【古典邦画】「石中先生行状記」
成瀬巳喜男監督の、1950(昭和25)年のオムニバス作品「石中先生行状記」。YouTubeにて。
石坂洋次郎の原作が多いなぁ。石中先生(宮田重藏)が解決の糸口を示して、後に婚礼の媒酌の労をとることになるが、違う設定の3話から成るユーモアを軸にした恋愛ものだ。
いずれも時代を感じさせるもので、第1話は、ある地方のリンゴ園に、戦時中にガソリンを入れたドラム缶約500本を埋めたと聞いて、案内の青年と石中先生らがやって来て掘るが、実は、案内の青年がリンゴ園の娘に会いたいがためにウソを言っていたと言う話。
第2話は、ある田舎町で、ヌードに近い踊り子のダンスショーが開かれることになって、町民たちはケシカランと眉をひそめながらも見物に行く。書店の娘は父親も見物に行ったと聞いて驚き、婚約者と共に、父親を問いただそうとショーが開かれている建物小屋に行く。父親は、婚約者の父親と一緒に見物に行っており、娘を見た父親は誘われたと言い訳をして、また婚約者の父親も彼に誘われたと言い訳をする。そして娘らを巻き込んで騒動になる、という話。
第3話は、ある娘が町の病院に姉を見舞いに行く。帰りに手相を見てもらったら、今日明日中に恋人が見つかると言われる。娘は村へ帰る馬車に乗るが、馬車は茶店で休むことに。娘はふとしたことから間違えて別の馬車に乗ってしまう。馬車は無口な若い男が引くもので、娘は、途中で方角が違うことに気付いたが、帰れなくなってしまう。娘は、若い男の家の人に暖かく迎えられて泊まることに。そして、娘は若い男と一緒に夏祭りに出かける。翌日、娘は、男の引く馬車に揺られて家に帰るが、2人は恋人となる、という話。
どれもホノボノと楽しめる話だが、最後の無口な若い男は、若き三船敏郎だった。
3話とも登場する女性が、物怖じせずにハキハキと意見を言う。決して男の陰に隠れているようなタイプではなく、男の前に出て、時に男をリードしている。成瀬監督らしい新時代の女性像を描いたのだろう。
でも、最後の話で、知らない家に泊まることになった娘が、警官から、一晩、男とは何もなかったという処女証明書を受け取るのは笑ったね。そんなことがあったんだ。
おおらかな人間関係の中で、若者たちの恋愛に石中先生がノンビリと助言する…、まさに昭和の古き良き時代というものを体現してるような映画だった。
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。