「おいしい人間」

またデコちゃんのエッセイ集。

タイトル通り、食を介した様々な著名人との関わりは相変わらず面白い。中でも、彼女が大好きだった内田百閒センセからイブ・モンタン、志賀直哉、林芙美子、梅原龍三郎、前田青邨、円地文子、司馬遼太郎、有吉佐和子などなど、昭和の名だたる著名人とのエピソードは、羨ましい程の、デコちゃんの懐の深さを感じせる。

デコちゃんが、たまらずに書いた百閒センセへの「会いたい」というファンレターに対して、百閒センセの返事の手紙が、会ってもいいのか、会わない方がいいのか、わからない内容で、吹き出すほどに面白い。

日本画家の梅原龍三郎が入院した時、デコちゃんが「先生、いったいどこがどう悪いの?」と聞くと、彼は「悪いといえばどこもかしこも悪い。痛いと思えばどこもかしこもみな痛い。しかし、悪くないと思えばどこも悪くないし、痛くないと思えばどこも痛くないさ」と答えるなんて。

夫の松山善三の母の、デコちゃんを感動させた結婚前の一言。「せっかく結婚なさるというのに、うちが貧乏なのでなにもしてあげられません。あなたに働いてもらうなんて、ほんとうにすみません。ごめんなさいね」。

谷崎潤一郎の言葉、「われという人の心はただひとつ。われよりほかに知る人はなし」。

「私、大女は大嫌い。女はね、こじんまりと小さくて、男の胸の中にスッポリと入るようなのがいいのよ」と円地文子。

文革で迫害された中国の俳優・趙丹とのエピソードも面白い。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。