見出し画像

学際デザイン研究領域の新設について

2020年4月に京都造形芸術大学の大学院で、学際デザイン研究領域を新設します。(2020年4月からは京都芸術大学。)

https://www.kyoto-art.ac.jp/tg/field/Interdisciplinary-design/


人の関わるもの「すべて」にデザインがあります。人間が生活をしていく中で相対する形のあるもの。それらはデザインされた造形物です。
つまり、生活をしていく方法といってもいいかもしれません。その具体的な形を作り出すこと、そしてその形に具体性・実際性を与えることがデザインです。
デザインとは、何もデザイナーだけではなく、生きとし生ける者、すべてがデザインに関わっているといえるでしょう。
自分の考えたことを他者に伝わるようにアウトプットすることは、分かりやすく伝える営為です。その営為もデザインです。
イタリアのデザインの巨匠エットレ・ソットサスは「デザインとは、まず人間の行動・思考に関する人類学的考察が必要であり、そのヴィジュアル表現である」と述べています。
こう考えていくと、デザインとは何も特別な、「かっこいい」ものを造るということだけではなく、市井に生きる我々にも、実は密接に関わることといえるでしょう。
そうした思考プロセスを高度に学ぶのが、「学際デザイン研究領域」です。

さて。かくもデザインが云々、更には研究が云々というと幅広く、何か難しいです。
料理を例えとしてお話ししましょう。

生きとし生けるものは、何かを食べて行かなければ、生きていけません。
人間であれば、料理を日々食べています。
ですので、家でも外でも、様々な料理を食していることでしょう。また家では、料理を作られている方も多いと思います。
ただ料理を作るのも、様々なレベルがあります。
美味しい料理を作りたいとき、いまはとても便利ですね。インターネットによって、レシピが公開されていたり、またアプリとして「クックパッド」などがあります。
そうすると、そこそこ美味しい料理を作ることが出来る。ただ、プロの料理人になった訳ではありません。
「美味しい料理」を更に作りたいはもちろんのこと、子ども食堂を作りたい、フードロスをなくす取り組みをしたいなどなどと思い立った場合、誰かから教わり自ら体現することをするでしょう。その最たるものが学校で学ぶ。というものです。
学校では、調理法はもちろんのこと、具材の種類・見極め方、盛り付け方、過去のレシピの探し方、更には経営のあり方など、手法や方法論を体系的に学ぶことができます。

それが大学では、学部・大学院(修士課程・博士課程)でレベルの高低や、体系性の大小があります。
「肉じゃが」が作りたい。「カレー」が作りたい。というような個別の料理ではなく、手元にある材料を基にして、どんな美味しいものが作れるのか。更には料理に関わる何かをしたい。その手法や方法論を学ぶ訳です。
デザインも料理も同様に幅広いと思います。デザインにも様々な分野があり、料理もまた日本料理、フレンチ、イタリアンといった国籍の料理、更には細分化されるでしょう。
その個別の分野の品目ではなく、高度に体系的に手法・方法論を身につける。それが料理全般を学ぶことになろうかと思いますが、本領域も同様です。
どう活かすかどうかは、入学された方次第です。

話を大学院のことに戻しましょう。
デザイン思考のプロセスを学び、知識の淵源となる歴史的な事象の双方を体系的に学びながら、デザイン思考を高度に体現していきます。
ただ注意していただきたいことがあります。我々大学としては、あくまでプロを養成するというものではないことです。
もし歴史的な研究を行いたいということであれば、デザイナーを目指して実践をしたいということであれば、それぞれに特化した大学・大学院に進まれた方がいいです。
素人でもなく、また、プロの研究者・デザイナーではなく、社会を生きる一市民としてより高度で豊かな眼差しを養うこと。それが本領域で目指す修士像です。

生活の中にデザイン思考を取り入れるもよし、修得されたデザイン思考を更に研鑽されて仕事に役立てるもよし、入学される皆さんの獲得目標も様々だと思います。
しかし「本学で学び、直截的に仕事に役立てられるか。そうした教えがあるか」と問われれば、正直なところ、わかりませんし、お答えのしようがありません。大学・大学院での学びとは、学修を深めた人にだけ意義がわかります。
高度な方法論や手法を学ぶので、役立つことはあると思いますが、それが有効になるのが、1日後なのか、1年後なのか、10年後なのか。腑に落ち方が様々ですので、大学院では教員の研究成果やデザインの経験に培われたカリキュラムを用意しているだけです。

大学院で学ぶことがどう役立つものになるか、それを考えるのは入学される方次第といえましょう。人とは自身のそれまでの経験でモノをはかってしまうところがあります。そのバイアスを取り除き、目からウコロを落とす作業こそが他者との敬意を持った議論です。

そのため、個別の研究を修士研究で行う訳ではなく、グループワークで議論し共同研究を行います。コミュニティでの議論もまた、学びの一つです。
仕事や家庭の中で、様々な、また大小の課題があることでしょう。それらの問題解決をするため、リサーチをし分析し、コミュニティの中で議論をしながら解決する方法を探る。そうしたことを学んでみたい。という意欲的な方の応募をお待ちしています。
但し大学院での学びですので、簡単ではありません。文献収集や調査、また高度で真摯な考察が求められます。ファッションとして「学ぶ自分」を作りたいということであれば、来られない方がいいでしょう。
真摯に学びたい。自分で獲得したい。という強い意志を持った方の応募をお待ちしています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?