【映画】「何がジェーンに起ったか?」

1962年公開の古典モノクロだけど、不気味で怖い、ゾッとする映画を観た。

「何がジェーンに起ったか?(What Ever Happened to Baby Jane?)」(米・ロバート・アルドリッチ監督)だ。もう立派なホラーでトラウマ映画だな。

血の繋がった姉妹ながらも、お互いに幼少時の憎しみ、怨み、妬みが高齢になっても続いて、ついに破滅したサイコ・ビディ(有名人だった女性が高齢になって精神的に不安定となり事件を起こす)の物語だ。

6歳のジェーン・ハドソンは、舞台で“ベイビー・ジェーン”として大人気だったが、姉のブランチは、その活躍を羨望と嫉妬の目で見ていた。
妹は、家族でたくさん稼ぐために特別扱いされ、姉は妹の影に隠れて目立たない。
しかし、成長して大人になると妹と姉の立場は逆転、姉ブランチが女優として成功して、妹ジェーンは人気もなく過去の人となってアル中となる。
そんな時、家の前で自動車事故が起きる。アル中の妹ジェーンが嫉妬に狂い、姉のブランチを轢き殺そうとしたとマスコミは報じた。
ブランチは事故で背骨を折り、車椅子の生活になった。
ジェーンはその責任を取って、姉ブランチの面倒を見ることになった。
しかし、ジェーンは女優として成功して稼いだ姉の貯金を勝手に使い、足の不自由なブランチを2階に閉じ込めて、だんだんと食事も与えずに虐待していく…。

ジェーンもブランチも、演じたのは当時の有名なハリウッド女優でライバル同士で本当に憎み合ってたという。そんな2人を起用した監督の手腕に脱帽だけど、ジェーンを演じたベティ・デイヴィス(当時50代だけど、もっとおばあさんに見える)の、デカ過ぎる眼の白塗りメイクの顔が妖婆、あるいは鬼婆のようで凄まじい。

さらに、子役の時に着てたようなフリルの付いたロリ風のドレスを着てるから気持ち悪いったらない。

ブランチ役のジョーン・クロフォードも子供を虐待してた毒親で有名、前に子供が書いた伝記を原作にした映画を観たけど凄かった。

そんなジェーンが姉ブランチが飼ってた小鳥や、ネズミを姉のディナーとして出したり、姉の客を追い返したり、姉の部屋の電話やベルを使えなくしたり、ついには虐待に気付いたブランチの使用人まで殴り殺し、姉にも殴る、蹴るの暴力まで振るうことに。

後半、ジェーンが映画界に復帰するために雇った、ちょっとアタマの弱そうなピアノ弾きの男と歌って踊るシーンなんかおぞましい限りだ。ジェーンの病んだ心は、大人気だった子役時代で止まってるわけだ。

ラスト、殺人や虐待が警察にバレると思い込んだジェーンは、瀕死の状態のブランチを連れて、思い出の海岸に行く。そこで、姉ブランチはびっくり仰天の告白をする。

実は、自動車事故はジェーンがブランチを殺すためにやったのじゃなく、姉ブランチが子役時代の嫉妬を根に持っててジェーンを殺そうと仕組んだものだったと。ジェーンは酔っ払ってて記憶がなくなったのだ。

ブランチがジェーンを殺そうと自動車を動かしたが、ジェーンは間一髪のところで避けて、ブランチは自損事故、背骨が折れてしまったのだった。イヤー、恐ろしい。  

そこで、ジェーンがいう。「私たちはムダに長い間、憎しみ合ってきたのね…」。

そして、ついにジェーンは精神が崩壊。2人を探してた警官と、2人のおかしな様子に集まった海水浴客を、人気の子役時代の観客と思い込み、歌って踊り出すのだった。

思い返せば子役時代のシーン、わがままなジェーンがパパにアイスクリームをねだる。「姉さんにもあげてね、パパ」。ママが姉ブランチにささやく。「ジェーンの優しさを忘れないでね」。ブランチは悔しそうにいう。「死んでも忘れるものですか」…。この冒頭のシーンが伏線になってるのだ。

幼少期から続く人間の深い業。欲と嫉妬、やっぱり、狂人じゃなくとも、誰でも持ってるこれこそが何よりも怖いし、それをこういう形で上手く表現したアルドリッチ監督はホントに素晴らしい。

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。