「まぼろしの市街戦」

1966年のフランス映画「まぼろしの市街戦(Le Roi de Cœur/King of Hearts)」(フィリップ・ド・ブロカ監督)。

公開当時、本国では話題にもならなかったというが、米で驚異の5年間に渡るロングランヒットを記録したという。イヤ〜、ユーモア溢れる仏風のウィットに富んだ凄まじく狂ったカルト作品だった。

第一次世界大戦末期のお話。
英軍に、ある町を追われた独軍が町のどこかに大型時限爆弾を仕掛けていった。
仏語が話せるという通信兵のチャールズ・プランピック二等兵が時限爆弾の解除の命を受けて町に入るが、独軍兵に見つかってしまい、近くにあった精神病院に逃げ込む。
そこでは、老若男女の患者たちがトランプ遊びをしており、彼らに名前を聞かれたプランピック二等兵はトランプ遊びを見て、適当に“ハートのキング”と答えたところ、患者たちの王に祭り上げられる。
町の人々が逃亡し、独軍も撤退して無人となってしまった町。
残ったのは患者たちと、サーカス団の動物たちだけ。
患者たちはプランピック二等兵を担ぎ上げて、町に繰り出し、司祭になる者、軍人になる者、公爵になる者、美容師になる者、娼館のマダムになる者と思い思いの役を演じる。
精神病院の”ガイキチたち”による狂乱の一夜が展開、プランピック二等兵も取り込まれていく…。

プランピック二等兵は任務を忘れたわけじゃなくて、結局、時限爆弾は時計台の鐘に仕掛けられてたことを発見して解除に成功する。そして、“ガイキチたち”に英雄と褒め称えられる。

彼は“ガイキチ”の美少女コクリコに見初められて結婚式を挙げることになって、“ガイキチたち”に親しみを覚えて溶け込んでいく。

しばらく“ガイキチたち”の狂乱が続くが、プランピック二等兵以外、マトモな人間が登場しないので、コメディのような展開に、反戦や戦争風刺の枠を超えて異様なカーニバルでも眺めてるようだったね。

精神病院から出て仮装した“ガイキチたち”の熱狂的な踊り。普段、押さえつけられてきた“ガイキチたち”が無人の町で自由を謳歌しているのだ。なぜ精神の病気なのか?どんな種類の病気なのか?そんなことはどーでも良くなるように。

そうだ。本来、戦争とは何が正常で何が異常なのかわからなくなってしまうのだ。ラストの方で、町に戻ってきた独軍と英軍が広場で向かい合って互いに銃を撃ち合い、どちらも一人残らず全滅してしまうというシニカルなユーモアには脱帽。

しかし、自由を謳歌する“ガイキチたち”も「怖いものがたくさんあるから」と町の外へは決して出ようとしない。

独・英両軍の白兵戦を見てた“ガイキチたち”は突然、「芝居は終わった、病院へ戻ろう」と言い始め、プランピック二等兵にも「あんたも軍隊へお戻りなさい」と告げ、精神病院の扉を閉める。

プランピック二等兵は勲章を貰い、次の任務に向かうことになるが、再び戻ってくる。軍服を脱ぎ捨て素っ裸になって精神病院の門を叩く。そして、“ガイキチたち“の仲間入りをするのだ。

60年代の意識の高い若者たちが熱狂したというこの映画、俺には、ココロの病気、メンヘラとは全く無縁とはいえないだけに、確かに胸にグサリと刺さる映画であった。

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。