「楢山節考」
今村昌平監督の代表的作品で最も評価を受けたと思う「楢山節考」を観た。忘れてるけど多分二回目。好きだった、「美智子妃の首がすってんころりん」(風流夢譚)の深沢七郎の小説二品が原作。
同名の小説は姥捨山を題材にした短編(処女作)だけど、映画は姥捨伝説だけじゃなく、夜這い、まぐわい、村八分、殺し、掟を重んじる風習、長男がトップの家族制度、ついでに獣姦と、ニッポンのムラ社会の裏カルチャー(イメージかもしれないが…)が全て込められてると思う。どこまでも暗くて寒くて、いつも泥まみれで汚い。
時折、盛り込まれるヘビやカエル、カマキリ等のちょっとショッキングな映像も、自然への畏敬とともに生き物の現実的な残虐さを表してるようで、登場人物も、村社会のルールはあるものの、欲のままに素直に生きるという至極、動物的に描かれている。
辰平(緒形拳!)の家族の次男、口臭が酷くて村人からも蔑まれてる童貞の利助(左とん平)が、女に相手にされず、普段は近所の雌犬を獣姦して欲求を満たしてたが、不憫に思う母・おりん(坂本スミ子)が近所の老婆(清川虹子)に頼んで一夜を共にするなんて、衝撃的過ぎて開いた口がふさがらない。「もう長いこと使っとらんで、ワシのは使えるかのを〜」「大丈夫じゃ。利助に女を教えてやってくれや」…。また、辰平も、後妻(あき竹城)に「頼むけん、一回限りでええんじゃ。利助とヤってくれ」と頼むなんて。
まあ、利助が性欲を暴走させて村に迷惑をかけるより、家族間でなんとかしようということだろうけど。
また、辰平の長男・けさ吉の、身重の恋人(手グセが悪い)の家族が、泥棒の血統と見なされて、村人の急襲によって、恋人共々、穴に埋められて根絶やしにされるところもショッキングで素晴らしい。
最後は、70歳になる母・おりんを、辰平が背中に背負って山に捨てに行く。骸骨だらけでカラスが群れてる場所に母を置いて来るのだ。
姥捨山は、民間伝承や伝説としては残ってるが、実際にはなかったという説が有力らしい。逆の、赤子殺しはあちこちであったらしいけど。でも、伝説として残ってるんであれば、食糧事情が限られてる人口問題の解決策として、やっぱりあったのじゃないかと俺は思う。おりんは自分で志願して行くことになったけど、ウチの爺さん婆さんも阿蘇の山にでも捨ててきたいものだね(爆)。
実際の撮影は長野・安曇野の廃村で行われたが、俺の映画のイメージは東北の寒村だ。映画は素晴らしい傑作だけど、村のコミュニティーだけの閉ざされた社会よりも、朝鮮、中国との交流が盛んで開放的な、時には一緒に温泉に浸かった九州の方が良いな。
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。