絶対、がミソだったと思う。

私は本当に就活が苦手だった。質問に対して上滑りした答えしかできなくて、自分に自信がないからオドオドしてしまって、もう本当に、散々だった。

その日の面接も散々で、本当は自己分析と反省をした方がいいのはわかっていたけど、もうダメな自分を見つめたくなかった。
履きなれないパンプスは痛いし、全身ぐったりしていて、帰りの電車ではぼんやりと外を見ていた。座っているだけで精一杯だったと思う。なのに、目の前をおばあちゃんが横切ったとき、私は反射的に席を譲った。横切って歩いていくおばあちゃんに後ろから呼び止めてまで。疲れているのに何やってんだろという想いと、こういう行動でコツコツと自分を好きになれたらという願いで、瞬間的に後者が勝ったんだと思う。あたふたと立ち上がって、おばあちゃんの丁寧なお礼と座席を交換した。

「あなたは絶対に幸せになる。私、わかるわ」

おばあちゃんは座ってから私を見上げて、きっぱり、はっきり、言い切った。「席を譲るような人なんだから幸せになれるわよ」という意味なのか、「スピリチャルなものを感じた」のか。おばあちゃんの真意が私にはイマイチわからなかった。もしかしたら、冴えない就活生を哀れに思って適当に言っただけかもしれない。

だけど単純な私は、その一言でちょっと肩の力が抜けた。そっか、目指す先は内定でも肩書きでもなく、幸せか。そう思ったらフっとラクになって、私はその日初めて自然に口角が上がった。


#君のことばに救われた

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