【古典邦画】「桃中軒雲右衛門」

成瀬巳喜男監督の、1936(昭和11)年の作品「桃中軒雲右衛門(トウチュウケンクモエモン)」。YouTubeにて。70分強の小品。

実在の、明治から大正時代にかけて活躍した浪曲師の半生を描いたもの。

芸モノは成瀬監督の得意とするところだ。

「どんなに傷だらけになっても芸のために闘っていく。芸のためにはあらゆるものを犠牲にしたって構わないよ。芸のためには女房も食っちまう。人間であるよりも芸人でありたい」…♩芸のためなら女房も泣かすぅ♩♫

昔ながらの破滅的なタイプの芸人である桃中軒。酒も女も遊びも金遣いも、不道徳の見境なしで、当然、三味線を弾く妻も息子もその犠牲となる。

若くてカワイイ芸妓を身請けしたことで、妻は病気に伏して半ば狂気に陥り、反発する息子とは訣別する仲に。

しかし、ついに妻が病で死ぬと、彼女の遺体の前で、力を込めて精一杯、浪曲をうなるのであった。

何でも芸のためと正当化してると非難するか、芸人とは本来、そういうものと理解を示すか、どっちかなぁ。やっぱり見せる芸がどんなものかによるんぢゃないか。

結局、妻も芸人としての最期を望んだし。ダメな男に苦しめられる女という成瀬監督お得意の構図はここでも生きている。

今ぢゃ芸人なんて、フツーよりもフツーの大人しい人だし、破天荒も型破りとも無縁の表向きは常識人だしね。大きく価値観って変わるものだねぇ。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。