【古典邦画】「愛怨峡」

溝口健二監督の、1937(昭和12)年の古典モノクロ映画「愛怨峡(アイエンキョウ)」。
Amazonプライムにて。

古いフィルムなので、傷がいっぱいだし、ノイズが多いし、セリフも聞き取りにくかったりするけど、溝口監督が得意とする、ダメ男に苦労させられる女の悲劇は、この頃から健在である。初期の作品かな?

ロシアの文豪トルストイの小説「復活」をベースにしてるだって。読んだことはないけど。

信州の旅館の女中オフミは、その旅館の主人の跡取り息子の謙吉と深い仲になるが、謙吉の父親が結婚を許さずに、2人で駆け落ちして東京に行く。
しかし、謙吉は働くこともせずに毎日ブラブラしていて、オフミが必死に働いて生活を支える。
オフミが留守の時、謙吉の父親が迎えに来て、謙吉は実家に戻ってしまう。
謙吉の子供がお腹にいたオフミは独り残されるが、流しのアコーディオン弾きの芳太郎と出会い、世話になる。
子供が生まれると里子に預けて、オフミと芳太郎は、漫才コンビを組んで旅芸人の一座に加わる。
そして、一座が信州を訪れた際に、謙吉と再会することに…。

アップがないのでオフミの顔がよくわからないね。

今まで観た溝口作品は、主人公の女性が、頼った男に翻弄されて、転落の人生を歩むパターンが多かったが、コレは謙吉と再会しても、頼りきることはなく、別れを告げて、自立して、漫才でシッカリと自分の人生を歩むという希望が感じられるものだった。

漫才をするシーンが、男を尻に引くような強い女をコミカルに演じてて、ネタは古くて笑えないけど、けっこう面白い。

前半の男になびくおしとやかなオフミと、後半の男に啖呵を切るような芸人オフミと180度違う。

昭和12年といえば、日中戦争が始まった年で、不況で貧しくて暗い雰囲気が、東京の風景にも現れてるね。

しかし、ヤサ男の謙吉(まるで太宰治みたい)の、父親には弱くてオフミにはなかなか煮え切らない態度は、イライラするね。ヘーキで責任もなく逃げ出しといて、再会すると自分の子には異常にベタベタ、オフミにも異常に優しい。でも、父親の一喝で逃げ出す。こういうボンボンのダメ男になんで惚れちゃうかねー、オフミは。よくあることだけどさ。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。