「愛と死をみつめて ・ある純愛の記録」

以前、吉永小百合さんと浜田光夫の主演の映画(1964年、齋藤武市監督)は観たけど、この汚い古本が当時の、話題の大ベストセラーだったなんて知らなかった。

軟骨肉腫という病気で顔の半分を失って、21歳で早逝したミコこと大島みち子と、大学生のマコこと河野實との、ミコが亡くなる直前までの3年間に渡る手紙のやり取りである。

「夢にまで見る君なのに 病む我は 真の心書けずに悲しく」…初めの頃は、入院して病と闘うミコを励まし、大学生活を送るマコも励まされ、将来を語って希望を持つが、徐々に、不治の病であった肉腫に侵されていく現実に翻弄されて、絶望の言葉を綴って泣くことが多くなってくる。

顔の半分を失ったミコに整形手術を勧めて、お互いに、結局、夢でしかなかった旅行や結婚を語っても、自分を卑下したり、相手に不満をぶつけたりするしか余裕がなくなってくるのが痛いほどわかって、読むのがツラかった。

後半は、お互いを激しく必要とする愛情を隠すことなく綴ってはいるが、一向に回復に向かわない病状もあって、苛立ちを感じる手紙もある。マコは混乱して、深酒したり、大量の睡眠薬を飲んだりもしている。

「あなたが私を最期まで愛して下さることとても嬉しく思います。その代わりに私への愛が終わった時、また新しい愛を探してほしいと思います」と書かれたミコからの手紙を読んだ時のマコの辛さは察するに余り有る。

2人は、親や医者の配慮もあって、病院の個室で1週間、一緒に過ごしたこともあったけど、「私達は精神的には強く結ばれたけれども、肉体的には結ばれなかった」(ミコ)。田中絹代監督の映画みたいにはいかなかったようで、俺はつくづく残念に思うのだが。ミコは「嬉しいような切ないような不思議な気持ち」と書いてるし。こういう時、男は勇気を失うことが多いものだ。男は世間体で生きて、女は愛のみに生きるってことがわかる。

ミコは、マコの誕生日、8月8日まで生きられなかった。前日の7日、母親に見守られて息を引きとった。ネットで検索したら、マコは在命らしい。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。