【映画】「デルス・ウザーラ」

黒澤明監督がソ連で作った映画「デルス・ウザーラ(Dersu Uzala)」(1975年)を鑑賞。

さすが、世界のクロサワだけど、クロサワ作品にしてはなんか物足りない感じもした。でも、面白かった。あんましクロサワ映画は観てないけど。実際の、ロシア人探検家の探検記の映画化。当時のソ連で作ったことで批判もあったのかな?

探検家のアルセーニエフは、1920年代、政府から、ロシアで人跡未踏だった地帯の地図製作の命を受けて、探検隊を率いて探査に出る。そこで、先住民のデルス・ウザーラに出会い、ガイドとして同行、命を助けられたり、彼とアルセーニエフとの交流と友情を描く。

黒澤監督は助監督時代から、こういう冒険物語を映画にしたかったらしい。

ロシアの、厳しく冬真っ只中の広大な自然の中で命辛辛悪戦苦闘する人間の姿を描いてるが、黒澤監督のことだから、マジでリアルな過酷を極める自然現象を相手に撮影を進めたのだろうなぁと想像できるね。自然がイメージ通りにいかなかったら、寒い中、何日も待って撮り直したりして。

そんな中でも、デルスと探検隊隊長・アルセーニエフの人間的交流は心暖まるものがあるのは確かだ。

デルスの、文明人にはない、野生的な感覚や生きるための処方、野生動物との付き合い方、自然へのリスペクトと無欲などは、羨まし過ぎる程素晴らしいね。俺も、こんな、どこでも生き抜く人間力が欲しい。

しかし、探検隊が、襲ってきた野生の虎を銃で撃ったことで、デルスは「本当に私は悪いことをした。神が虎を遣わせて、私を殺しに来る」と怯えて、実際に視力が弱くなって、大らかだった性格も変わり、怒りっぽくなってしまう。

アルセーニエフに薦められて、森を出たデルスは町にある彼の家に身を寄せる。けど、アルセーニエフの子供とは親しくなっても、文明の生活に馴染むことができずに、また森に戻ることに。森に戻ったデルスは山賊に襲われて命を落とす…。

後半は予想できるストーリーだったけど、大自然の脅威や野生動物の襲来を前にしても、逞しく生き抜いてきたデルスが、文明の人間の手によって非業の死を遂げる。

もう地球上で天敵が少なくなった人間の一番の天敵は、人間だったということだろうか。黒澤明流の文明批評だろうか。

それにしても、黒澤監督がカメラで撮ったロシアの自然のスゴいことよ!

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。