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Web3.0で変わる教育、プロセス評価で学習歴社会を実現する

弊社では、2018年より教育領域でブロックチェーンを活用したWeb3.0事業を行ってきました。依然としてWeb3.0が盛り上がっているので、過去に書いていたブログをリライトして公開したいと思います。

2年前のものですが、元投稿はこちら↓


2009年にブロックチェーンが誕生して以降、様々な分野でブロックチェーンが活用されてきました。ブロックチェーンは暗号資産(仮想通貨)のための技術であると思われがちですが、既に金融分野に限らず幅広い領域での導入事例が登場しています。

ブロックチェーンは、プロセスを正しく評価することができる仕組みです。なぜなら、ブロックチェーンには特定の管理者が存在しないため、プロセスが改ざんされる最大の要因を排除することができているからです。

そんなプロセス評価の仕組みが最も活きる分野の一つが「教育」ではないでしょうか。本記事では、教育分野で進むブロックチェーン活用の事例やその具体的な方法、また未来の教育の姿について詳しく解説していきます。

教育分野におけるブロックチェーン活用

一口に教育分野といっても幅広いですが、最もブロックチェーンの導入が進んでいるのが、「学位や証明書」の管理です。

ブロックチェーンは、記録されたデータの改ざんを防ぐことに長けた仕組みです。そのため、「改ざんされると困るデータ」の管理には非常に適しています。従って、学位や証明書はブロックチェーンで管理するデータとしてうってつけだといえるでしょう。ブロックチェーンによって、学歴詐称などの社会課題を無くすことができるかもしれません。

一方で、記録後に編集や削除が必要になるデータに関しては、ブロックチェーンで管理すべきではありません。これには例えば、個人情報などが該当します。(こっそりシュレッダーにかける必要があるデータも、ブロックチェーンで管理してはいけませんね…)←※当時「桜を見る会」のシュレッダー問題が話題でした

学位や証明書をブロックチェーンで管理する取り組みは、海外で既に多数登場しています。日本でも経済産業省が2019年に、株式会社リクルートおよび弊社との合同調査事業として、学位・履修履歴、研究データの不正防止にブロックチェーンを活用できないか、という趣旨の取り組みを行いました。本事業では、海外で既に行われている取り組みをまとめた調査レポートが公表されています。

下図は、調査レポートで取り上げられている海外の事例をマッピングしたものです。欧米を中心に、アジアでも既に複数の取り組みが行われていることがわかります。

上記マッピング図の中から、いくつかの取り組みについて選定し、詳細の解説を記載した表が以下になります。いずれも、学位や証明書をブロックチェーンに記録する設計となっていることが共通点としてあげられるでしょう。

調査事業を通して明らかになった発見としては、先行事例のいずれも、アウトプットとしての学位や証明書”のみ”をブロックチェーンに記録する形態をとっていた点です。先述の通りブロックチェーンは、記録されたデータの改ざんを防止することに長けた仕組みといえます。

しかしながら、万が一記録される前のデータに誤りがあった場合、ブロックチェーンにはどうすることもできません。つまり、ブロックチェーン云々の前に記録するデータそのものの信憑性が重要になるということです。

これを「オラクル問題」といい、教育分野に限らずブロックチェーンが抱える古くからの課題の一つとして、解決への議論が続いています。

オラクル問題への解決策

オラクル問題を解決するには、ブロックチェーンに記録するデータの生成プロセスが重要になります。例えば学位や証明書の生成プロセスとしては、そこに到るまでの「学習履歴」が該当するでしょう。

ここでは、弊社のeラーニングサービス「PoL(ポル)」による取り組みを見ていきます。PoLでは、教育分野におけるブロックチェーン活用として、学習者の学習履歴を全てブロックチェーンで管理する取り組みを行っています。具体的にはこの時、学習者の学習行動に応じて独自トークンである「PoLトークン」を発行しています。

トークンとは、ブロックチェーンを使って発行されるデジタル資産のことです(現在は日本の規制の影響からサービス内通貨として付与)。学習履歴すなわち学習行動に応じてトークンを発行することにより、学習履歴のデジタル化とブロックチェーンへの記録を同時に行なっているのです。

アウトプットとしては、学習履歴に紐づいたトークンをブロックチェーンに記録し、記録されたデータ(トークン)を集計することで証明書を発行しています。そのため、証明書の内容に誤りが発生する余地がなく、オラクル問題を解決することができるというわけです。

また、後述のようにPoLではこのトークンを、証明書発行以外の場面でも活用できると考えています。

トークンによるプロセス評価

学歴や社会人の資格のように、年齢を重ねるほど、我々は定量化されたアウトプットの指標で評価される場面が多くなります。しかしながら幼稚園や小学校などの教育現場では、定量化された指標のみでの評価には限界があるといえます。むしろ、大事なことはテストの点数に表れないことの方が多いのではないでしょうか。

例えば、掃除を一生懸命やる生徒や地域のボランティア活動に積極的に参加する生徒、元気に挨拶ができる生徒など、こういった特徴も立派な能力であり、もっと評価されて良い一面なはずです。

そこで期待されるのが、ブロックチェーンによるプロセス評価です。これは、トークンによって実現可能だと考えられます。具体的には、学習以外の行動に対してトークンを発行する方法があげられるでしょう。例えば、掃除をすると発行されるトークンや、遅刻せずに授業に出席すると発行されるトークンなどが考えられます。掃除や早起きが苦手な生徒の習慣を変える、副次的な効果も期待できるかもしれません。

別の例として、先述のPoLでは学習者の学習履歴に応じてPoLトークンを発行しますが、アウトプットとしての証明書を発行するだけでなく、学習履歴をそのままスコアとして活用する取り組みも進めています。これを「ラーニングスコア」と呼び、昨今話題の信用スコアと並ぶ新たな指標としての応用が期待されています。

信用スコアの課題として、先天的な要素による社会格差の拡大があげられます。また、一度でも過ちを犯してしまうと、信用スコアの世界では取り返すことが非常に困難です。

ラーニングスコアは、その人の努力の賜物であり、いつでも自分次第で蓄積させることができます。ラーニングスコアに従って、融資額やクレジットカードの限度額を設定することもできるのではないでしょうか。

ラーニングスコアを活用した取り組みとして、弊社はDeFiプロトコルAaveとの連携を行ってきました。一言で表現すると、「学習するほど金融サービスを享受できやすくなる」サービスです(こちらも現在は日本の規制の影響からストップ)。

教育×NFT

トークン発行や学習履歴の記録以外にも、PoLでは修了証や入会権をNFT化する取り組みを行っています。

PoLでは、カリキュラムを受講したことを証明する修了証の発行を、NFTを使って行っています。修了証NFTは、イーサリアムのサイドチェーンであるxDAIチェーンを利用して発行されます。

その他にも、Web3を学ぶ「PoLクリプトカレッジ」では、受講時の入会権をNFTとして発行しています。入会権NFTを持っていると、将来的に入会金が高くなった場合でも、過去の安かった時の価格で入会金を支払い、受講を開始することが可能です。

入会権NFTは、OpenSeaを通してイーサリアムのサイドチェーンであるPolygon上で発行されています(規格はERC-1155を使用)。NFTを構成するメタデータはIPFSで分散管理されているため、発行体である株式会社techtecによる書き換えはできない状態となっています。これは、入会権NFTの権利を行使できることが、ブロックチェーンによって永久的に保証されていることを意味します。

学歴社会から学習歴社会へ

教育分野におけるブロックチェーン活用として、学位・証明書の管理やオラクル問題、プロセス評価の仕組みについて解説してきました。特に日本で根強く残っている「学歴社会」は、本当に正しい評価軸なのでしょうか。

ラーニングスコアのような概念が社会に浸透することで、学歴社会から「学習歴社会」へのシフトを促すことができます。ブロックチェーンの実現するプロセス評価の仕組みは、我々が想像するよりも遥かに大きく社会を変革する可能性を秘めているのです。

教育×ブロックチェーンの他にも、金融×ブロックチェーンの領域は市場の盛り上がりが活発になっています。この分野を分散型金融(DeFi:Decentralized Finance)と呼びますが、DeFiの世界では既存産業の状態から一切の影響を受けません。つまり、人種や国籍に関わらずいつでも誰でも金融サービスにアクセスすることができるのです。

ラーニングスコアはそんなDeFiとも相性が良く、また教育や金融以外の領域でも同様の「分散志向」を持った新たな動きが出てきています。このトレンドは日に日に大きなムーブメントになっており、ブロックチェーンによる変革は間違いのない未来だといえるのではないでしょうか。

日本でもこの波に乗り遅れないよう、継続した取り組みが期待されます。


株式会社techtecでは、Web3.0を学ぶ「PoLクリプトカレッジ」を運営しています。DeFiやNFT、DAOなど、仮想通貨・ブロックチェーンの先にあるWeb3.0の知識をより深く習得することができる実践プログラムです。

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