【邦画】「喜びも悲しみも幾歳月」

1957(昭和32)年の、木下惠介監督の日本映画「喜びも悲しみも幾歳月」。

「おいら岬の灯台守は〜🎵」という唄はなんとなく知ってた。ということは、当時、大ヒットしたのだろうか?デコちゃん(高峰秀子)と木下監督のコンビだから観たのだが。

デコちゃんが、灯台守の青年(佐田啓二)のところへお嫁に行って、全国11ヵ所の僻地に立つ灯台を転々としながら、厳しい駐在生活を送るというもの。

子供が独立する(1人死亡)まで、戦前から戦後に至る25年間を描いた、3時間近い長丁場だけど、淡々とした日常が主で、そんなに激しい抑揚もなかったなぁ。戦時中も悲惨な場面とかはなし。

あ、文部省特選かぁ。通りで。

灯台の立つ全国各地でロケを行ったと思うが、美しい風景も相まって、日本型のロードムービーと見えなくもないね。現在では、自動化で有人灯台はなく、灯台守という仕事も消滅した。

佐田啓二は置いといても、やっぱりデコちゃんは輝いているね。新婚の時の初々しい甘えた演技、常に夫を支える甲斐甲斐しさ、子供を守る力強さ、老境の子供を見守る優しい演技…年相応の演技が上手いと思う。

戦争時も、「子供が犠牲になって、プライドを守るための戦争なんて止めればいい」と言って、夫に叱られている。男よりも女の方が真理をつくものだ。

木下監督は、ある意味で、お互いに慈しみ合う理想の夫婦像を描いていると思う。灯台のある海の美しい風景と、夫婦共々添い遂げあう日本人夫婦の姿は、当時の昭和の価値観の中では理想とされたのではないか。

息子と娘が生まれ、息子は大学を落ちて不良グループに関わり、抗争で刺されて死んでしまうが、その不幸も、2人の絆の目には予定調和的に見える。

最後は、娘が結婚して、旦那の海外転勤でエジプト・カイロに向かう。2人の乗っている船のために夫婦は灯をともす。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。