「サイコマジック」

難解なカルト・ムーヴィーの奇才監督、アレハンドロ・ホドロフスキー、御歳92!のインタビューを中心とした分厚い本。

およそ一般的でない、こういう本がなぜ田舎の図書館にあるのだろう?

ホドロフスキーは、映画のみならず、旺盛に様々な表現活動に取り組み続けている芸術家である。タロット研究家やサイコセラピストでもあって、特に有名なのは、彼がライフワークとしてる、精神障害の治療を従来の医学・科学ではなく、アートによって魂を解放するという独自のセラピー「サイコマジック」である。この本ではそのことを中心に語られる。

「個人の歴史は言葉と行為から作られている」というホドロフスキーは、常に“言葉を超越した癒し方”を模索している。

と言っても、ほとんど彼の概念の世界のことであって、魔術やスピリチュアル、夢の世界などに意味を持たせて、これでもかとシツコイくらいに語り尽くしており、読み応えがあるけど、この人、あんな映画を撮るんだから、やっぱり良い意味で狂ってるよ。

俺なんか、夢は単なる脳の遊び、もしくは記憶の整理作業だと思ってるが、ホドロフスキーは夢の中に、フロイトのように意味を持たせる。高い意識レベルやイニシエーション、イマジネーション、自我、幻視・幻覚、潜在能力、信仰、無意識、心霊治療、そして、アートとサイコマジック…一見、カルトのような材料でも、人間の表現のひとつとして彼の哲学の材料となっている。「人は自分自身の狂気を通過することによってのみ賢者になる」と言ってるから、彼も賢者となってるのだろうか。

サイコマジックの実践例として、好きな男性が身体に触れるのを拒否してしまう女性に対して、「その男性とも、医者とも違う特別なやり方で貴女に触れたいと思う。私の魂で触れる」と言って、彼女の胸を触って治療した、みたいなことが長々と書いてあるが、オイオイ、それは違うだろうって!(笑)

…つまり、ホドロフスキーは、人々に想像することを教えているのだ。想像力を発展させて現実をただ一つの視点からではなく、複数の角度からカバーさせることだ。自分自身から抜け出して小さな個人的世界の限界を突破して宇宙に自らを開くことができるようになること、サイコマジックはその応用なのだ。

版元はどこだと見ると、国書刊行会…なるほど。

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。