暗い光

 

千愛の部屋。そのベッド。
誰もいない。

千愛。
繁華街の光を背中に、走っている。
光から遠ざかる。もっと遠くへ。離れたい。
息が荒くなっていく。吐き出したいものがある。

とうとう耐えられなくなって、足が止まる。
自分の中から漏れ出さないように、歯を食いしばるが、飛び出していく。
口から、そして、目から。

聞き慣れたオープニングテーマが流れてくる。
千愛のポケットから所在を告げたスマホが、本来の千愛の姿との違いを浮き上がらせる。
深夜1時から始まるラジオ番組。
時間になったら流れ出す設定になっていたその番組が、先週と同じように流れてくる。
千愛は、自分の部屋で聞くことが出来なかった。
パーソナリティーはいつもと同じ調子で話している。
千愛は、音を、消した。
ライトの消えたスマホ画面に、千愛の顔が映る。
暗い画面に張り付いた人物と目が合った。
その人は、泣いていた。

千愛がまた、走り出した。

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