【古典映画】「酔いどれ天使」

黒澤明監督の、1943年(昭和23年)の映画「酔いどれ天使」。

戦後の闇市マーケットを舞台に、口は悪いが根は優しい、貧乏な飲んべえ中年医師(志村喬)と、結核を患った、スマートな若いチンピラヤクザ(三船敏郎)との交流を描く。若き三船敏郎のデビュー作。

ある日の夜、闇市を仕切るヤクザに買われてる若者が、手に受けた銃弾の傷の手当てで、いきなり病院に現れる。
飲んべえの医師は、厳しくあたりながらも彼を診察すると結核菌に侵されていることがわかる。
医師は、彼に自分の若い頃を重ねて、必死で治そうとするが、若くて血気盛んな若者は、素直に治療を受けるでもなく、去勢を張るばかり。
そして、徐々に弱っていく。
さらに、兄貴分が出獄し、女や縄張りを巡って、若者は邪険にされていく。
弱り果てて追い詰められた若者は、ついに…。

戦後の混乱期の、活況を呈する市場や風俗、ダンスホール、戦災孤児や汚ないドブなどの荒廃した風景等、当時の町の情景が余すことなく描かれており、そこに、自暴自棄なチンピラと兄貴分との確執、裏切る女、そして、ブチ切れて兄貴分に刀を持って襲いかかって返り討ち…という日本型フィルムノアールのスタイルが揃ってる。

最後の、若者と兄貴分が転げ回ってペンキまみれになりながら争うシーンは、良くも悪しくも、クロサワ流のダイナミズムだな。

飲んべえの医師は、若者の死を毒舌でもって悼む。闇市は変わらず活気付いている。そこに、結核が治癒したと微笑む女子学生が声をかける。医師は若者の死なぞなかったように、女子学生の誘いに乗って、手を組んで闇市の中を歩いていく。

脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。