島崎藤村

スピードは落ちたけど、着実に読み進めている新潮社版「日本文學全集」。

第6巻は島崎藤村集(1)です。

「千曲川のスケッチ」「破壊」「春」の代表的長編が収められてるが、「破壊」は以前、文庫で読んで映画も観たから良いとして。

「千曲川のスケッチ」も大昔に読んだような気がする。風景描写が中心の小説で、多分、長野・小諸の千曲川周辺が大好きな藤村が、塾の講師として小諸に1年間、暮らす中で、その素晴らしさを伝えようと筆を取ったと思われる。クソ真面目な藤村らしい筆致で、面白味のない日常などを綴ってるが、つまらないことこのうえないね。

「春」は、これも藤村らしくて、苦悩する若者の、めっちゃ暗〜い内面を書いたもの。自伝的小説だって。登場人物それぞれ、当時の作家らをモデルにしたらしい。

教え子を好きになって逃げてた教師の青年が、友人らと文芸雑誌を創刊することになるが、そこで芸術的価値を高めようと散々苦悩する。尊敬してた先輩が挫折から自殺し、好きになった教え子も病気で死んでしまう。教師の青年は葛藤の末に作家として生きる決意をして、全てを捨てて東北の学校に赴任する…。

愛は成就することなく、理想は現実に破れて、人生のほんの短い間だけど、全ての苦悩が身に振りかかったように感じてしまう。今で言うところの“厨二病”だ。多感な青年時代の一コマだけど、藤村はどこまでもクソ真面目に思い悩むのだ。

しかし、藤村の小説では、必ず再生の道を示して終了するのが救いだね。苦悩の場所を離れて、違うところで再出発を試みるのだ。

藤村自身が、妻と自分の子供をことごとく栄養失調で亡くし(そんな時に「破壊」は背水の陣で自費出版)、親も家族同士で近親相姦だったり、さらに姉と父親が精神的に狂ったり、憂鬱にならざるを得ない血筋だったから、苦悩するのは仕方がないかも。

藤村ちゃん、めっちゃ暗いよー。次も藤村(2)、あーあ。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。