「スピリッツ・オブ・ジ・エア」
鬼才アレックス・プロヤス監督(知らないけど 笑)のデビュー作で、幻のカルト・ムーヴィーと呼ばれたらしい「スピリッツ・オブ・ジ・エア (SPIRITS OF THE AIR, GREMLINS OF THE CLOUDS)」(88年、オーストラリア)を観た。
見渡す限り、ずう〜っと何もないオーストラリアの真っ直ぐな荒野で「バグダッド・カフェ」を思い出すようなロケーションのジャケに惹かれて借りたけど、やっぱり飽きずに観れた良い映画だったなぁ。シミジミ
何もない荒野に建つ小さな家。
手作り車椅子に乗る脚の不自由なフェリックスとその妹ベティが住んでる。
フェリックスはいつか手作りの飛行機によって空を飛び、ここから脱出するという夢を見ている。
一方、ベティは偏執的な性格で、ここを一生離れてはいけないという父の遺言を守って、父の墓を管理して、十字架に囲まれた部屋で暮らしてる。
ある日、そんな 2 人の生活の中に突然、スミスと名乗る若者が現れる。スミスは追われてると告白するが、フェリックスは彼に足漕ぎ飛行機の設計図を見せて製作に着手、スミスを悪魔と罵るベティが大反対する中で、2人は模型での実験と未完成の機での試運転を繰り返す。
ついに足漕ぎ飛行機は完成するが、フェリックスは当初、彼とベティとスミスの3人で搭乗するつもりだったが、ベティが残ると言ったため搭乗を断念、スミスは1人で大空に飛び立つ…。
登場人物も場所も限られており、とてもシンプルなストーリー展開だけど、抜けるような青空と茶色の荒野だけのこれまたシンプルな映像美と相まって、監督の独特の世界観が表れてるように感じた。
手作り飛行機で大空に飛び立つというヲトコノコらしい夢を見る一見理性的な兄と、よそ者を恐れ追い出そうとして癇癪持ちのような振る舞いと奇抜なメイクに中世の貴族のような仮装のファッションをする妹、それに、どこから来たのか、なぜ追われるのかもわからない謎の若者。
“鳥人間コンテスト“のように飛行機で飛び立ちたいということだけはハッキリとしてるが、3人とも決してマトモではないし、所々にユーモア溢れるシーンも入った“異界”の出来事のようでシュールな不条理感さえ感じる。
俺が考える映画の魅力の一つってコレだよ。監督らが創造した自由奔放な世界に目一杯触れることができるってことだ。小説もそうだけど。現実のようで現実ではない、また、全くの絵空事でもない。人間を主体とした思考、感情、妄想、情念、哲学の世界。そこにハッキリとした意味を見出さなくとも、どこかで共感できる世界。事実、この閉塞感溢れる世界からもたくさんの創造が飛び出している。そんなことを強く感じた映画だったね。
狂気の妹ベティが奇抜な格好で弦楽器を弾いてる映像を見てたら、米のオルタナ・パラノイア・バンド、キャロライナー・レインボーが頭に浮かんだよ。
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。