「夜告げ鳥」

デビュー作である「仮面の告白」が刊行される一年前(昭和23年)、三島由紀夫本人が企画した初期作品集。

出版社が倒産してしまい、長らくお蔵入りとなってたものだ。“太陽と肉体と手を結ぶ”はるか以前、全て20代前半の頃の評論、詩、小説である。

ちょっとでも、何か脅かすことでもあれば、すぐに“自家中毒”を起こしそうな、肥大した繊細過ぎる精神が、そのまま現れたような作品の数々で、本人が得意とする文で、全てを強固に武装して世間に臨んでいる姿勢が想像できる。

この頃から、“美しく死ぬこと”への魅力が隠しきれてないと思われる文章が節々に現れていると思う。

プライベートでは、作家としてデビューする以前の焦燥感溢れる煩悶期であり、大失恋を経験して、自分の性癖にも気付いた頃でもあり…、とにかく自選を編むことでなんとか精神のバランスを保ってたのではないだろうか。だから、それほど面白いものではなかった。

「この本は私が今までそこに住んでゐた死の領域へ遺さうとする遺書だ。この本を書くことは私にとつて裏返しの自殺だ。この本を書くことによつて私が試みたのは、生の回復術である」


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。