【古典邦画】「森と湖のまつり」

1958(昭和33)年の邦画「森と湖のまつり」。

監督は、大杉栄虐殺事件の首謀者である甘粕大尉の自決に立ち会った内田吐夢。

原作は、俺の好きな武田泰淳の小説だけど、吐夢監督のこの映画はイマイチだったなぁ。泰淳の、少数民族を根本に、近代との軋轢を描いた重厚な昭和文学の味が出てないよ。「飢餓海峡」は面白かったけどさ。

北海道に赴いた女流画家の目を通して、アイヌ民族の誇りと純潔を背負って闘う意固地な青年を描いたもの。

青年を演じたのは高倉健だけど、健さんの寡黙な男らしさが出てない。画家は香川京子で、アイヌでありながらアイヌに反発してシャモ(内地人)と仕事をしている男が三國連太郎。三國さんは、実に悪役がよく似合うけど。

一応、滅びゆくアイヌ民族を描いた社会派(?)ともいえる内容だが、武田泰淳の、列島に残る少数民族たちの栄枯盛衰というテーマを、映像で消化できずに中途半端で終わっており、とても残念。

人類は古代から混じり合って広がって発展してきたのは自明の理。そもそも今は純潔なんてほとんどないし、純潔は遺伝子的にも弱いから滅びゆく運命にあるのだ。
ある民族の文化や社会を大切にして後世に伝えることは大いに結構であるとは思うけど、思いが強いばかりに排外的になるのはいただけない。
アイヌ民族も苦労を強いられたようだが、生まれや血筋を理由にして優劣を付けたり、差別をするのは、脳科学でもわかってるように脳が退化したアタマのチョー悪い連中なのである。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。