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【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~最終話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)

最終話・十年浪人×十人組手=黒帯黒帯(初段以上)とは、何事にも染まらない強い信念を表す。五年前、うだつの上がらない会社員だった僕は、ヤンキーっぽい大学生たちに襲われて病院送りにされた。その後、浪人時代に出会った添島達二さんと偶然にも再会して、空手を始めた。毎年五月に開催される大会では、緑帯3級の時に壮年部・中級クラスで出場して準優勝まで勝ち残ったのが現在の最高順位。あの時は八人制のトーナメントで、僕より重い体重の選手たちばかりで、最大差は十五キロぐらいだった。動き回って攻撃の

    • 【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~第九話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)

      第九話・正直者は馬鹿をみない通常通りに出社してみると、オフィスが異様な空気に包まれていた。岡本専務、榎田常務、木元さん、そして加賀社長までもが、会議室を足早に出入りしている。みんな表情が険しい。フリーデスクで作業している社員たちは、加賀社長以下、役員たちの慌ただしい光景を見て見ぬふりをしている。 「あんなバタバタして、なんかあったの?」 近くにいた増山に訊いてみると、僕の耳元に口を寄せて、 「大原が、大原がですね、トンだみたいですよ」 と囁いた。 「ええ!飛んだって、ど、どこ

      • 【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~第八話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)

        第八話・大会出場~父親の尊さ一月四日の仕事始め。毎年恒例の初詣は、加賀社長以下、全社員で近所の神社で参拝する。今年は残念ながら、中谷が体調を崩して欠席した。 〖明けましておめでとう。今年もヨロシクです。ところで大丈夫なの?〗 とLINEで送ったら、 〖アケオメ、コトヨロ。お節料理を食べ過ぎて腹こわしちゃった笑〗 返信があった。 〖なにやってんの!お大事に〗 〖ありがと。おみくじ引いたら教えてね〗 〖了解です〗 中谷とはこんな感じでやり取りをした。 参拝が終わって、大鳥居の

        • 【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~第七話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)

          第七話・価値観「ガラケーさん、榎田常務が呼んでます」 出社してすぐに増山から言われ、専用ロッカーに荷物を放り込んで会議室に入ると、榎田常務と木元さんが表情を険しく座っていた。 「おう、出社早々にすまん。ちょっと聞きたいことがあってな。まあ、座ってよ」 言われるがまま、長テーブルを挟んで二人の対面に座った。 「オフィス・サンユウって知ってるか?」 「いいえ。なんですか、その会社は?」 「そうか…」 榎田常務と木元さんが視線を合わせた。テーブルの上には、何枚もの請求書や領収書が置

        【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~最終話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)

        • 【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~第九話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)

        • 【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~第八話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)

        • 【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~第七話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)

          【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~第六話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)

          第六話・恋心? 中谷が企画した声優イベントを手伝うようになり、声優業界の関係者たちとも仲良くさせてもらえるようになった。八月には声優カラオケイベントを開催した。ステージ上をカラオケボックスの部屋のように仕立てて、声優たちが持ち歌のアニソンや、好きなアーチストの楽曲を歌うイベント。チケットも即完売となり、グッズも在庫がほとんど残っていない状態で大盛況となった。 「ガラケーさんが手伝ってくれるから、チョー助かります。次も一緒に頑張りましょうね」 役に立っているのなら嬉しいし、やる

          【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~第六話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)

          【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~第五話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)

          第五話・職武両道 「はあ、空手って、圭ちゃんがやるの?」 「押忍!勝手に入門して申し訳ありませんでした!」 翌週の月曜日、会議が終わってから、社長室で空手に入門したことを報告した。会社の案件は、休日に稼働するイベントの現場も多い。給料を貰っている立場として、会社から許可を得るのが筋道だったと入会手続きを終えてから気付いたので、慌てて駆け込んだ。 「マジかよ、それウケるわ」 ソファーに倒れて笑い転げていた。IQOSを吸っていたので、煙が喉に蒸せて咳き込んでいる。薄いブラウンのサ

          【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~第五話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)

          【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~第四話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)

          第四話・再会からの空手入門 フリーアドレスのデスクでは端に座っている。気分的にどうしても中心部に座れない。周りの社員たちは、やる気に満ちて仕事をこなしているのに、僕の気持ちは仕事モードのゲージが回復しないまま時間だけが過ぎている。会話する時は元気なふりをしているけど、それも自分に嘘をついているようで気持ち悪い。退院して職場復帰してから、新規案件がまったく獲得できていない。タイミングもあるけど、タイミングの悪さを言い訳にしている自分が情けない。営業先から会社に戻る足取りが今日

          【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~第四話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)

          【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~第三話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)

          第三話・同級生社長 すっかり顔の傷も消えて、主治医の先生からも退院を許可され、十日間の入院生活を終えた。会社には行きたくない気持ちもありつつ、港区赤坂に所在するオフィスに到着した。何事も無かったかのように普通に出社しようと決めたものの、いざ普通の動作を意識してしまうと、逆に演じるのは難しいんだなと気付くのだった。 「おはようございます」 オフィスのドアを開けるなり、声を高過ぎず低過ぎずに挨拶をした。 「あ、ガラケーさんだ!」 僕を指差した増山が目に飛び込んで来て、彼女の声がオ

          【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~第三話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)

          【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~第二話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)

          第二話・小児科医への憧れ目を開けると、白いバームクーヘンのような機械の中で、仰向けに寝かされていた。ここは天国でも異世界でもなさそうだ。どうやら、無事に病院に担ぎ込まれたのだ。おそらく、検査を受けているのだろう。ウィーン、ウィーンと機械が音を鳴らして、体が仰向けで上下移動している。僕は生きている。浪人時代に、死にたいと思ったこともあったが、死にきれなかった。けど、あんなに殴られ蹴られて痛い思いの最中、もう一度生きてみたい、と無意識に叫んでいたような気がするし、生きて目覚めたこ

          【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~第二話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)

          【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~第一話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)

          あらすじ ガラケーさんこと相楽圭太は、愛されキャラの中年サラリーマン。小児科の医者を目指して十年浪人した過去があり、現在は幼馴染みの会社で働くも、うだつの上がらない日々。ある夜、オヤジ狩りに遭い、病院で四十歳の誕生日を迎える。退院後は同僚の中谷美里のイベントを手伝いながら仲を深める。ある日、ひょんな縁で空手に入門。週一でも稽古は疲れ、空手は仕事に直結しないが、徐々にやる気を取り戻して拓けていくのを実感する。入門から五年後、遂に黒帯を受験し十人連続で猛者と闘う。一人目から倒され

          【連載小説】『ガラケーの挑戦!』~運を動かす運動~第一話(全十話予定)(創作大賞2024・お仕事小説部門応募作品)