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「国民の創生」

という訳で、ついに「國民の創生(The Birth of a Nation)」を観た。

“映画の父”と言われてるD・W・グリフィス監督で、1915年(日本だと大正4年、第一次大戦の年)公開の無声映画だ。

AmazonでDVDを買って見つけたがYouTube(字幕付き)でも観れるがなー。

なんといっても、白人至上主義カルト結社、クー・クラックス・クラン(KKK)を、悪い黒人から白人を守る義勇軍のように描いてることだ。アメリカという国の本質に迫る、ある意味危険なプロパガンダ映画かもしれない。グルフィス監督は南部の出なのだろうか?

バリバリ人種差別的で公開当時、批判を受けたが、映画は大ヒットしたらしい。

舞台は南北戦争時代。第一部と第二部に分かれ、第一部は、北部のストーンマン家と南部のキャメロン家の2つのブルジョア一家に起こる、息子、娘たちの恋愛と息子たちの南北戦争における戦死などの出来事に加えて、リンカーンの奴隷解放から暗殺まで。

第二部は、選挙権を与えられた黒人たちが南部の街でパレードを行い、白人と黒人の混血児リンチが権力を持ち、南部で乱暴狼藉を働く。リンチは“黒人の帝国”を夢見ている。
そこでキャメロン家の長男ベンはKKKを結成。
元奴隷のガスがキャメロン家の娘のフローラに求婚する。彼女は拒否して逃げ、追いつめられて崖から身を投げる。
激怒したベンらKKKはガスを捕らえて殺す。
権力を持ったリンチもストーンマン家の娘エルジーに求婚する…こうして白人に危機が迫る時、ベンの率いるKKKがリンチの本部を襲って、黒人たちリンチ一味を倒してエルジーを救う。
晴れてKKKは“南部の混乱”を収拾し、両家の恋人たちは結ばれる…という壮大な歴史的叙事詩みたいだが、全く白人の差別的視点のみで描かれたものだ。

黒人は全て、教養がなく粗野で乱暴者に描かれている。異様に黒くて眼がギラギラして如何にも悪い策略を練ってるような表情をするけど、当時、ハリウッドに黒人俳優なんてほとんどいないと思うので、やっぱり白人が顔をシャネルズばりに黒く塗って演じたそうだ。

ベンが、白人の子供が白い布を被って黒人の子供を怖がらせる遊びを見て、インスピレーションを得るところもKKK結成の伝説通りだ。

無声映画で時折、字幕が入るのみだけど、表情やチョイ大袈裟な身振り手振りで流れはよくわかり引き込まれるから当時の役者は上手いのだろう。

前半第一部はそうでもないけど、第二部はテンポもリズムも早くなってKKKの活躍が中心となってくる。

フォード劇場でのリンカーン暗殺のシーンは史実に則してとても興味深かった。南北戦争の銃撃戦の場面もリアルに近いと思う。

俺はよくわからないけど、当時としては斬新な映画技法が使われてるらしい。映画の歴史を大きく前に進める素晴らしい技術を使っても、内容がこれであれば残念だなぁとしか言いようがないよね。

日本でもお馴染みの軽快なメロディが流れる中でKKKが黒人を倒していくのは悪趣味過ぎるというか悲しいね。

南部における自由と名誉の獲得と秩序の回復に大きく貢献したのはKKKだったという恣意的な視点で描かれたこの映画の内容を、今だに引きずってるのが不寛容な超大国、アメリカなのだ。

きっと南北戦争は、近代のアメリカ人の精神に表となり裏となり、なんらかの形で大きく影を落としているのじゃないだろうか。他のグリフィス作品をまだ観てないからわからないけど。

アメリカ国民が創生されたということだから、ここから近代米国が始まったという意味を込めたかったのか。

どうして白い肌が良くて、黒い肌が悪いと考えるのだろう?

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。