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『備え』という言葉の意味が変わった日

ガタガタガタガタ。
「地面揺れてません?」
「とりあえず外にでましょう」

当時はまだ東京で会社員をしていた。
社内研修の部署にいて、
社員への研修を行っていた時だったと思う。

外へ出たら、めまいのような感覚。
自分が揺れているのか、
外が揺れているのかわからない。
経験したことがない地震。
立っていられずにその場にしゃがみこんだ。

3.11東日本大震災。
東京にある社屋は大きな損害はなかった。
でも、電車はとまり、その日は数人で
会社に泊まることになった。

幸い電気も水も無事だったので、
不自由なくすごせたけれど、
みんな苦い表情でTVで震源地の様子を見ていた。

(これは最悪なことがおきている)
全貌は見えないけれど、
だれもが不安を隠しきれなかった。

「備蓄品を配布するのでとりにきてください」
総務部から連絡がはいって、
重い足取りで取りに向かった。
正直、食欲はなかった。
でも食べなければ、明日何が起こるかなんてわからない。

アルファ米を水で戻して口に運ぶ。
(おいしい……)
きのこの味が口内に染み渡る。
体のこわばりから少し解放される。

(無意識にめちゃくちゃ緊張してたんだ……)
食事をしてはじめて自分の状態がわかった。
たぶん、他の人も同じだったのだろう。
食事後、少しずつ会話が増える。
依然として余震が続いていたが、
社内の空気は少し和らいでいた。

その日から『備え』という言葉が
自分にとってただの言葉ではなく、
行動に変わった。

今日は防災の日。
日々の備えが、どれだけ大切か、
あのとき強く実感した。
小さな積み重ねが、
非常時には大きな安心につながる。

何も起こらない日々こそ、しっかりと備えておこう。


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