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銀座モダンアートのおもいで

先月末(2018年10月)をもって、長年にわたって銀座・奥野ビル608号室からアートを発信してきたギャラリー「銀座モダンアート」が閉廊しました。

銀座モダンアートでは、丁子紅子さんや細川成美さんをはじめとした美人画の作家のみならず、ろまんさんやマキエマキさんをはじめとしたセルフ・ポートレート写真の作家もフィーチャーしており、また毎月、お耽美写真家Kayさんによる写真ワークショップを開催するなど、写真についても積極的なギャラリーでした。私も2015年8月の「銀座写真館 vol.8」に始まり、16回もの展示に写真作品で参加させて頂きました。

こちらの展示プロデューサーもよくこぼしていたのですが、「写真は単価が安いので儲けにならない」の言葉どおり、普通の画廊ではまず取り扱ってもらえません。その意味で、写真の作品を出展できる数少ないギャラリーでもありました(なお巷でよくある写真家主催の写真展は、レンタルギャラリーを借り上げての自主運営のものであり、どちらかといえば「発表会」に近いものと言えます)。

ここで写真を取り扱っていた大きな理由は、展示プロデューサーの豊島誠志さんの意向によるものだと思います。豊島さんは元雑誌編集者で、グラビア雑誌を手掛けた経験があり、本人も写真に造詣が深いことから、写真をアートとしてプロデュースしようという方針があったのだと思います。

作家として銀座モダンアートの展示に参加して良かったと思うことは、絵画をはじめとする写真以外の作家と展示で一緒になり、交流することができたことです。特に美人画のジャンルは、ポートレート写真と比べても、似たアプローチと異なるアプローチがそれぞれあるので、勉強になりました。実際に、ここで知り合った作家さんのうちの何人かー安達ありささん、片倉葵さん、百合百合さん、鯉江桃子さんなどーの作品をお迎えさせて頂きました。

またここでお会いした作家さんのうち、人形作家の高齊りゅうさんとイラストレーターの紫乃さんにはポートレートのモデルにもなって頂きました。さらに他の写真作家さんのモデルとして作品が出展されていたえつこさんと知り合うきっかけもここの展示でした。彼女は今では私の大切なモデルとなって頂いています。

そして何よりここに惹かれたのは、展示プロデューサーの豊島さんの人柄です。もちろんアートに造詣が深いだけでなく、様々な分野に通じているので会話が途切れることがありません。毎年、国立新美術館で開催される『アジア創造美術展』のプロデュースもつとめ、海外(ニューヨーク)での展示もプロデュースされるなど、プロデューサーとしての実力はお墨付きです。実際に、多くの若手作家を銀座モダンアートから輩出していることから言わずもがなですが。少し口が悪いのが玉に傷ですが、それもプロデューサーという仕事が単なるサービス業ではなく、批評家としての目線も持ち合わせねばならないので、必要な資質なのかもしれません。

また豊島さんは北海道出身なので、こと北海道のこととなると熱が入ります。「ポートレート写真を撮るなら北海道のロケーションで撮らないと!」と何度もおっしゃっていました。

それに加えて魅力的なのはそのルックスです。いつもお洒落な服を細身のスタイルのよい身体に着こなし、ちょっとエキゾチックな顔立ちにハスキーな声は、同性の私から見てもダンディさを感じさせます。アートに携わる人は、自身も美的でないといけない、そんなことを思わせてくれます。

こうした人柄に惹かれてか、ギャラリーにはいつも作家さんとお客さんがあふれていて、それはさながらサロンのような雰囲気がありました。若い作家さんにとっては、それこそ豊島さんはお父さん(あるいはおじいちゃん?)ほどの歳の差だとは思いますが、ちょうどゼミの教授と学生という雰囲気も感じさせました。

残念ながら奥野ビルのギャラリーは閉廊しましたが、豊島さんは舞台を移してプロデューサーとしての活動を再開されるとのことです。新生銀座モダンアートが立ち上がる日を、私も楽しみに待っています。




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