【邦画】「拝啓天皇陛下様」

1963年の松竹映画「拝啓天皇陛下様」。

渥美清の主演で、監督は「八つ墓村」の野村芳太郎。

大した盛り上がりもなく、軍に対する意思表示もなく、ただ淡々と物語が進んでいく。寅さんを演じる前の渥美清だけど、やっぱり寅さんの面影を探してしまうね。

昭和6年、漢字が読めずにカタカナしか書けないバカな男(渥美清)が、岡山の歩兵連隊に配属されるところから物語が始まる。同じ部隊に配属された、後に戦友となる男(長門裕之)の、戦後の回想の形で進む友情物語。配属された軍での日常から、日中戦争他の戦地での出来事、戦後の戦友夫婦との暮らし…アレコレ。

渥美清演じる山田正助は、前科があるバカで、軍ではそれなりの厳しいシゴキを受けるが、帝国日本の現状で3度の飯が食えて風呂まで入れる軍隊はまるで天国と意に介さない。

どんな環境であっても、素直で純粋で直情的で、寅さんにクリソツな性格の山田正助。天皇陛下は偉いと聞かされたそのまんまを信じ込んでいて、除隊になる時は辞めさせないで下さいと天皇に直訴の手紙を書き、天覧演習で初めて天皇を見て親しみを覚えて、戦後も「天皇陛下万歳」を叫ぶ。ある意味、幸せな男なのだ。

戦後、ある戦争未亡人に惚れ込み片想いで振られてしまい落ち込むが、別の戦争未亡人との結婚が決まって、嬉しさのあまり飲み過ぎて、道路をフラフラと歩いてたら、トラックに撥ねられて死ぬ…。

「拝啓天皇陛下様 陛下よあなたの最後のひとりの赤子がこの夜戦死をいたしました」とスーパーが入って了。

コミカルなタッチの喜劇であっぱれとしてるけど、盛り上がりに欠ける分、人の世の不条理を感じてしまい、どこか哀しくもあり、虚しくもあり、心残りでもあるね。

かつて、純朴に天皇を崇拝した時代があって、戦争が人生の一部だった時代が確かにあったんだなぁとノスタルジックに語られるのかしら。

日本のアウトサイダーアートの山下清もチラッと出てる。

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。