【古典映画】「蜘蛛巣城」

黒澤明監督の、1957年の時代劇映画「蜘蛛巣城」。

シェイクスピアの戯曲「マクベス」が元ネタ。

豪傑だが小心者の将軍マクベスが、謀反を働き、君主を暗殺して王となるが、内外の重圧に耐えきれずに、精神錯乱を起こして暴政を行い、貴族や王子らの復讐に倒れるという悲劇を、戦国時代に当てはめたもので、日本らしく能楽の舞台のような動きも取り入れて、黒澤監督独自の世界を創り上げていると思う。

豪傑の武将はもちろん三船敏郎。怒り眉に、眼光鋭く眼を見開いて、常に怒鳴ってる台詞は彼お得意のもの。

主君が呼ぶため、城へ馬を走らせていた時、深淵な森の中で迷い、祝詞を唱える不気味な真っ白い老婆と出会い、やがて城主になるとのお告げを聞くなんて、まるでホラーですがな。

宴の席で、隣に、死装束に身を包んだ、死んだ友人の武将の姿を見て、錯乱して刀を抜いて襲いかかるのも同じ。

老婆のお告げ通りに事が運ぶと、妻(山田五十鈴)にそそのかされて、主君を殺して城主の地位に就くけど、妻は死産して、「手を洗っても血が取れぬ」とついに発狂(コレも不気味)。

城では野鳥の群れが飛び込んで暴れ、不穏な夜を過ごして、敵の軍勢が攻め込むという知らせもあり、配下の兵士たちは混乱して、ついに城主めがけて無数の矢を放つ。

最後まで壮絶で不気味な恐怖が占めている。そういや、ずっと霧が立ち込めてるか、強風が吹いてるね。

ラストの見せ場だと思うが、豪傑の武将を無数の矢が襲うが、CGでもなんでもなく、マジで鋭い矢を飛ばしてるね。それだけにスゴい迫力。三船さんのケガも覚悟のブチ切れ演技は素晴らしい。黒澤監督に、リアルを追求するためにやれと命令されたのかしらん。監督らしいムチャぶりだなぁ。

黒澤監督の時代劇は、とにかく大げさに動いて叫んで迫力を出す。究極のダイナミズムに尽きると思うが、シェイクスピアの、人間の欲深い悲劇がピッタリかもしれない。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。