黄色く着飾った銀杏と青々とした銀杏にはなんの違いがあるのだろうというお話
日本の四季を飾るものの一つとして、秋の紅葉があります。
赤や黄色に染まった葉たちは、野や山を美しく彩ります。
でも、黄色いときにしか注目されない彼らは、
普段どうしているんでしょうか。
少し気になって覗いてみました。
夏の銀杏
蝉時雨の中、夏の銀杏の元を訪ねた。
銀杏といえばこれではないかと言う、
街路樹としての銀杏だ。
迎えてくれた銀杏は、青々とした葉を腕いっぱいに
広げていた。
黄色い銀杏しか馴染みのない私には、
どこか別のなにかに見えた。
深い緑をたたえたその身体は
どこか誇らしげに見えたが
その姿を眺めるのは
どうやら私だけのようだった
夏の桜
次に私が訪れたのは
春に艶やかな姿を見せてくれる桜だ
川沿いを吹く風にゆられ
心地よさそうにしていた
やはりその身は緑の葉に守られ
特徴的なその枝と葉の緑を空の青に映していた
誰もその姿を見上げるものはなく
ただ風景の一部として
そこに居るのみであった。
遠い春を待ちながら
そこに居るのみであった。
秋の銀杏
それから季節は過ぎ
秋にさしかかろうとしている。
遠くに見える山々の木々は
少しずつ色付き始めている
紅葉の始まる木々には
時折見上げる人の姿がある
やがてこの銀杏もきれいに色付くのだろう
黄色い葉を一面に広げ
晴れやかな心持ちで
高く澄んだ空にその身を映すのだろう
まだ青い銀杏を見上げて
着飾った人と、普段のその人が同じであるように
紅葉の時も その前も 銀杏は同じで
春の桜も 夏の桜も 同じ桜
それでも私達が 紅葉や 花に惹きつけられるのは
その艶やかな時が 短い我故であろうか
この短い生命の時を そこに見るのであろうか
そんなことを思いながら 今日も私はまだ青い
青い銀杏を見上げている
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