストセラーになって、映画や演劇になった他、レコード化もされたという。

最初は、教師の指導を受けて、書き直ししながらだけど、昭和初期の下町の、貧しい職工一家の生活を、女児の目線で飾ることなく素直に書き綴っており、その情景が頭に浮かんで、なかなか面白い。

人情に弱いけど、すぐに直情的に“べらんめえ、馬鹿野郎”と怒鳴る父ちゃんや、正子をなんとか芸者にしたい母ちゃん、盗人のおじさん、近所の気の狂ったおばさんのこと、不気味な粘土のお面のこと、海水浴に行った話、金がなくて金持ちのおばさんに借りて迎えた大晦日と元旦の話…等々、その思ったままを書いてることが微笑ましい。

当時の生活の記録文学の名作といわれるのも頷ける。

文章は、なるべく飾らずに、下手でも、正直に全てを書いた方が人の心を打つものだね。といっても、正直に書くってことが一番難しいのだが。思ったことを正直に書きなさいということは、場数を踏まなきゃできないことだし、文にするってことは、読者のことを考慮したりして飾らずを得ないからね。飾りを読者に悟られないように書くってことかな。

調べると、豊田正子は、後に随筆家となって、日共に入党、文革中の中国にも行っている。日共と決別した後は小説も書いている。脳梗塞で倒れ、リハビリの様子を書いた作品もある。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。