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バーテンダーという仕事


長く浸かってきたお仕事について、
少し書きたいことがあったから
書いてみようと思う。


10年以上前の話だ。
思春期の頃、漫画や小説でなんとなく
夜のお仕事に興味があったから
15歳から東京の外れの治安の悪い街で
キャバクラのボーイをしていた。

当時はキャストの女性の中に中学生がいたり、
酔っ払ってしまった若い女の子が
窓から飛び降りようとしてるのを止めたり、
お客さん同士が喧嘩になって警察を呼ばれ、
未成年の従業員は総出で
スーツのまま、ドレスのまま逃げたり、
正直めちゃくちゃだったと思う。

なんというか、夜の仕事は
生々しく人間って感じがして
新鮮で面白かったんだと思う。

もう当時でいう"アンダー"(未成年の事)を
雇うような夜のお店は
どんなに田舎でも、今のご時世、
そんなリスクは犯す人はいないだろうし、
恐らく存在しなくなっただろう。


その後、当時の彼女の影響で
バーで飲むお酒、カクテルなどに
少しずつハマっていった。

顔が老けていたのもあって
年齢確認や補導されることも一度もなく
当時は飲みに行けていて、
楽しくて奥深くて、少し大人になった気分で
色々な街のバーに遊びに行って、
飲んだお酒や感想を携帯にメモして
自分の好きなスピリッツや
リキュールを見つけたり、
見たことのないボトルを見掛けると
それで何かを作ってもらったり、と
そんな生意気な遊びをしていた。

そんな中、お酒の面白さを教えて貰った
様々なカッコいいバーテンダーの方の
姿を見て憧れたのだろう。

カウンターのそちら側に立ってみたい、と
女性が主役のお店より、自分がお客さんと
近い距離で話す仕事がしたい、と
少しずつ思っていった。


そして念願の18歳になる誕生日を迎えて
(20歳ではないのはすみません)
当時の彼女の兄が経営していた
ショットバーで働き始めた。

奔放なオーナーだったから
すぐにどこかに出掛けてしまう人で
確か初日からお店に一人残され、
とても心細かった覚えがある。

だけどそのお陰で
お客さんがいない時はビラ配りから、
お酒作って接客してお会計まで
お店の一連の流れを
全部自分でやらせてもらっていた。

土地柄、しっかりとやってきた
バーテンダーの大先輩も多く、
お店を閉めてからお客様として来た同業者に
立場を逆転して教えてもらいながら
お酒を作ったり色々な知識を得ていった。

オーナーがいない時は
一人でお店を回させてもらってた為、
肩書きとして(恐らくモチベーションとしても)
チーフを任せてもらっていた。

だけどやっぱり、自分に会いに来てくれる
お客さんを作るのは本当に大変で、
18歳の経験の浅さでは面白い話も出来ず、
可愛がってもらうだけも、永遠には続かず
中々自分のお客さんがつかなかった。

どちらかと言えば繁華街というより住宅街で
その街で住んでる方や働いてる方、
オーナーづての常連さんが多く、
その中で問題になってくるのが、
毎日、毎週のように顔を合わせていると
大体の生い立ちや趣味などは
すぐに話し尽くしてしまうこと。

ルーティーンで来てくれるお客さんと
話題が尽きないように
毎日その街の行ったことのない
ご飯屋さんにランチしに行って
情報を仕入れたり、
電車に乗って少し変わった人がいたら
その隣にわざわざ座って
何か起きないかと期待したり、
毎日面白い体験や新しい話題を
かき集める事に必死だった。
芸人さんってこんな感じなのかな、と
当時の自分もおかしく感じていた。


そんなお店で2年程勤め、
貴重な経験をさせて貰って、
堂々と働ける20歳になった頃。

自分の友達が寄りやすいような街や
もっと都会でやってみたい気持ちが出てきて
新宿、六本木、西麻布、南青山、銀座など
所謂、繁華街の色々なスタイルのバーで
掛け持ち、働いたりしていた。

少し説明するなら、バーの中でも
こんなに沢山の種類のバーがある。

①オーセンティックバー
基本的にチャージ料金が発生して、一杯1000円〜3000円以上するお店もある。コンペティション(大会)等に出場したり、日々鍛錬しているバーテンダーがいて、豊富なカクテルが頼める正統派なバー。あのバーテンダーが作るマティーニが一番、みたいな味に着くお客様も多い。

②ショットバー
オーセンティックバーと比べると少しカジュアルになり、一杯800円〜1500円位、ノーチャージのお店もある。そのお店のスタイルやバーテンダーによって頼めるカクテルの種類や、雰囲気はかなり異なり、幅がある。

③スタンディングバー
スポーツ観戦が出来るバーであったり、DJがいて音楽が大きい音量でかかっていたり、チケットやコイン制の場合もあるカジュアルなバー。活気のある雰囲気、ナンパや出会い目的で来店されるお客様が多いお店もある。

④アミューズメントバー
ダーツやビリヤード等があり、基本的なカクテルも頼めるが、スタッフ誰でも最低限お酒を作れるオペレーションが組まれていて、そこまでちゃんとしたバーテンダーはいない事が多い。この点はスタンディングバーも近い。チェーン店を展開してる企業もある。接客や人よりも、施設で集客・売上を立てる。

⑤カラオケバー(スナック寄りのバーも含む)
繁華街に多く、お金持ちや芸能人が趣味や副業、税金対策で経営している事もある。そもそも一見さんは少ないが、紹介限定、会員制だったりする事も多い。難しいカクテルはないがお茶割りやメジャーなカクテルが飲み放題であったり、シャンパンやショットで大きな売上を立てる場合が多い。逆にそのオーナーさんや、お店に立つ人の人柄で集客出来ないと、商売としては成り立ちづらい。

と、まぁこんな感じの
色々なスタイルの"バー"が存在する。
正直ややこしい。

ちなみに僕自身はカラオケもダーツもあって、
接客も近い距離でお話しする
カジュアルなバーで
雇われ店長をしていた事がある。
その時は殆どカクテルなんて需要が無く、
頼まれて作る機会も少なかった。


昔はちゃんとしてるのがホテルのバー、
カジュアルなのが街場のバーなどと
呼び分けしてたりもしたそうだが、
今では街場でも色々な大会で優勝するような
有名なバーテンダーが存在したり、
逆にシェーカーなど触った事もない
バーテンダー(?)も存在する。


で、とても前置きが長くなってしまったが、
僕が書きたかった事はこうだ。

どちらも同じバーテンダーと呼ぶのは
僕自身も違和感を覚えるが、
どちらも違った方向の努力をしていて
お店が成り立ってるのであれば
会いに来るお客様がいるのであれば
どちらも凄い、ということだ。

ここまで書いて、
わざわざ言うことじゃなかったかも、
なんて思ってしまった。
わかってるわ!何事でもそうだろ!みたいな
声が聞こえてきた気がした。

もう少しだけ、続けてみます。


ホテルのバーテンダーや
オーセンティックバーの方などを見ていると、
カジュアルなバーで働く人間を
バーテンダーとして認めづらい
プライドが存在する。

そりゃそうだ、新人の頃から毎日練習して
一年も二年もお酒は作らせてもらえず、
洗い物やホール、作業補助を経て、
ヘッドバーテンダーや先輩に認めて貰って
やっと少しずつお客様にお酒を出せるようになる。
少しずつお客様に関与する事ができる。
そんな過程を経験してきたからだ。


続いて、分かりやすく真逆に存在する
カラオケバーなどの方を見ていると、
ホテルや有名バーなどの何もしなくても
人が入ってくるバーで働いてるバーテンダーが
どんなにお酒が上手く作れても
温室育ちに、すましているように見えてしまう
プライドが存在する。

それもそうだ、自分の身一つで接客して
気に入ってもらい、お客様が少しずつ着いて
お祝い事でシャンパンを開けて貰ったり、
身を削って一緒にお酒を飲んだり、
どんな会も盛り上げたり、
メニューなんて烏龍ハイだけでも
集客出来るわ!なんて気合の入った
ある種接待、一番近い距離の接客のプロだ。

技術職と、サービス職のような分け方が
分かりやすいかもしれない。
だけどそのどちらも兼ね備えられるのが
理想のバーテンダーかもしれない、と思う。
(大会でも会話や接客面などの審査もあるみたい)


どんなにお酒が上手く作れても、
マニュアル通りの距離のある
当たり障りのない会話しか出来ない
バーテンダーは今の時代、退屈だ。

人柄がどんなに人に好かれても、
シェーカーも振った事のない
ステアもまともに出来ない、
バーテンダーは正直少し、カッコ悪い。


こんな事を書いたのは
どちらも凄くて、どちらも違ったプロで、
その間のギスギスした感じを
少しだけ、無くせたらと思ったからだ。

どっちも好きでどっちも働いてる人は
もしかしたら少ないのかも、と
自分なりに書いてみました。

お客さん側としても自分の気分に合わせて
色々なスタイルのバーを
正しく使い分けられたらいい。

同じバーテンダーとして全てを括るには
少し複雑で難しい事も
頭の片隅に置いておいて貰えると
バーテンダーへの偏見も少なくなるかなと。

全ての職業と一緒で
色々なやり方や努力や苦労が存在していて
色々な人がいます。


そんなことを考えたりする中で
自分にとってちょうど良くて楽しい、
存在してほしいバーはなんだろう、と考える。

海外のバーシーンなんかは
もしかしたら、もっと自由でもっと身近で
今よりずっと思考が柔軟になるかもしれない。

やっぱりいつか自分で経営はしたいから、
それに必要な力とアイデアを蓄える。

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