まちがい

久しぶりに電話した。かかってきたんだ。知らない人だ。カドタとかいう人にかけてきたつもりだったらしい。思い詰めた声だった。今思えば、だけど。

「大丈夫」そう言っていた。電話の相手は、止まらなくなった。カドタなる人物の悪口を並べ立てた。いかにワガママなのか。約束を守らないか。金にだらしないか。

ボクも、それなりの見地はあった。悪口には、情がこもっていた。必ず「あのときはこんなに良くしてくれたのに」という枕詞から始まっていたからだ。

「どうするの、それで」間違い電話だということを思い出したことと、さすがにソロソロ付き合っていられないか、と話を切りにかかった。「カドタくんが、まだ好きなんでしょ」「もう1度話してみたら」親身になってのセリフでは無い。けど、声に乗せたつもりもない。少し、黙った。切れた。

数字を押して電話をかけることは、いまやまず無いことだ。不思議に思っていたけど、理由はほどなく分かった。どこだかのキャラクターグッズの化粧室に、良く当たる占い師の番号として書かれていたらしい。4件めの間違い電話の相手が、そう言っていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?