【邦画】「小早川家の秋」

小津安二郎監督の1961年の映画「小早川家の秋」。

小早川は“こはやがわ”と読む。京都・伏見の造り酒屋の家族を巡るホームドラマで、原節子など、小津安映画にはお馴染みの面々が顔を揃えてる。

造り酒屋の旦那、小早川万兵衛(中村鴈治郎)の、若い頃と変わらず愛人の家に出向く色欲と、彼の突然の死がメインに描かれている。

加えて、次女(司葉子)の縁談、長男の未亡人(原節子)の再婚話、万兵衛の愛人と娘の登場のエピソードがある。この設定は前にもあったね。

また中村鴈治郎がそういう役柄がピッタリなんやねー。

父・万兵衛に対し、長女(新珠三千代)が、愛人の存在を問い詰めるやり取りも面白い。

万兵衛の葬式のシーンが長々とあるが、参列者の会話から火葬場の煙突から上る煙、苔むした古い墓石などがアップで撮られ強調されて、BGMは荘厳な重い葬送曲で(俺は合わないと思った)、小津安映画でも、より死を意識したものになってる。

ラストの、笠智衆(ココしか出て来ない)の、煙が上る火葬場の煙突を見ながらの会話が、小津安の死生観を表しているかもしれない。
「死んでしまったら、なんもかんもしまいやわ」
「ほんにはかないもんやなぁ」

「死んでも死んでも後から後からせんぐりせんぐり産まれてくるわ」
「そやなぁ、よくできとるわ」

うつろいゆく四季と同時に決して止まることのない人間の営みとその生と死、それを基本とする“無常”の世界に崇高な美を見出せる…これぞ真に日本を、日本の文化を愛するということなんだよ。まことにくだらない嘘っぱちのイデオロギーに則った国賊政権を支持することでは決してない。

笠智衆の会話で、俺もつい、ホロリときちまったよ…。

森繁久彌も出てる。小津安ともめたんじゃないかなぁ。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。