【古典邦画】「地獄門」

1953(昭和28)年の邦画「地獄門」。監督は衣笠貞之助 。YouTubeにて。

この映画も「人生で観ておくべき日本映画ベスト50」に入ってた。当時、カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞している。菊池寛の戯曲が原作。カラー作品。

鎌倉時代の絵巻物のようで、豪華で色彩豊かな貴族の衣装など、カラーが良く映えて見える。

気性の荒い武士・盛遠(長谷川一夫)が、戦さで上皇の身代わりとなった女性・袈裟(京マチ子)を守るが、彼女の美しさに心を奪われる。
彼女はすでに人妻だったが、盛遠は諦めきれずに、彼女を前に自制が効かなくなって、狂気に取り憑かれたようになってしまう。
そして、ついに…という話だ。

確かに、京マチ子のプックリした顔に、妖艶で悪魔的な感じもする美しさは、男を狂わせるには充分と思わせる。

それにしても、盛遠の、袈裟他、周りのことを考えない強引な振る舞い・行動は、現代でいえばストーカーだ。大昔からいたのか?盛遠の狂気に陥る様は理解できないことはないけどさ。

ついには、盛遠は、刀を手にして、「拙者の心を理解してくれ」と袈裟や彼女の叔母をも脅す始末。従わなければ夫も自分も殺されると思った袈裟は、夫の寝所で横になって、自ら夫の身代わりとなって盛遠に斬られるという悲しい結末。

盛遠はようやく、人の心は他人が勝手に動かせるものではない、と気付いて、夫に、自分の首を斬れ、と叫ぶが、それも拒否されて、丁髷を切って頭を丸めて僧となり、都を離れて苦悩の旅に出る。

盛遠と袈裟と彼女の夫(また何でも理解を示す良い夫だ)の3者の心情に焦点を当てた名作だとは思うけど、袈裟の理不尽な犠牲はやはり可哀想だ。貞節を守った女性と称賛されたかもしれないが。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。